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サイボウズ式:青野さん、「副業禁止は経営リスク」って本当ですか?

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「副業禁止」を禁止しよう──。

そう語る青野慶久が社長を務めるサイボウズでは、副業が認められています。

経営者視点で見ると副業のメリットは多いと言いますが、本当にメリットだらけなのでしょうか?サイボウズ式編集長の藤村が、副業のあれこれを聞いてみました。

え、過去は「副業禁止」の立場だったって本当ですか?

過去に、「副業禁止」の意思決定をしてしまったのがずっとモヤモヤでした


藤村:青野さんが執筆した「副業禁止を禁止しよう」というnoteが大反響でしたね。



藤村:この記事で副業のメリットは理解できましたので、デメリットについても聞いてみたいと思います。まず最初に、今でこそ「副業禁止を禁止しよう」とおっしゃっている青野さんですが、過去はちがったそうですね......。

青野:2006年くらいの話で、入社されて間もない2年目の社員が副業をしたいと話してきたことがあったんです。まだ1人立ちしているとは言い難い段階で、サイボウズ以外の仕事を週末にやりたいという話がありました。

僕も山田さん(*)もそんなに強固に反対をしていなかったんですけど、「なんだかなぁ」という違和感があったのは事実です。

(*)副社長の山田理

「働きがいより個人の生きがい」を大事にする会社の方が、イノベーションは起きやすいのか?

藤村:どんな気持ちだったんですか?

青野:ある意味、副業に逃げてしまって、サイボウズの仕事に気持ちが入らないんじゃないかなと思ったんですね。周りから助けられて仕事をしている立場だよ、というようにも感じました。

その人の将来のことを考え、今副業をすると「虻蜂取らず」な状態になってしまうのではという思いがあり、その時は副業を承認できませんでした......。

もう少し年次を経た社員からの提案だったら違ったかもしれませんが、僕も山田さんも心にモヤモヤが残っていたと思うんです。

本当に副業に反対すべきなのか?」って。自分の意思決定に確信が持てていなかったことと、その人がやりたいと思っていることをさせてあげられなかったことと。

藤村:そこから副業をどうするかはずっと考えていたのでしょうか?

青野:その時はモヤモヤしていたんですけれども、それからは、いったんモヤモヤは眠ったままでしたね。

「副業禁止を禁止」することに目覚めたのはいつ?

藤村:サイボウズでは2012年に「副業原則許可」となりましたが、青野さんがこう思った瞬間はいつだったんですか?

青野:龍太さん(*)がいらっしゃったときですね。これまではアフィリエイトのような小さな副業の話は社内でもあると聞いていたんですが、龍太さんの場合は明確に「サイボウズには週に4日しか出ません」と言っていたんです。

サイボウズはこの人を受け入れられるのだろうか? そう考えました。

(*)社長室の中村龍太。

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藤村:龍太さんは、二足どころか三足のわらじを履いていらっしゃいますね。

青野:はい。週末の農業はもともとやっていたと思うんですけれど、今はサイボウズに加えてダンクソフトという2つの会社で働いていますからね。

そんな龍太さんから副業をさせてほしいと話が合った時に、僕は山田さんと「副業を認めよう」と腹をくくったんです。それまではアフィリエイトのような小商売は認めていましたが、サイボウズではすべての副業を認めるということになりました。

藤村:なるほど。

青野:副業を解禁したことについて、いまはメリットの方が多いと感じています。龍太さんぐらい自立しているとそれほどマネジメントも複雑にならない。自分の中でけじめをつけながら自分の時間で仕事をしてくれますから。

自立したメンバーであればあるほど、副業のマネジメントのコストが下がり、ほかで学んだスキームや人脈をサイボウズに持ち帰ってくれたり、副業の時間でサイボウズのことを伝える活動をしてくれたりしますから。

藤村:経験のある自立した人材が副業をすると、メリットが得られやすいと。

青野:裏話をすると......。龍太さんは転職前、僕よりも給料が高かったんです(笑)。で、このままだと採用できないと。その時に龍太さんからは「じゃあコミットする時間を少なくします」と。なるほど、そんな話があるのかと思ったりしたんですよね。

その時気づいたんです。スーパープロフェッショナルをフルタイムで採用することは難しいですが、副業を認めると普通では採用できない人が来てくれるということに。

「年間50日しか来ない副業社員」のキャリアプランを上司は描けるのか?


藤村:副業のメリットは十分に理解できました。そこであえて聞きます。「副業禁止を禁止すること」のデメリットって何でしょうか?

青野:今はまだ顕在化していませんが、今後はマネジメントの複雑化が起きるんじゃないかと思っています。

藤村:というと?

