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サイボウズ式:育休中もスーツを着る<40男>──昭和と平成の「男らしさ」の狭間に生きる

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左から2015年に中途入社したサイボウズ株式会社 ダイレクトマーケティング部 副部長 倉林一範、「男性学」を研究する武蔵大学 社会学部 助教 田中俊之さん、産前産後の家事サポート会社アイナロハ代表取締役の渡辺大地さん

日本男性の平均寿命は80.5歳(2015年厚生労働省発表)。現在、ど真ん中の40歳は、中学・高校で男は技術・武道、女は家庭科と性別によって教育内容が分かれていた最後の世代。バブル期は中学生で、社会人になるころは経済不況。前の世代に比べ、晩婚化が進み、共働きの割合も多い。

そんな40歳を中心とした30代後半から40代前半を「40男」とよび、著書『<40男>はなぜ嫌われるか』で清々しいおじさんになることを提唱している男性学の研究者 田中俊之さんも40歳。同じく40歳で前職では育休を取り、サイボウズに転職をした社員の倉林一範、『 産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』著者で35歳のアイナロハ代表 渡辺大地さんと共に「40男」の仕事と家庭、心の内を語り合った。

いまどきの<40男>


倉林:モテ期は人生で3回あるといいますが、田中先生の『<40男>はなぜ嫌われるか』を読んで「モテ期なんてないんだ。そんなこと考えていたらキモイんだな」と気づきました(笑)

田中:普通何歳でもモテ期はないんじゃないですか? 勘違いじゃないかな。

倉林:勘違いですかね、やっぱり。この話、ちょっと恥ずかしくなってきちゃった。

渡辺:田中先生のところは2月に出産予定ですね。

※編集部注:予定より早く1月に息子さんが生まれました

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田中俊之 1975年生まれ。武蔵大学人文学部社会学科卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。博士(社会学)。2013年より武蔵大学社会学部助教。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめる論客としてメディアでも活躍。著書に『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト・プレス)などがある。2016年1月に長男誕生。1児の父。

田中:渡辺さんの『産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』を読みましたが、産後の女性や育児について渡辺さんが驚く様子がたくさん描かれていました。渡辺さん世代でも、奥さんとあれほどギャップがあるのですね。

渡辺:40代の方はもっとギャップがあるようです。僕は毎週末、父親学級と夫婦向けのワークショップをやっていますが、主催者さんから「40代の男性が話を聞かない」といわれます。そういう講座に来たがらない方も多く、来ても「俺はイクメンにはならない」という人もいます。

その辺りは、田中先生はどうですか? 世の中で「イクメン、イクメン」と言われる中、息苦しさはありますか?

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渡辺大地 アイナロハ代表取締役 ままのわ産後パートナーズ代表取締役 1980年、北海道札幌市生まれ。明治大学法学部卒業後専門学校で油絵を学ぶ。就職ののち、2007年に結婚。2011年に株式会社アイナロハを設立。2015年12月、株式会社ままのわ産後パートナーズの代表に就任。著書に『産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』(KADOKAWAメディアファクトリー)など。2児の父。

田中:男の人は、働いていれば責められないというところがありますよね。渡辺さんは会社を辞めたときに、奥様は心配されなかったんですか?

渡辺:会社を立ち上げる時ですか? うちは逆に妻が「会社やっちゃいなよ」という感じで大賛成でした。普通は反対されますよね?

田中:一般的には雇われて働くのを辞めることは、かなり抵抗があるんじゃないですかね。

というのもお父さんの第一の役割は家族が食べていけるお給料を稼いでくるという認識が男女共にあると思うので。育児に積極的でないことを開き直るお父さんもいます。

倉林:僕は育休を半年取りましたが、育休中も毎朝スーツに着替えて保育園に送りに行きました。

3人目の時だったので、真ん中の子が「お父さんがずっと家にいるのだったら僕も保育園に行きたくない」と言いだすのではないかと心配だったのです。

ただ近所の人には「なんで平日の日中に両親とも家にいるの? 仕事クビになっちゃったんじゃない?」と思われていたかもしれません(笑)

会社員と大学教員の育休事情


田中:アクセンチュアって育休が取れるんですか?

