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サイボウズ式:会社員でもフリーでもない、その中間ぐらいの生き方を模索しているところです──モリジュンヤ×徳谷柿次郎

2017年06月28日 17時14分 JST | 更新 2017年06月28日 17時14分 JST

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「会社にいること=安定」の図式は変わりつつあります。一方で、会社を離れて起業やフリーランスになることが唯一の答えでもありません。

複業を柱とする人、会社のリソースを利活用しながら社外の人とゆるやかに連携して価値を創り出す人、プロジェクト・チーム単位で仕事をする人──。会社に「所属している/いない」の二元論を超え、従来型の組織や雇用制度の枠外で、仕事をしている人たちがいます。

個人と会社の生き方、働き方をうまく行き来しながら、自分の立ち位置を作り上げている人に話を聞いていきます。1回目はフリーライターから起業したモリジュンヤさん、会社員から独立した『ジモコロ』編集長の徳谷柿次郎さんに聞きます。

「フリーランス→起業、会社員経験なし」。「会社員からの独立」だけが唯一の正解ではない

徳谷:モリさんはフリーランスとして活動され、2015年に起業したんですよね。

モリ:はい。inquire Inc.という法人を立ち上げました。

徳谷:なぜ最初に、就職を選ばなかったんですか?

モリ:大学生の時に就活はしていたんですが、3年生の後半にリーマンショックが起こってしまって。

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モリジュンヤさん。『THE BRIDGE』などのメディアを中心にフリーライターとして活躍し、2015年に編集デザインファーム「inquire」を立ち上げた。大学3年生のころに出会った"おもしろい大人たち"の存在も進路を決める上で大きかったという。「IDÉE(イデー)」の創業者 黒崎輝男さんや、現在Next Commons Labを運営する林篤志さんが立ち上げた自由大学で、佐々木俊尚さんが講師を務める「ノマドワークスタイル」講座などに参加。そこで『サイボウズ式』初代編集長である大槻幸夫にも出会い、自由な人生の選び方に気づかされたのだとか。大学卒業後は、在学中に出会った面白い大人たちが運営するメディア『greenz.jp』に編集アシスタントとしてジョインした。

徳谷:ちょうどリーマンショックの時だったんですね。

モリ:はい。大きな金融機関が消えるのを目の当たりにしたとき、「自分で自分の人生をコントロールする」という選択肢について考え始めました。そのときから起業したり、フリーとして仕事をすることも選択肢に入っていきました。

徳谷:いきなりフリーになるのに躊躇(ちゅうちょ)はなかったですか?

モリ:20代前半をフリーランスでやってみて、通じなければ会社に勤めて働こうとは思っていました。

徳谷:まずはフリーランスがあったと。

モリ:就職して5年ほど働いて、スキルや経験を身につけてから、30代前後で独立しようと考える人は少なくないと思うんです。

ただ、自分の性格を考えると、会社員からフリーになるのは難しいと思ったんですよね。給料をいただきながら、スキルを高め、経験を積み、不自由がない暮らしが送れていたら、きっと辞めづらくなるから。

徳谷:なるほど。

モリ:それもあって、まだ守るものがない今だからこそできると考え、まずはフリーランスで働いてみることにしたんです。

いずれにしても、働き方の試行錯誤というか検証作業は、なるべく早いうちにやるべきではないかって考えていました。

徳谷:キャリアの順番は必ずしも一直線ではありません。複数の選択肢があってもいいということに気づいて、実行したということですよね。

モリ:そうですね。

「会社員数社→独立・起業」。浅瀬で溺れて、チャンスをつかむ

モリ:柿次郎さんは、編集プロダクションのノオト、バーグハンバーグバーグでの会社員生活を経て、2017年に起業・独立されました。きっかけは何だったんですか?

徳谷:独立のきっかけの1つは間違いなく、『ジモコロ』を通じてローカルに惹かれ、自分で生き生きと仕事を作っているおもしろい人たちに出会ったことです。

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徳谷柿次郎さん。2016年にバーグハンバーグバーグを退職し、株式会社Huuuuを立ち上げた。『ジモコロ』編集長。上京するきっかけとなるノオト代表・宮脇淳氏とは東京で行われた『R25』の編集会議で出会ったという。松屋でシフトリーダーとしてバリバリ働いていた26歳。「チャンスが来たから、このあとのお金の締め作業を任せていいか?」といっしょに働いていたおばちゃんに仕事を任せ、宮脇さんに会いに行った。

モリ:柿次郎さんは、Web制作会社のバーグハンバーグバーグのなかでも、ちょっと特殊な働き方をされていましたよね。

徳谷:日本全国への地方取材が多かったんですよね。その中でどうしても、仕事のオンとオフの境目がなくなっていったんです。土日に取材して、月曜日からまた取材に行くこともありましたし。

