サイボウズ式:父親もPTAで活躍を──会長・副会長ではないノンキャリアも増えていく!?

地方のほうがPTAに参加する父親が多い、危機的状況でPTAの役割がはっきりする、「親父の会」からPTA入りする等、PTAを取り巻く今がわかります。

「メンズPTA」──2015年1月31日(土)、サイボウズ本社にて"父親のPTA活動"を考えるイベントが行われました(主催:NPO法人ファザーリング・ジャパン ※以下略してFJ)。

登壇したのは、FJメンバーである4人の父親に加え、大田区立嶺町小学校PTO団長・山本浩資さんと、区立小学校でPTA副会長をしている友口乃莉子さん(仮名)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』著者・大塚玲子(記事執筆者)。イクボスとして注目を集める川島高之さんの司会進行にて、フリートークを行いました。

父親はどんな形でPTAに参加すればよいのか? 母親たちとうまくやるコツは? 学校との関係はどうあるべき? 等々、さまざまな論点が浮かび上がりました。以下、ダイジェスト版にてお届けします。

現場を知る「ノンキャリ」になろう

川島:はじめに大塚さんから、「父親のPTA参加」に対するお母さんたちの見方を紹介してもらえますか?

大塚:最近ある雑誌の企画で、母親を対象にアンケートを行いました。そのなかで「父親のPTA参加をどう思うか」を聞いたところ、一番多かったのは「賛成だけど、実際は無理」という答えでした。「父親がPTA活動のために仕事を休むのは、現実的にはありえない」というのです。

でも実際、お母さんたちは仕事を休んでPTA活動をやっていますから、お父さんだってできますよね。それなのにこういう答えが多いのは、「お母さん側の思い込み」も意外とあるのではないかと思いました。「お父さんは働いてお金を稼ぐ役割だから、PTAはできない」と思い込んでいるのかな?と。父親自身がどう思っているかは、父親対象にアンケートをとってみないとわかりませんが。

あとは「お父さんも"ふつうに"PTA活動に参加できるようになってほしい」という声もありました。現状は会長だけがお父さんで、一般の活動には父親がいないPTAが多いので。

村上:男性は「副会長から本部に入って、会長をやりました」という人が多いですよね。僕はこれを「キャリア組」と呼んでいます(会場笑)。キャリア組は、お母さんたちがやるような"ふつうの委員"を経験していないので、現場をわかっていません。これからは「ノンキャリ」の男性が増えていかないと。だから僕は今年度、敢えて、ヒラの学年委員と運営委員をやっています。

村上誠さん/NPO法人ファザーリング・ジャパン理事 8歳と2歳の息子の父。実母の介護を機に兼業主夫になった。毎日「愛夫弁当」を作る愛妻家。PTAでは学年委員と運営委員をやっている。

大塚: 賛成です(笑)。もちろん「キャリア組」のパパたちにも感謝しますし、歓迎ですが、現状のバランスはあまりにも偏り過ぎなので、「ノンキャリ」のパパも、もっともっと増えてほしいです。

地方のほうがPTAに参加する父親は多い

大塚:「平日の日中に活動しているから、父親は参加できない」という声も多かったです。夜や休日に活動できれば、お勤めのお父さん・お母さんも参加しやすくなるんですけれどね。でも活動場所を提供する学校が「ノー」といえば、それは実現しにくいです。

大塚玲子/『PTAをけっこうラクにたのしくする本』著者 小5の息子を持つ母。PTAでは学年長と運営委員。冒頭で紹介したアンケートの詳細は月刊誌『LEE』4月号(3/7発売)に掲載予定。

福井:都市と地方では、だいぶ事情が違いますよ。ぼくは妻の親の介護のため、東京から鳥取県に移住してPTAをやってきましたが、鳥取では平日日中の活動はないです。ぼくが知る限りすべて夕方か土日。地方のほうが共稼ぎが多いから、平日日中に活動をやっても誰も来られないんです。男性のPTA役員参加率も、地方のほうが高いですね。

川島:活動場所はどうしていましたか?

福井:学校でやるときもあるし、カラオケボックスの大きい部屋を借りることもありました。先生は、担当の教頭だけが参加する形です。そこは、こっち(保護者)が主体でやらせてもらいます。

福井正樹さん/NPO法人KIRALI代表 17年前、東京から鳥取に移住。以前は東京の出版社に勤務していた。PTA会長や自治会長、県P連の会長などを歴任。妻はベテラン教員。

都市部も徐々に活動時間が夜や土日にシフト

友口:うちのPTA(東京都)の役員会も、数年前から夜や土日にシフトしました。活動時間の話に限りませんが、学校は何でも前例がないとやりたがらないので、誰かが突破口を開く必要がありますね。近隣のPTAで情報交換をして、「あの学校のPTAではこうやっているみたいです。うちでもできませんか?」というふうにもっていくと、意外といけるかも?

橋:わたしもPTAの校外委員長をやったときに、平日開催の運営委員会の場で、市内(東京都)の他の学校の状況も踏まえて土曜開催のプレゼンをしたのですが......、シーンって感じでした。(会場笑)

橋謙太さん/稲城市立城山小学校「熱血組!(おやじの会)」代表 発達障害の子ども、家族を支援する「FJメインマン・プロジェクト」の発起人&代表。保育園や学童の保護者会長を歴任してきた。周囲には自営業のお父さんと思われているが、じつはサラリーマン。

友口:そこは、根回ししてからいかないと!