青野:今の企業では、メンバーが何時から何時まで働く、早く帰るといったことを上司がマネジメントすると思います。チームのメンバー全員がフルタイムで働くのであれば、HR(人材資源)のマネジメントは簡単といえば簡単です。

ただ、副業を認めるということは、HRのマネジメントがより複雑になるということなんです。

例えば「年間50日だけサイボウズにコミットします」といった人だって出てくることもあり得ます。その人に、その時間でサイボウズに貢献してもらうにはどうすればいいかを考えないといけません。これはややこしいぞと。

フルタイム勤務ではない人をマネジメントするのはどれだけ難しいんだろうと感じます。メンバーのキャリアプランをいったい誰が設定するんだ? とか。

藤村:副業先の上司ともやりとりをしないといけませんしね。

青野:そうそう。龍太さんは私とダンクソフトの社長でそれぞれ面談をしたりしているんですよ。直接のマネージャー同士が話す場も作られたりしているんですよね。

藤村:それをいい機会ととらえれば、サイボウズの中だけで人材マネジメントするのではなく、他社といっしょにマネジメントをすることも求められます。

青野:そう。複数の上司がクロスしながら「あの人の調子はどう?」って話し合うといった、不思議な光景が出てくるんでしょうね。

そうか、副業をする人にとっては、上司を自分で選べることにつながるんだ


藤村:複数の会社に上司がいる......その状態をまったく考えたことなかったです。

青野:そうそう。別の副業先にも上司がいて、「そちらの仕事に身が入っていなかったりする」といった情報共有ができて、「じゃあちょっと話を聞いてサイボウズの仕事を増やしてみようか」といったように、今後は組織の枠を超えて上司同士が会話をすることだって十分にあり得ます。

今までは1つの会社の中で部長同士のやりとりがあって、その人のキャリアを考えながら次の部署に異動といった話はありました。でも副業が本格化すると、それが会社を越えて起こり得ることも考えられます。

1つの会社のヒエラルキーだけでは説明できなくなったり、所属している会社一社だけでは解決できない問題になったりしてくるかもしれません。

藤村:「会社がその人を縛る」という価値観は通用しなくなってくるかも。

青野:年功序列で囲ってしまうと給料も横並び、その人の個性を伸ばしたところで市場価値には反映されないから、これで本当に良かったのかといった疑問を持ってしまうことにもつながります。その人の価値を市場性で測るから、自立は促せるはずです。

副業を取り入れば自分の強みを生かして収入が2倍になることもある。その人にとっても「あ、これでいいんだ」といった実感も得られやすいと思います。

藤村:確かに。

青野:そうか。そういう意味では、自分の強みを誰に伸ばしてもらえるかを選べるようになるということですね。副業は見方を変えると、上司を選べるようになるということなんだ。

副業を認めて、会社の売上は上がるんですか?


藤村:副業を認めると、本業の売上にどう貢献するのか。そこはまだイメージがつきにくいかもしれません。

青野:大事なのは、企業のビジョンに共感している上で、副業をしているという状態になっていること。これが前提です。

サイボウズに共感していると、副業で外に出て得たものをサイボウズに持って帰ってきてくれますから。逆にビジョンに共感していないと、そのまま外に出て行ってしまうことも考えられます。

藤村:副業がライスワークでお金を稼ぐようなものだとしても、ビジョンに共感してさえいれば、本業に持って帰ってきてくれるというのは、性善説にも聞こえますが......。

青野:やっぱりビジョンへの共感があるかどうかで決まってくると思います。

サイボウズの場合は情報共有が進んでいるので、多分問題があったら見えるだろうと思っています。例えば自分の席でサイボウズの仕事をしないで副業ばかりしている人がいたら「どうしたらいいですか?」という相談がグループウェアで届きそうです(笑)

良し悪しではなく、きちんと「見える化」しましょうよと。そして公明正大に本人に確認して、どういうふうに問題を解決していくかを考えようよと。

もしそれで成果が下がっているのであれば、市場性を見ながら「給料も下がりますよ」といった話もできますから。

藤村:ビジョン志向であることと、情報共有がしっかりできる風土が、副業禁止を禁止できる会社の条件になってくるのかもしれません。

青野:情報を共有するのではなく、縛ってしまう会社もありますからね。

大企業が副業を解禁できないのは、そこに理由があるからなのかなとも思います。年功序列で給料があがるから会社の言うことを聞いてね、という契約関係の中で副業を解禁したらどうでしょう。

その人は解き放たれたような気分になり、会社は飯のタネにしておいて、それ以外の副業で楽しいことをやろうとなるかもしれない。この考え方なら当然、本業とのシナジーは生まれないですよね。

100の情熱の取り合いではなく、副業を認めて情熱の総量を倍に増やそう


藤村:本業で得たスキルを外に持ち出してしまうことについて、経営者として懸念やリスクは感じませんか?

青野:それはまあ、しょうがないという気持ちです(笑)。何でしょう、副業先のビジョンが魅力的だったら、そちらの副業をしても当然だと思うんです。逆に、それをなぜ受け入れられないのだろう?