定時や有給をどうするとかも考えることになりました。いわゆる「承認をとる」というプロセスが増えることで、自分の働き方や直感的なものが損なわれていく感覚もあったかもしれないです。

モリ:ありますよね。

徳谷:つまり、会社と自分の働き方の仕組みがフィットしなくなってきたんですね。途中からわがままを言って合わせてもらえる部分は調整してもらっていたんですが、会社組織のなかで自分だけ特別扱いはできませんからね。迷惑をかけた部分もありました。

モリ:なるほど。

徳谷:取材活動で、月の半分近くを地方で過ごすようになってからは、東京的な働き方そのものとのバランスがとりにくくなっていた側面もあります。単純に満員電車ツラいなぁ...とか(笑)。

モリ:それで2017年1月にHuuuuを立ち上げたと。

徳谷:はい。起業は直感でした。

モリ:直感ですか?

徳谷:そうです。それこそノオトからバーグ(ハンバーグバーグ)へ移るときも直感と行動力で決めました。行動力に対して決断を下せる回数を増やした方が、自分のためになる確信があったんです。

根っこにあるのは、自分の裁量と全責任でやってみたかったという気持ちなんですけどね。

モリ:会社からの独立について考え始めてから、意識されていたことはありますか?

徳谷:「自分はこういうことをやりたい」と言ったときに、理解・協力してくれる人間を周りに作ることが大切だと思います。

もしくは自分がやりたいと言っていることを、また別の人に伝えてくれる人をどれくらいもつか、ですね。これは独立に限らず、フリーランスでも会社員でも同じかなと思います。

モリ:確かに。

徳谷:僕はよく「浅瀬に溺れろ」という言葉を使うのですが、深いところで溺れていても誰も気づいてくれません。ちょうどいい浅瀬で、手を差し伸べてくれる人を待つということです。

"ギルド的組織形態"のなかで個人名と組織の記号を使い分ける

モリ:そういった思いを経て作ったHuuuuは、どういった組織形態ですか?

徳谷:現在Huuuuには僕を含めて仲間が4人いますが、雇用関係はありません。イメージとしては会社員とフリーランスの中間で、「ギルド」という言い方もできるかもしれません。

モリ:inquireでも、雇用関係は結んでいないですね。

徳谷:今後フリーランスで生きていくのであれば、"1人経営者意識"をもつことが時代を生き抜いていくために必須になっていくと思うんですよね。

会社がある程度の規模になってくると、全員がフルで働かなくてもまわってくるじゃないですか。環境に甘んじて脳みそを使わなくなった途端、個としての成長は止まってしまうのかなと。僕自身もそこに怖さを感じています。

これからは何が起こるか分からない時代なので、早めに時間を使って動いていく人が生き残るのは明白ではないでしょうか。

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柿次郎さんが好きなラッパー、SHINGO☆西成の『心配すな..でも安心すな』という曲も、柿次郎さんの生き方を支えているそうだ

モリ:僕も仲間集めでは、そうした意識を持っている人を求めています。ただ、フリーランスの集合体は、従来の会社組織とは力学が異なり、よりコミュニティに近い感覚なんじゃないかなと思っていて。

その環境でどう動いていくかについては、経営学者のヘンリー・ミッツバーグが提唱している「コミュニティシップ」という概念が参考になります。

特定の人がリーダーシップで組織を引っ張っていくのではなく、何かしらの共通項によって結ばれた人達がコミュニティにそれぞれ貢献していくというコンセプトです。

徳谷:モリさんが会社を作ったきっかけは何だったんですか?

モリ:法人を作った理由はいくつかありますが、「モリジュンヤ」という記号と「inquire」という法人の記号を使い分けていくことで、所属メンバーにも自然と仕事が回せるのではないかと考えたからです。

僕の仕事は編集やライティングですが、この仕事はどうしても労働集約的になりがちでした。自分が働ける労働時間の総量の限界が見えつつあったんです。

徳谷:そうですよね。

モリ:個人名で仕事を受けることも多いのですが、その場合はどうしてもほかの人に振りづらくなります。

でも、中には、僕ではなくてもできる仕事の依頼も来ます。法人として会社を受けることで、自分以外に仕事を回せるように法人を作ったという感じです。

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徳谷:記号...フリーランスとして仕事をはじめたときから、そんなに自分を客観視していたんですか?(笑)

モリ:そんなことはないです(笑)

徳谷:僕とモリさんの一番の違いは成り立ちかも。僕はモリさんとは違って、『オモコロ』やバーグを含めたカルチャーが出自です。

カルチャーの人間がローカル、ソーシャル方面に入ってきたことで珍しがってもらっているという自覚もあるんですよね。

生活ありきの働き方をするための、"生存本能"と"好奇心"

モリ:僕は柿次郎さんのようにカルチャー寄りの人間ではないかもしれませんが、「意味がないとしてもそれでも面白そうだからやる」というスタンスを大事にしたいんですよね。

