サイボウズ式:仕事のピンチで急所を押さえられる人材、押さえられない人材は何が違うのか?

仕事が好きな人、仕事が嫌いな人、どうでもいい人。色々な人がいると思いますが、働いているかぎりは誰もが出くわすモノ。それは"ピンチ"ではないでしょうか。

【サイボウズ式編集部より】

この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は「My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only」のファーレンハイトさんが考える「仕事における"ピンチ"」についてです。

仕事が好きな人、仕事が嫌いな人、どうでもいい人。色々な人がいると思いますが、働いているかぎりは誰もが出くわすモノ。それは"ピンチ"ではないでしょうか。

ものすごく絶好調ですべてがチャンスに見える日々を送っているかと思えば、タイのスコールのように急に手のひらを返してくる存在がピンチというものでしょう。

少し言葉を変えて<仕事がヤバイ状態>と書きましょう。

  • なんだかわからないけど、仕事量が減らない。
  • 目の前の作業をこなしているだけで終電が来てしまう。
  • 頑張っていても客先から怒鳴られる。
  • すべてが後手にまわってしまう。
  • どうすればこの状況から抜けられるか分からない。

こういった"すべての歯車が狂ったシチュエーション"に陥ってしまったとき、メンバー全員で対処法だけに専念しているケースが多いように俺は感じます。"ヤバイ"状況に飲み込まれて、"考えることを止めてしまう"状態です。

理想論で言えば、そもそもピンチにならないようにする(=ピンチの予兆を見抜く)のがベストではありますが、いくら想定していてもピンチの状況は不可避に発生してしまうもの。優秀な人材を考えた際には、そんなときにどんなアクションを取れるかが<出来る人><出来ない人>を決めるのではないでしょうか。

個人的な体験を言うと、数年前までそういった状況のときに視野狭窄になりがちな自分を痛感していたのですが、「この人すげぇ!」と思わされる人は対処法に走ったり、決してボヤいたりはしていなかった印象があります。いまの状況に陥った原因を明確にして、そこを潰しにかかっていました。

遅延の原因が「合意を取れなくて、手戻りが発生する」ことであれば、資料の完成度を上げる方向ではなく、手戻りを防ぐための裏ネゴを直接取りに行って事前に握ってしまい、会議はただの儀式にしてしまったり。納期が間に合いそうにないのであれば、客先の要望を上手く削りにかかったり。

そういった先輩に「なんで状況が見えるんですか?」と飲みながら聞くと、「経験だよ」と返されてしまって、どうしようもないじゃん!と思ったりしていたのですが。たしかに一定以上の経験を積めばパターン認識が自分のなかで持てる側面はあるのでしょう。

ただ、暗黙知的なフレームワークが何かないのかな?と考えていたときに出会ったのがこの言葉でした。

ピンチの原因をさぐるフレームワーク

ヒトが仕事上で困る要因は"人・金・時間"の問題。ひとつだったら克服できるが、三つ揃うと一人では手に負えなくなる

本当に本当に当たり前のことなんですが、当時の自分にはかなり響きました。

たしかにほとんどのシチュエーションは人手が足りない、バジェットが足りない、納期まで物理的な時間がない。人手が足りないからひとりあたりの負荷が高くなってしまう。金が足りないからやれることに対して制限がかかってしまい、首が締まる。時間がないからとにかく終わらせないといけない、クオリティにこだわれない。たとえばお金だけでも潤沢にあれば人を雇ったり、お金である程度の時間を買うことだって出来るんですよね。

人それぞれ、<仕事のヤバイ状況>で想像するシチュエーションは違うと思いますが、上記のような直接的なかたちでなかったとしても、元をたどればこれらに行き着くのではないでしょうか。もしくはその複合要因。

部下の進捗が捗らないのは与えている納期が短すぎるのかもしれない。面倒を見ている人との信頼関係が出来ていないからモチベーションが上がっていないのかもしれない。これも時間と人の問題です。

さて、俺個人としては仕事のピンチにおける本当のピンチとは、冷静な判断力を保つことが難しくなってしまうこと自体だと思います。とにかく手を動かしていかないと目の前の作業が終わらないから。「根本的に何とかしなきゃ」と思いながら、目の前の「漠然としたヤバさ」に押し負けてしまう。思考が停止してしまう。

そんな状況のときに根本原因をさぐる拠り所がある/ないではまったく変わると思うのです。ケース・バイ・ケースで原因を探っていく労力はなるべくであれば費やさなくてもいいものだからです。

自分なりのフレームワークを持つ重要性について

今回は「仕事上で困る要因は"人・金・時間"の問題」という一例を挙げましたが、俺はビジネスにおけるフレームワークはすべてそれ自体に意味があるのではなく、<ラクをするためにある>と考えています

たとえばビジネススキルやフレームワーク、それを勉強すること自体を目的にしているワナビー層はすごく多いですが、それ自体には何の価値もないと思います。問題解決力で言われる「空・雨・傘」、経営の三要素で言われる「ヒト、モノ、カネ」を想像していただければ分かりやすくなるでしょう。これらを聞きかじった人は多いと思いますが、オフィスで使ったことがある人はどれだけいるでしょうか?

たとえば資料作り。

自分は大学時代に英語ディベートを経験していて、平均以上には論理的な思考が染み付いています。でも「主張・理由・根拠」の三角ロジックを知っていること自体に価値なんてまったくありません。資料を作るときにいちばん重要なストーリーとアジェンダを構成するための思考のガイドラインを持っていることに意味があるんです。

表出する問題、ピンチの状況に話を戻すと、特定してしまえば何でもないようなことでも、たいていの状況は急所を突き詰めるまでが非常に難しい。そんなときに自分の頭でゼロベースから考えなくて済むようにするのがフレームワークの力だと思います。

例えば、コンビニのマニュアル。レジに人が並んだらレジの人を増やさないといけない、そこまで共有するのは簡単です。それが2人なのか3人なのかはたまた5人なのかの最適解はそのときによって違います。しかしそれを「2人が並んだらレジにヘルプに入れ」と思考のオート化をさせることによって、考える時間を大幅に減らし(経験値が低い人材でも)すぐに行動にうつすことができる、これがフレームワークの力なのです。

そして、それをチームで共有できたときには最高です。自分が気づきにくい状況でも誰かが発見してくれる。たやすくチームで問題意識を持て、解決のために一丸になって動けます。愚痴や不満を共有することで仲間意識を高めるのとは質の違う、レベルの高いチームワークが成立します。俺自身はいまそういう環境で働けていて、ハードなときはあれど、すごくやりやすいなぁと日々感じます。

ちなみに、引用した言葉は『プライベートでは"異性・金・健康"』と続きます。

どれかで困ってる、もしくは一気に押し寄せてきて破綻してしまう人。いっぱいいますよね...。俺もこの3つ(特に異性!)には気をつけて生きていこうと思っております。

次回は社内恋愛におけるリスクヘッジについて書こうと思いました...が、編集部に怒らせそうなので止めておきます。以上、よろしくお願い致します。

ファーレンハイトさんより

普段はブログ「My Favorite, Addict and Rhetoric Lovers Only」、Web媒体「AM [アム] 」で恋愛・人間関係について書いています。サイボウズ式のブロガーズ・コラムでは、仕事・チームワークにおける他人との関係性について何らかの価値を提供できたらと思っています。

(サイボウズ式 2014年6月16日の掲載記事「仕事のピンチで急所を押さえられる人材、押さえられない人材は何が違うのか?」より転載しました)

イラスト:マツナガエイコ

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