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サイボウズ式:「好きでもないことを無理矢理やれる能力なんて、社会に出たら全く必要ない」――大前研一×サイボウズ青野慶久社長対談

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2014年11月28日に開催される「cybozu.comカンファレンス2014」。東京会場ではあの大前研一氏がクラウドにまつわる講演を行います。その事前打ち合わせのため、サイボウズの青野慶久が大前氏の事務所を訪問。クラウドがこれから世の中をどのように変えていくのか、意見を交換しました。

そこからいつしか話は教育の分野へ。「宿題をやるくらいならゲームをやれと言っていた」などの超ユニークな"大前流育児論"に、イクメン経営者として知られる青野も興味津々で聴き入ります。既存の常識に縛られたレガシーな思考をバッサバッサと斬り捨てる痛快な"大前節"を、イベント講演に先立ち、まずはこちらでお楽しみください!

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日本の公共サービスはクラウドのメリットをまだ生かせていない

青野:このたびは「cybozu.comカンファレンス2014」での講演をご快諾いただきありがとうございます。今回のカンファレンスのテーマは「チームを強くするクラウド」。サイボウズは今、クラウドに社運をかけ、「ここでダメなら会社が終わる」くらいの気持ちで全力を投入しています。

大前:クラウドは、企業はほうっておいても使うんですよ。これから先、本当にクラウド導入のメリットが出てくるのは、パブリックサービスの部分だと思う。これまでは市町村・都道府県・国すべて縦割りで、バラバラのシステムを作ってきたでしょう? 中身は全部同じなのに。例えば、選挙の際に、市町村が電子投票システムを作ったとしても、それを県議会や国会の議員選挙には使えない。発想が個別対応なんですよ。

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青野:確かにバラバラで効率が悪いですよね。

大前:その点、クラウドならば、最初に1つクラウド上にシステムを設計すれば、それを市町村でも、県でも、国でも利用できます。ここがクラウドの最大のメリットですよね。最小単位のものを1つ作れば、最大単位をカバーできる。

青野:おっしゃるとおりですね。

大前:そういう意味では、エストニアはかなり進んでいますよ。人口わずか130万人の国ですが、2000年からすでに電子政府を導入しています。閣議もすべて電子会議で、それを国民もすべて覗ける。

もっとすごいのは、国民1人ひとりのIDをスマートフォンのSIMカードに入れるようにしたんです。それで本人証明やサインもできてしまう。
電子投票システムも、地方選挙では2005年から、国会の選挙でも2007年から導入しています。海外在住のエストニア人もこのシステムを使って投票できるんです。

青野:そこまできていますか。投票のためにわざわざ近くの小学校まで行く必要はないんですね(笑)

大前:電子教育も進んでいますよ。クラウドに生徒の成績や出欠などの情報を上げていて、親も先生も本人も見られる。

青野:サイボウズはある県で教育関係のクラウドをやっているんです。今の日本の学校では、例えば生徒が隣町の学校に転校しただけで、情報が引き継がれない。それまで先生とどのようなやり取りを行ってきたかわからず、完全にゼロクリアになるんですよ。

大前:人口100万人の国でできているのにね。日本はレガシーに凝り固まってしまっているんですよ。発想そのものを変えないと。

"最小のユニットをいかに構築するか"がクラウドのキモ

大前:クラウドでは、誰と誰がどういう形で結びついているかを原点として最小単位のユニットを構築するのが大事。先ほども言ったように、クラウドはスケーラブル(拡大縮小が可能=大規模な変更をしなくても質的・量的変化に対応できる)ですから、まず最小単位で作ってしまえば、あとはどのようにでもなる。

青野:ええ。

大前:例えばPOSシステムなども、端末にiPadなどを使い、受発注や売掛回収、在庫管理といったシステムはすべてクラウド側に持っておく形にして、最小単位で構築すれば、そこからいくらでも拡大可能。かなりレベルの高いPOSシステムを月々3000円程度で利用できるようになります。こうなると従来型のITゼネコンは不要になってしまう。

青野:最小のユニットをいかに構築するかがキモなわけですよね。

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大前:そうです。ただし、クラウドだけではダメ。ただ単純に「データを預かります」といっても、価格競争になりますから。無味乾燥なクラウドを肉付けするソフトコンテンツも考えなくなくてはならない。そこに一歩踏み込めれば、強烈なものを生み出せます。

青野:なるほど。

大前:もう1つ、「群衆」という意味のクラウド(CROWD)も重要です。代表的なのがクラウドソーシング。僕も日本語のプレゼンシートを英訳する際には、「オーデスク」というクラウドソーシングサービスで募集をかけるんです。発注先は例えば駐在員の奥さんとか。見事な仕事をしてくれますよ。駐在員本人よりも、えてして奥さんのほうが優秀だったりするんです(笑)。それに安いですし。

青野:実はサイボウズも最近、企業ロゴを新しくするのに、クリエイターを「ランサーズ」というクラウドソーシングサービスで募集したんです。1400個も応募が来ました。「ランサーズ」の過去最多記録だったようで。

大前:大手食品会社が主婦に5万円で自社商品のキャッチフレーズを募集したこともありましたよね。いずれにせよ、クラウドソーシングなども使ってみないとその威力がわからない。そういうもので外部の力をうまく活用して、会社はなるべく小さくする、というのがこれからの流れになるでしょう。

"目に見えない大陸"をどう削り取るか

青野:実は私は、クラウドは既存のビジネスを破壊するものかもしれないと思っていたんです。でも、実際にやってみるとそうではないことに気づきました。そこからまた新しい市場が生まれて、大きく成長している。これなら思い切って投資できるなと。

