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サイボウズ式:「言われなくてもできる人」に頼るのは甘え

2015年04月25日 15時02分 JST | 更新 2015年06月23日 18時12分 JST

【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は、日野瑛太郎さんによる「仕事を任せる際の適切なコミュニケーションのとり方」について。

特に細かい指示を出さずに仕事を頼んでも、意図どおりに完璧に仕事を仕上げてくる人がいます。日本の会社だと、このような「言われなくてもできる人」は優秀な人だとみなされる場合が少なくありません。

「言われなくてもできる人」と一緒に仕事をするのは、ある意味では気持ちのよいことでもあります。チームで仕事をする場合には低コストで質の高いコミュニケーションを取ることが生産性を上げる鍵になるので、このような人は重宝されます。

もっとも、「言われなくてもできる人」はそれほど多くいるわけではありません。そもそも、「言われなくてもできる人」だと思われている人も最初から「言われなくてもできる人」だったということはなく、豊富な業務経験の蓄積から言われなくても他人の意図が汲めるようになったという場合がほとんどです。新人に「言われなくてもできる人」であることを求めてもそれは叶いませんし、標準から大きく逸脱するような指示は「言われなくてもできる人」が相手であっても、言わなければやってもらえません。「言われなくてもできる人」に依存する仕事の進め方は、どこかで必ず行き詰まります

チームで仕事を進めるなら、やはりコミュニケーションは適切に行わなければなりません。そこで今日は、そんなチーム内における適切なコミュニケーションの方法、特に仕事の指示の与え方ついて考えます。

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高コンテクスト文化と低コンテクスト文化

チーム内におけるコミュニケーションについて考える前に、まずはコミュニケーション全般について考えてみましょう。コミュニケーションのもっとも標準的なものは言葉を用いて行うコミュニケーションですが、コミュニケーションで表明される意図は必ずしも言葉にすべて含まれているとは限りません。コミュニケーションの際には、言葉の字面だけでなく、コンテクスト(文脈)を読むことも重要になります。

たとえば、「いつものあれやっておいて」と上司から指示されたとして、「いつものあれやっておいて」という言葉だけいくら眺めていても、指示の内容は特定できません。このような曖昧な指示でも部下が自分が何をすべきか察して動くことができるのは、この指示が出された状況や普段から自分がしている仕事などのコンテクストを参照し「いつものあれ」が実際には何を指すのか特定できているからです。前述の「言われなくてもできる人」はこのコンテクスト参照能力が優れている人だと言い換えることもできます。

コミュニケーションの際、どの程度コンテクストを参照する必要があるかは文化圏によって異なります。アメリカの文化人類学者であるエドワード・T・ホールは、その頻度によって文化を高コンテクスト文化、低コンテクスト文化に分類しています。高コンテクスト文化では実際に言葉で表現していない内容まで相手に伝わることを前提としてコミュニケーションが行われ、低コンテクスト文化では言葉で表現していないことは基本的には伝わらないとしてコミュニケーションが行われます。

お気づきのように、日本はかなり高コンテクスト文化の国です。一方で、欧米は低コンテクスト文化だと言われています。よく「欧米人ははっきりとノーを言う」という話を聞くことがありますが、これは「言葉で表現していないことは基本的には伝わらない」という低コンテクスト文化の発想に照らせば納得できます。

高コンテクストなコミュニケーションにつきまとうリスク

高コンテクスト文化も、低コンテクスト文化も、別に優劣があるというわけではありません。日常生活を営む上では、自分の国の文化にあったコミュニケーションスタイルをつらぬけばそれでよいとは思います。

ただ、ビジネスの世界に限定すると、高コンテクストなコミュニケーションには大きなリスクがつきまといます。相手がコンテクストを正しく読んでくれることを期待して仕事を投げた結果、意図とは違う結果が帰ってきて手戻りが生じるということは少なくありません。高コンテクストなコミュニケーションは、失敗した場合にお互いが嫌な思いをします。仕事を依頼した人は「そのぐらい、いちいち言われないでもわかれよな」という気持ちになり、依頼された人も「やって欲しいことがあるなら、ちゃんと指示をしろよ」という気持ちになります。コミュニケーションをケチった結果、仕事の量が増え、チームの雰囲気も悪化するというのは悲劇です。

仕事は「振る側」にも大きな責任がある

日本の場合、「言われなくてもできる人」のような高コンテキストに対応可能な人が優秀だとみなされることで、「言われないとできない人」の評価が不当に下げられることがあります。しかし、よくよく考えてみるとこれはおかしい話です。この場合、一番責められるべきは仕事を振られた側ではなく雑な仕事を振った側の人間です。

相手が「言われなくてもできる人」だからといって、それに甘えて雑に仕事を投げ続けるのは本来許されるべきではありません。ましてや、相手が代わっても同じような曖昧な指示を続け、それで前任者と同じように自分の思い通りに動かないからと言って相手を怒るなんて論外です。仕事を振る側には、振られた側以上に重要な責任があることを忘れてはなりません。

コミュニケーションミスを防ぐために気をつけるべきこと

そうは言っても、「何から何まですべて細かく指定するなんて非現実的だ。そんな時間があるなら自分でやる」と思う人もいるかもしれません。別に、すべてを細かく指定しろと言いたいわけではないのです。大切なことは、ポイントを適切に伝達することです。具体的には、どんな仕事を指示する場合にも、以下のポイントだけは外さずに伝達するように心がけるべきです。

第一に、その仕事の目的は必ず伝えるべきです。「資料を作って欲しい」というのであれば、その資料が何に使われるものなのかをきちんと伝えなければいけません。目的が分かれば、どの程度資料を作りこめばいいのか、どのような情報を盛り込めばいいのかなどがある程度演繹的に判断できます。

第二に、成果物のイメージも伝える必要があります。これを実現する一番簡単な方法は、過去の成果物を参考資料として渡すことです。差分があるなら、差分について過去の成果物に照らして説明します。過去の成果物がない場合は、ある程度時間を使ってイメージのすり合わせをするべきです。

第三に、必要な情報の参照方法も伝達しなければいけません。仕事を進める上で何を見ればいいか、誰に聞けばわかりそうかなど、自分が知っているは情報は依頼をした時に一緒に伝えましょう。これを怠ると、相手が一からこれらの情報をさがすことになり、貴重な時間が大きく失われます。

最後に、締め切りも必ず伝えましょう。締め切りを伝えずに、自分の都合で突然「そろそろできた?」などと聞くのは反則です。理想を言えば、相手と相談して締め切りが決められるとさらによいでしょう。

以上の4点に気をつけて仕事を依頼するだけで、コミュニケーションミスによる事故はかなり減ります。雑に仕事を投げて「言われなくてもできる人」に頼るのではなく、「きっちりと言うべきことを言う人」を目指していただければと思います。

日野瑛太郎さんより

普段は「脱社畜ブログ」というブログで、日本人の働き方の記事を書いています。このブロガーズ・コラムでは、チームワークという観点から働き方について新たな視点を提供できればと思っています。

(サイボウズ式 2014年10月20日の掲載記事「「言われなくてもできる人」に頼るのは甘え」より転載しました)

イラスト:マツナガエイコ