徳谷:それは間違いなく大事ですね。

モリ:抽象度が高い物事にも、みんながもっと「いいね」と言える価値観を共有していかない限り、おもしろいものを生み出していく人が少なくなってしまいますから。

それをやらないと、社会がどんどんつまらないものになってしまうんじゃないかと。これはとてももったいないことです。

徳谷:うんうん。

モリ:この立場で仕事をしていて最近よく思うのは、「何のためになるの?」や「答えは何?」というような分かりやすい情報を、みんなが求めすぎているのではないかということです。

たとえばビジネス系のイベントでも、「参加することで明日から使えるスキルが身につく」といった即物的なものが多いじゃないですか。

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inquire inc.では、メディアの立ち上げや運営に加えて、社内報のコンテンツを制作したり、社内の新たな動きを伝える情報発信を行うことで企業のインナーコミュニケーションを支援している。人や組織の意識を変えながら、自律性を高めるのが狙いなのだという

徳谷:それでいうと、僕の場合は「生存本能」のようなものがあるかもしれません。安定を感じたら環境を変え、これまでずっとカウンターで生きてきたので。カウンターとは、まだ存在しない、もしくは対抗するような、という意味合いです。

ちなみに、今月からは長野と東京の2拠点生活を始めます。

モリ:そうなんですね。

徳谷:仕事の考え方としても、既存に存在するものの中間にカウンターを作っていく意識が強いかな。

結果として、人は「そこから生まれる今までなかったもの」に振り向きやすいと思ったんです。

僕はたまたま好きなものが多い人なので、それをどう仕事に置き換えていくかしか考えていないですね。

モリ:ワークライフバランスというよりは、生活ありきの働き方にシフトしつつあるような気がします。

仕事と生活を切り分けるというよりは、両方をポジティブにとらえられるような暮らし方や働き方を考えたほうがいいのではないかということです。それはフリーランスでも会社員でも同じです。

「波風が立っていない状態は怖い」迫られる"安定"の再定義

徳谷:「人生で安定しているな」と感じたことってありますか? そもそも「安定とは?」という定義について、衣食住が満たされていればそれで安心なのか否か。

モリ:僕のなかではわりと安定しているんです。もしかしたら、僕の働き方は安定していないと思う人がいるかもしれませんが......。

僕にとっての安定している状態は、「次に何をやらないといけないか」を考え続けながら、必要な情報を仕入れたり、人に会う。次にステージに向けた動きができていることです。

徳谷:いいこと言う〜。

モリ:逆に仕事自体はたくさんあって、一見安定しているように見えても、新しい仕事が見えずに、自分の進歩が感じられないときは、精神的に不安定だったりします。

徳谷:僕にとって安定だと感じるのは、常に20〜30%くらい自分の想像していないような何かが降ってきている状態で。そこに身を置いておくことかもしれません。

いかに風を立たせるかを考えると、自分から何かを削ったり、捨てたりする。あるいは投資の仕方を考え直すとか。波風があまり吹いてこない状態は、逆に怖いんですよね......。

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対談の終盤、「スッと消えていきたい...」とこぼしたモリさん。なんでも以前の自分と比べてインターネット上で目立たなくなってから、売り上げが伸び始めたのだとか。

徳谷:世の中で喧伝されるような「新しい働き方」に尻込みしてしまう人も少なくないと思います。分かりやすいからこそ、違和感があるというか。

モリ:メディアの仕事をしていると感じるジレンマは、分かりやすくないと読まれないという一面です。でも、物事の大半は分かりやすくなかったりするんですよね。

徳谷:ライターや編集者は比較的、新しい働き方を試しやすい職種です。それ以外の職業の人にとっても、新しい働き方が模索できるかなと。

モリ:なので、メディア業界だけでなく、製造業や飲食業のような場所に縛られやすい業態の方が、今後の働き方をどう考えているかについて知りたいんですよね。

徳谷:起業やフリーランスにかかわらず、あえて企業のなかに身を置きながら、環境と予算、そして時間を使っておもしろいことをやっている人たちもたくさんいますからね。

会社に就職することなく、フリーランスの道を歩み、記号を使い分けるために法人を設立したモリさん。カウンター志向で会社を移動しつつ、独立、ギルド的組織運営で新しい仕事の進め方を模索する柿次郎さん。別々の道を歩まれてきたお二方のこれまでを伺うと、キャリアは決して一直線ではないということにあらためて気づかされます。そして、"小さなオープンイノベーション"は会社員やフリーランスといった立ち位置に起因するのではなく、個として"安定"をいかにとらえ、行動するかに懸かっているのではないでしょうか。(長谷川リョー)

取材・文:長谷川リョー/写真:橋本美花

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本記事は、2017年6月15日のサイボウズ式掲載記事会社員でもフリーでもない、その中間ぐらいの生き方を模索しているところです──モリジュンヤ×徳谷柿次郎より転載しました。

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