大前:確かにクラウドは新興企業にとっては福音になりますよね。巨大なシステムを入り口で作る必要がないですし。エストニアがたったの10年ですごいシステムを作れたのも、クラウドがあったからですよ。小国とか後発とかも関係なくなりますから。

青野:非常によくわかります。

大前:僕は10数年前に、『The Invisible Continent(見えない大陸、日本語版は『大前研一「新・資本論」―見えない経済大陸へ挑む』)』という本を書きました。21世紀のサイバー社会は目には見えないが、見える人には見える。その"見えない大陸"をいかに削り取って自分の領土にするかが勝負になります。西部劇の世界で、ワイルドウエストに杭を打って牧場をつくるようなものです。

青野:インビジブルな中で、この人とこの人はどういう関係で何をやっているかを削り取り、そこに必要なものを提供する、ということですね。

大前:まさにそのとおりです。クラウドやSNSによって、末端の人と人とがつながる、真のユビキタス社会が実現できた。その"末端の人と人との関係"をプロトタイピングできれば、いいシステムが作れると思う。

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立派な大学を出た人は"21世紀の絶滅危惧種"?!

大前:今、世界では大きな革命が起こっているんだから、レガシーな考え方はいらない。だいたい会社の中でも、レガシーにどっぷり浸かっていて、既存のやり方に固執する人間が抵抗勢力になるんですよ。サイボウズにはそういう人はいないと思うけれども(笑)

青野:いやいや、どうですかね(笑)

大前:そういう意味で、僕はクラウドのシステムなんかは高校生に作らせたほうがいいと思っているんです。立派な大学を出た奴なんて、常識に凝り固まっていてダメだよね。そういう人間は、いい学校を出て、いい会社に就職して、といった既存の秩序に取り込まれていて、21世紀の絶滅危惧種のDNAを持っている。

青野:絶滅危惧種ですか!(笑)

大前:だったら高校をドロップアウトしました、みたいな奴にやらせてみたほうがいい。うちの次男なんて、行った学校を全部中退しているから。

青野:ええっ、そうなんですか?

大前:中学はドロップアウト、高校だけは卒業したかな。その後、USC(南カリフォルニア大学)でコンピュータを専攻していたけど「もう勉強することはない」なんて言ってそこも中退。なのに3年分の授業料は払わされて参りましたよ。まあでも、今はIT企業のNo.2でバリバリ働いていますから。ドロップアウトしたおかげで絶滅危惧種にならずに済んだ(笑)

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好きでもないことを無理矢理やれる能力なんて、社会に出たら全く必要ない

青野:面白いなあ。大前さんの育児理論にもすごく興味があります。私は2回育児休暇を取ったことから、"育児をする社長"というブランドがついていて。育児に対する考えが変わらないと日本は変わらないと思っているんです。

大前:僕は文科省の毒から子供を守るのが親の務めだと思っています(笑)。息子に家で宿題をやれなんて言ったことないですよ。それじゃ家庭における先生の代行者になってしまいますから。宿題をやるくらいならゲームをやれと言っていました。

青野:確かに、好きでもないことを無理矢理やれる能力なんて、社会に出たら全く必要ないですからね。それよりも好きなことに思いっきり没頭できる能力のほうがずっと大事で。

大前:そりゃそうですよ。21世紀にはレールはないのに、学校では"ここを行っても先はないよ"というレールをあえて走らせようとしている。だいたい、学校の先生なんてもっとも無精でリスクを取らない人間ですよ。大学を出る時に取った免許だけを頼りに一生メシを食っていこうとしているんだから。そんなのに子供を預けてもロクなことにならない。

青野:ははは!

大前:とはいえ、僕も息子が中学生の時、成績が下がってきたので心配になったことがあって。お金を出すから家庭教師をつけろ、と言ったんです。そしたら息子は、学校の勉強を教えてくれる人じゃなくて、コンピュータプログラミングの先生を自分で探して連れてきちゃった。

青野:頭いいですねえ!(笑) レールのないところを走りますねえ!

大前:しばらくたった頃、うちにIBMの副社長が遊びに来て、息子と何だか難しい議論をしていたんです。それが終わったら息子に、「今すぐIBMに来て働け」とオファーをしていて。あれからサボりだしたんだな。もういつでも就職できるから大丈夫だって(笑)

青野:すごい話だなあ。

大前:いずれにしても、ビジネスにせよ何にせよ、自分でレールを作って「この道で行く」と決めてやった奴が勝ちますよ。21世紀には今までと全く違う人種が必要。今の日本では、20世紀型の人間を育てる教育にマジョリティがはまっているのが問題で。実際、学習指導要領のないスポーツや音楽、芸術の分野では、優秀な日本人がたくさん出ているじゃないですか。

青野:教育の分野でも、今までのルールを壊していかないといけないですね。

大前:おっと、ちょっと話がそれたけど(笑)、講演はしっかり準備していますから安心してください。

青野:ありがとうございます! 私自身もすごく楽しみにしています!

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文:荒濱一、撮影:橋本直己

サイボウズ式編集部からのお知らせ:

2014年11月28日に東京で開催される「cybozu.comカンファレンス2014」。基調講演ではサイボウズ 青野慶久が「この変化はリスクか、チャンスか」、特別講演では大前研一さんが「クラウド導入が開く日本の未来」というテーマで話します。カンファレンスのお申込みはこちらのページから。

(サイボウズ式 2014年8月28日の掲載記事「「末端の人と人との関係をプロトタイピングできれば、いいシステムが作れる」――大前研一×サイボウズ青野慶久社長」より転載しました)

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