友口乃莉子さん(仮名)/東京都区立小学校副会長 専門職でバリバリ働く、子ども3人の母。15年にわたってPTAにかかわってきた。公立小学校、都立中学校、私立高校など、各種PTAを経験している。

山本:うちのPTOは、会議の日程は決まっていません。最初のころは平日中心だったんですが、やっぱりみんな集まれないので、いまは学校公開や運動会がある土曜などにやっています。

八坂:うちも毎月土曜に学校公開があるので、役員会議はそこでやりますね。議題がない月は会議をなくしますし、いつも「短く終わらせよう」と言っています。

八坂貴宏さん/office.yasaka代表 NPO法人コヂカラ・ニッポン副代表 本業は研修講師。「家から駅までの往復の間に、必ず地域の友達と挨拶して、笑顔で会話をしている」というビジョンを実現するため、地元の少年野球のコーチや、「父親の会」での活動を始めた。現在はPTA副会長3年目。

働くママ、パパ、専業主婦が互いに認め合う

川島:働いているママやパパは夜や土日が集まりやすいですけれど、専業主婦のお母さんたちは逆に平日日中がいいということもありますよね。そこの折り合いは、どうつければいいと思いますか?

山本:うちは、「ベルママ」(ベルマークをやるママさんのボランティア)や読み聞かせボランティアを、平日の午前中にやっています。おしゃべりをしながら情報交換をしたいお母さんたちには、夜や土日の会議とは別に、そういうサークル的な場があるといいのでは?

山本浩資さん/大田区立嶺町小学校PTO団長 毎日新聞社会部記者。これまでの活動の詳細は「PTAで「もしドラ」を実践──全てをボランティア制にし父親も参加しやすい活動へ」「『PTAは変えられます、というか、変わりましたね』──楽しむ学校応援団「PTO」の始め方!」をご参照ください。会場では「一人ラッスンゴレライPTOバージョン」を披露してくださいました。

八坂:うちの役員さんは、仕事をわけようとしていますね。働いている人には土曜にできることや家でできる仕事をふって、専業主婦のママたちは平日に集まってやっていて、それはそれでうまくいっています。お互いが理解しあってやれたらいいんじゃないかと思います。

危機的状況で子どもたちが学ぶ環境を守る

福井:ぼくは子どもが中学生になったとき副会長をやりましたが、当時すごく荒れていて、一晩に窓ガラスが300枚割られるような状況でした(会場笑)。そうなるともう、「いかにして子どもたちが学ぶ環境を守るか」というところでまとまります。パパもワーママも専業主婦も、じーちゃんもばーちゃんも、一切関係なくなるんです。

川島:危機的な状況があるとPTAに求められる役割がはっきりしますね。友口さんはお子さんのクラスが学級崩壊したのがきっかけでPTA役員になったそうですが、学級崩壊のとき、保護者は結集しました?

川島高之さん/NPO法人コヂカラ・ニッポン代表 FJ理事 元祖イクボス。大手商社系の上場会社の社長。これまでの活動については「MBAよりPTA!本物の仕事力を鍛えるのにPTA活動が適している理由」、「PTAを専業主婦まかせにする時代ではない!?──できるビジネスパーソンが語る『PTA活動 10のメリット』」をご覧ください。

友口:そうですね、やはり「このままではいけない」というところで、まとまりました。 役員になった後、学校側から「何か問題が起きたとき、保護者の間で話に尾ひれがついて過剰反応になりがちなので、役員にはありのままの状況を話すから、学校の対応をサポートしてほしい」と頼まれたこともあります。そういうのもPTAのひとつの機能かなと思います。

福井:役割分担があいまいだから、学校と家庭は責任の押し付け合いになりやすいんですよね。「親の役割はこれです」ということは、PTAから保護者に言うべきです。学校から言うと、角が立つから。

川島:子どもの教育というものは、学校と家庭と地域の三位一体でやるものですが、学校VS保護者とか、地域VS学校という対立関係になりやすいですね。そういったときに双方の間に入って潤滑油になるという役割もPTAにはあるでしょう。

「親父の会」を経由してPTAへ

川島:お父さんたちにPTAに入ってもらうために、どんなふうに声をかけていますか?

山本:動画の編集が得意なお父さんが、運動会などイベントの写真をフォトムービーにしてくれるので、それを学校公開のときなどに流して人を集め、「今度いっしょに何かやりませんか?」と声をかけています。

川島:いまは俺らの時代とは違うんだね、一杯飲んで「まぁ、一緒にやろうや」じゃないんだ!(会場笑)

友口:うちは一昨年から、入学式のとき男親会(親父の会)の説明をやるようになったら、毎年数名は父親が入ってくれるようになりました。いきなりPTAに入るのではなく、男親会でPTA行事を一緒にやっているなかでスカウトされて、役員になる人が多いです。

八坂:うちもなかなか男性がPTAに入らないので、受け皿として「父親の会」がつくられました。PTA会長はそこから出てきます。父親の会は、ふだんからPTAと一緒にいろんな活動をしているので、役員のお母さんたちと顔見知りになるんですね。だから、抵抗なくPTAに入りやすいんです。

橋:親父の会は、サークルのようなノリだから入りやすいですよね。私も入っている読み聞かせボランティアの会は、基本的に平日日中のお母さんたちの集まりなんですが、やっぱりサークルのノリです。PTAも、親父の会や読み聞かせボランティアのように、義務でなく楽しんでやる雰囲気になるといいなぁと思うんです。

後編に続く

文:大塚玲子 撮影:内田明人 編集:渡辺清美

(サイボウズ式2015年3月10日掲載記事「父親もPTAで活躍を──会長・副会長ではないノンキャリアも増えていく!?」より転載しました。)

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