藤村:サイボウズで社内教育をして得たスキルを、社外で使われたとしてもそれは仕方ないと。

青野:そうですね。でも逆の場合もあるかもしれません。極論すると、副業で稼ぎはじめたら、サイボウズの給料にそんなにこだわらなくなるといったこともあるのかなと。すごくいやらしい言い方ですが......。

でもそれは、経営者として経済合理性で考えるとありがたいとも言えるんです。こう話してきて、やっぱりビジョンに共感してもらうことが大事だと思いました。

藤村:もう少し踏み込んで聞かせてください。

青野:例えば、その人の情熱を100とします。通常副業を認めていないと、100のリソースからサイボウズを10でも20でも30でも分けてくれと考えがちです。もし副業を認めなかったら、その人の情熱はたちまち0になるかもしれない。

でも副業を認めていると、サイボウズの仕事と副業がそれぞれ100で、合計の情熱が200になることもありえます。副業によって、100という情熱のリソースを取り合うのではなく、総量が増えるという風に考えています。

藤村:情熱、気持ち、感情は大切です。

青野:僕も家事や育児をやっていて、当然仕事の時間は減ります。でも情熱自体は全然減りません。子育てをしながらでもサイボウズのことを考えたりしていますから。

これまでは長時間労働で長く働くことがよいとされていた。1度その価値観を捨てようと。情熱を持っていることが大事だとするならば、副業を認めることが本業への情熱をより高めてくれることになるかもしれない。

藤村:おもしろいのは情熱の総量を100として、そこから仕事の分配をすると考えるのではなく、総量自体を200に増やそうという発想ですね。

青野:人間ってそうできていると思うんです。気分がいい時には何やっても楽しいし、誰といてもおもしろい。気分がよくない時は誰といても楽しくないし、仕事もおもしろくない。そんなもんだと思うんですよね。

「今日はサイボウズでめっちゃ楽しい仕事ができるわ」と「今日もサイボウズで仕事か......。」と思って仕事をするのでは出てくる結果も違いますよね。

人間って結構あきっぽいと思いますし、そんなに集中できない。1日数時間が限度だと思うんです。違うことをやれば、それが刺激になって集中を促す感じですよね。

人間のモチベーションを見ようよと。気分が乗っていれば、本業の気分も乗ってくるでしょうと。

魚釣りの副業をしている人が、企業の存続をもたらす? イノベーションと新結合


藤村:副業を認めた場合に、会社にどんなことが起こりえるのでしょうか?

青野:イノベーションという話でいうと、フルコミッターもそうでない人も関係なく、多様な人が集まることが1つの条件ですよね。

僕が松下にいた時なんかは名刺交換の半分以上が社内の人とでしたからね。

藤村:ええー。

青野:半分どころじゃないね。8割9割以上のイメージ。今は変わっているかもしれませんが。

藤村:ええー(2回目)

青野:そうすると、入ってくる情報が社内に限られてしまいます。副業を解禁した瞬間に、2枚目、3枚目の名刺を持った人がいろんなところで情報交換し、その情報が社内にも入ってくる。

それが進めば、イノベーションに必要な新結合が出てくる可能性が増えますよね。本当に新しい結合を生み出すかどうかはビジョンが大事だと思っていて、「つないで新しい価値を生み出す」という気がなければ、最終的にはイノベーションを生まれないと思います。

藤村:LinkedInの創業者が書いた『ALLIANCE』も、まさにそういう考え方をされていたと思います。

会社と個人はフラットな信頼関係を築けるのか?

青野:LinkedInの人は卒業生を特に大事にしますよね。Alumni Network(同窓のネットワーク)というイメージでしょうか。日本でもようやくそういった考え方が出てきたのかなと。

会社の卒業生がどこで何をやっているかを知っておき、会社を卒業しても、会社のことをよく知っている彼らが味方になってくれる可能性が高いからです。

藤村:確かに。

青野:こうして人脈を作れたり、別業界のことを知るきっかけができたりもします。

企業が存続できる唯一の条件は、お客様が存在することです。言い換えると、お客様の問題を解決できるかどうかということ。つまり社会に今どんな問題が起きているのかを知っておけば、解決策だって提示できますということです。

どこで問題が起こっているのかを知らないことが、企業の衰退の理由になりえます。副業をするといろんな問題に直面するはずですし、別業界のことだって分かります。例えば魚釣りを副業にしている人が、魚釣り業界の問題を教えてくれるかもしれませんよね。

お金の移動がなければ副業と言えないのか?


藤村:副業は本当に奥が深いです。

青野:家事育児だって副業ともいえますし、親になった瞬間に育児も仕事です。誰かに頼んだらお金が発生することを自分でやっているということですよね。それって働いていることだと思いますし、副業していない人なんて世の中にないんじゃないでしょうか。

そもそもみんな副業していますよねって。 誰かの役に立つことをしていることが働くと言った瞬間に、みんな働いているでしょうと。

ただ、いまはお金が移動しなければ、副業ではないと考えるようになっています。そういう意味では、発生するお金や時間軸だけで副業を考えようとしてはいけないのかもしれませんね。

話しながら、まだ全然整理されていないなと思いました。副業は本当に深いテーマですね......。

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イラスト:マツナガエイコ

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本記事は、2016年6月30日のサイボウズ式掲載記事「青野さん、「副業禁止は経営リスク」って本当ですか?」より転載しました。