倉林:もちろん上司・メンバーのサポートを受けて業務調整のうえ取得しました。元々プロジェクト単位でアサインされるので、プロジェクトとプロジェクトの間にまとめて休みを取ったりする人はけっこういました。僕は持っていた業務を引き継ぎ半年間育休を取りました。

実は、育休を取得する時よりも、育休から復帰する時の方が大変でした、仕事的にも・体力的にも......。

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倉林一範 1975年生まれ。サイボウズ株式会社 ダイレクトマーケティング部に所属。アクセンチュア時代に半年間、育児休業を取得。働き方を見直し地域活動に取り組む。2015年7月にサイボウズに転職。3児の父。

田中:仕事の部分がもっと軽減されないと育児をするのは厳しいのではという気がしますね。

渡辺:田中先生はお子さんが生まれますが、変えるところはありますか?

田中:変える必要が無い仕事なんですよね。たまたまですけど、大学は、2月3月は春休みなんですよ。だから自動的に2月の初旬に生まれれば2か月はフルで休みです。

渡辺:いわゆる会社でいう上司にネゴシエイトして、休みを勝ち取るとか引き継ぎをするとかはないんですね?

田中:ないですね。ちなみに、今日は夕方以降(※)も働いているのでそろそろ「残業かな」と感じています。

※編集部注:16時00分から取材を開始

渡辺:僕もそろそろ残業時間です(笑)

倉林:僕は、「これはむしろ休憩かな?」みたいな感じです(笑)

田中:週5日、フルタイム労働で固定の人は、育児に参加したいといっても厳しいでしょうね。

仕事が好きな妻、詰める夫


渡辺:田中先生の奥様は働いていらっしゃいますか?

田中:働いていますよ。今、産休に入っていますが。勤め先は東芝の監査をしている監査法人なので「お前のところの監査が甘い」って処罰されています。だから妻が育休を明けて帰ったらないんじゃないかな。

まあ1歳児の4月に保育園に入れればいいですね。うちの場合は妻は週5日ですが、僕が週3日労働なので多分復帰後も成り立ちます。フルタイム同士だと、やっぱりにっちもさっちも行かなくなっちゃうでしょうね。

倉林:うちはフルタイム同士です。僕が18時に定時で上がっても家につくのは19時半です。迎えは妻が行くのですが、そこにはやっぱり不満があるようです。妻も仕事が好きなんですよ。

渡辺:残業したいということだよね。

倉林:そう。ただ残業をすると忙しすぎて家の中がしっちゃかめっちゃかになってしまう。1カ月に一回か2か月に一回は仕事を辞めたいという激論もくる。

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渡辺:その時はどうしているんですか?

倉林:良くないんだけどけっこう理詰めでやっちゃうんです。

保育園が幸か不幸か20時まで預けられるので、妻はぎりぎり20時まで仕事をやってしまうのです。そこで私は「20時に帰れるのだったら18時に帰れないことはない」って言っちゃう。それでだいたい喧嘩になります。

田中:男の人は、女の人が愚痴を言っている時に論理で返すというのはダメですね。「大変だ」ということには「大変だよね」と共感してほしいのではないでしょうか。そこで理詰めはいかがなものかと。

倉林:一回だけ「そうだね。大変だね。」って言ったら、「今の返事正解。100点」って言われました。

ついつい働きすぎしてしまう問題


田中:渡辺さんも倉林さんも、仕事が楽しいタイプですよね?

渡辺・倉林:楽しいですね。

田中:僕そういうの、全然わかんない。

渡辺:好きじゃないんですか?

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田中:仕事は嫌いですよ。

渡辺:授業するのも好きじゃないんですか?

田中:もっと少なければね。週1回とかだったら(笑)働かないで済むなら、働きたくないんですよ。

渡辺:マジですか? 本を書くのとかも? 中身も楽しんで書いているとしか思えないんですけど。 苦痛なんですか?

田中:編集者の人に「次はいつ締切りですよ」っていわれるので。

倉林:僕、『<40男>はなぜ嫌われるか』第6章で泣いたんですけど。最後に「40代は夢をもて。僕はその夢を応援したい」みたいなことも書いてあって。

渡辺:先生、イヤイヤ書いているからね。(笑)

田中:仕事が好きだからついつい働きすぎちゃうという、この問題もまともに考える必要があるんじゃないですかね。

仕事の楽しさとはなんなのか?


渡辺:世の中には仕事を嫌いな人の方が多いのでしょうか?

田中:アンケート調査で、「できれば働きたくない」という質問をすると、男女問わず肯定と否定が半々ぐらいになります。

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倉林:宝くじ当たったらどうします?

渡辺:働いちゃうな。仕事するな。

倉林:俺も。でも、仕事をしたいっていう感情すらも、操られているのかなぁ?

田中:お二人にとって仕事の楽しさってなんですか?

渡辺:いろいろなところからお仕事をいただけるというのは必要とされている感じがありますよね。

倉林:褒められるっていうか。承認っていうか。

渡辺:本の出版など自分の意見が形になるってものすごい喜びじゃないですか?

田中:ああ、嬉しいですよね(笑)

仕事上の評価で嬉しいって思う度合いの方が高かったら、やっぱり育児を頑張れないのではないかなと思うんですよね。

家庭での事ってすごく個人的なことじゃないですか。奥さんがいつも感謝してくれるわけではないし。自分でやっていかなければいけないことだから、そもそも褒められるようなことでもない。

仕事をやっていれば褒められるんですよ。一生懸命、本を書いたり、残業したりすれば「ああ立派にやっているね」と。この快感から抜け出さないと育児の方にはベクトルが行かないんじゃないかな。

倉林:まさにそうですね。仕事って公式というか、時間なりの労力をインプットするとそれなりに成果が出るじゃないですか。育児は結果にならなかったことも山ほどあります。

渡辺:目に見えては出てこないですもんね。

田中:男って比べるのをやめられないみたいなところがありますね。例えば年収って数字で出てくるから人と比べられるじゃないですか。「俺の方が高い」みたいな優越感とか、それは働けば働くほどじゃないですか。やっぱりここからある程度距離を取れるようにならないと。

さっき倉林さんは操られているかもって言いましたけども。競争して勝ったというのは、気持ちいいんですよね。自己肯定感を得やすいし。褒められるし。このへんの評価の軸を変えていかないと。

会社と社員の関係が対等

倉林:ちなみにサイボウズの人事の評価の軸の半分は市場価値なんですよね。社内の信頼感も大事ですけど、社内だけの評価じゃないんです。

田中:おもしろいですよね。会社にどれだけ自分のパワーを投資できるかという軸で評価する企業も多いじゃないですか。市場でいくら価値があるかっていうことになれば、休日出勤をしているとか、残業しているとかは関係ない評価ですものね。

倉林:会社に従属ではないところに、もう一つパラメータが増えますよね。

田中:社員と会社の関係が対等で両方ピリピリできますね。

倉林:「転職いつでもするよ」みたいなのが大事だと。

渡辺:緊張感がありますよね。

倉林:はい。旧来型の評価のしかただと首根っこを掴まれているというか、会社に逆らうとえらい目に合うよということになっている気がするんです。でも雇われている側と雇っている側は対等だと思うのです。今のサイボウズでの会社と社員の関係性はすごくいいと思います。

後編に続く

撮影:尾木 司 文:渡辺 清美

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本記事は、2016年3月3日のサイボウズ式掲載記事「育休中もスーツを着る<40男>──昭和と平成の「男らしさ」の狭間に生きる」より転載しました。