サイボウズ式:悩めるパパから楽しむシュフへ──「主夫」を名乗りいきついた境地とは?

妻を支え、家事や育児を"メインで"担う夫=「主夫」。実際のところどんな生活を送っているのか? 本音はどうなのか?

「妻が厨房に立つことは何パーセント?」の回答は、0%が1人、5%が3人、10〜15%が1人、30%が1人という結果に。

妻を支え、家事や育児を"メインで"担う夫=「主夫」。実際のところどんな生活を送っているのか? 本音はどうなのか?

前回に引き続き、7人の主夫が結成した「秘密結社・主夫の友」入社説明会よりトークライブの内容を抜粋でお届けします!

妻が厨房に立つ率は0〜30%

堀込:みなさんのおうちで、妻が厨房に立つことは何パーセントくらいありますか?

杉山:うちは嫁さんがつくる30%のうち20%は「自分(妻)の食べるぶんだけ」。(一同笑)

佐久間:そう! そう!(笑)

中村:えっ、それぜんぜん共感できない!(会場笑)

村上:奥さんが料理つくるときは、材料も買ってくる?

杉山:買ってくるね。

中村:「買ってこられる」のと「使われる」のだったら、買ってこられるほうが僕はイヤです。「あ~、もう! 牛乳はあるって!」みたいになる。(一同笑)

片元:あー、わかるわかる。僕も買ってこられるのは絶対イヤです。気付いたら「卵20個」とか、あるね。

中村:卵は消費しやすいじゃないですか。うちはミョウガをダブルで買ったことがある。(一同爆笑)

"弁当のフィニッシュ"で花を持たせる

杉山:たぶんここにいるみんなは、夫婦が揃ったときはダンナが料理を作ってるんですよね。

中村:自分が出かけて家が妻だけになるときも、作ってから出かけません? 「あとはあっためるだけ」の状態にして。

家族の食事を作ってから出かけるという兼業主夫/ミュージシャンの中村哲也さん。

杉山:でも向こうはそれを「(自分が)作った」って言うんだよ。

弁当だって、こっちが中身を全部用意して並べておいて、嫁さんはそれを詰めただけなのに、「弁当はアタシが作ってるからさぁ~」とか言う。「それは違うだろう!」と。(一同爆笑)

堀込:そういうのあるよ! 花を持たせるために(笑)。でもそれはイクメンに対する奥さんの悩みといっしょだな。

白河:「ちょっとやったぐらいで、やったって言わないでよ」っていうね(笑)。

"シュフ"業はじつはブラック!

堀込:みなさん、主夫業に休みはありますか?

吉田:僕は"営業時間"が決まってます(一同笑)。朝の6時から夜の8時までだから、8時になったら何が起きようとシャットアウトします。

堀込:いいなー。でも、14時間労働だから、定時でも6時間残業か。

白河:世の主婦は「24時間営業」とよく言いますよ。

堀込:シュフって超ブラック企業ですね(笑)。吉田さんはさらに「休暇」もあるんでしたっけ?

主夫業は「朝6時から夜8時まで」と営業時間を決めている、中高非常勤講師/兼業主夫の吉田尚史さん。

吉田:1年に一度、長期休暇があります。今年は10日くらいで、ひとりで海外旅行に行きました。

佐久間:いいよね~......!

堀込:いいなぁ......。僕は夏休みの時期、子ども2人連れて1ヶ月旅行するんですけど、結局そっちでも主夫をやってるから、休みはないですよ。

いくらやっても、実母には遠く及ばない

白河:みんなホントに「いい奥さん」していて驚きますけど、やっぱりご自身のお母さんの影響があるのかな? 「家事はここまでやらねば」みたいな。

杉山:それは、あると思いますよ。

左より「秘密結社・主夫の友」CEO(ちょっとエグゼクティブなお父さん、の意)の堀込泰三さん。同社顧問で少子化ジャーナリストの白河桃子さん。

白河:それをそのまま踏襲しちゃうと、大変かも。日本の主婦って世界でいちばん忙しいんですよ。子育てや家事の過程が、国際比較すると、いちばんめんどくさいんです。

中村:じゃ、もうちょっとやんなくても大丈夫ですか!?(一同笑)

白河:そうね、もし自分のお母さんのやり方を見習ってるとしたら、それはものすごい大変なことだから。

杉山:でも、追いつけてはいないんです。やっぱり母親がやってたものが理想像というか、最強のところにあって、そこには遠く及ばない。「自分が手を抜いている感」とか、足りない感じは、常にあります。

堀込:罪悪感があるの?

杉山:チョーありますよ。

堀込:へーー!(意外そうに) みんなは?

佐久間:「やれてない感」はありますね。

中村:でもそれは自分ルールなんだから、気にしなくてもいいんじゃない?

杉山:いや、自分ルールに負けた自分が悔しい。マネジメントができてない、みたいな。(一同笑)

白河:やっぱりマジメだねえ(笑)。会場から質問はありますか?

ふっきろう!と決めて金髪に染めた

大塚:(会場から)「主夫としてのふっきり度」は、みなさん何パーセントくらいですか? 最初は「男がシュフになっていいのだろうか」みたいな迷いもあったと思うんですが。いま「ふっきり度50%超え」の方は?(全員、躊躇なく手を挙げる)

中村:ここに座っている時点で、かなりふっきれてますよ。(一同笑)

大塚:おお! みなさん、すぐふっきれましたか? 50%を超えるのに、どれくらい時間がかかりましたか?

中村:僕は0日。最初から100%ですよ。

金髪ヘアは「ふっきり度」のあらわれであることを明かした、子育て専業主夫の佐久間修一さん。

佐久間:僕は最初の2~3年、朝起きて妻が出かけたあと、自分もスーツ着てネクタイ締めて、家で家事をやるっていうワケのわからないことをやってました。(一同笑)

病気をして働けなくなったんですけど、どっかで「働けるんだろうなー」と思ってたんですね。

それがあるとき妻から、「このままのほうが家のなかのことが(うまく)まわる」って言われて、「妻のサポートに徹しよう」って決めたんです。

そのとき、金髪にしたんですよ。「ふっきって、全部変えちゃおう!」って思った。ついでに、伸ばしてたのも切った。だからこの金髪ヘアは、「ふっきり度」のあらわれなんです(笑)。

堀込:気持ちを切り替えるために髪を変えたんですね。ちょっと乙女で、いい話だな~。

ふだん子どもを見てるのはこっちじゃい!

質問者:(会場から)"主夫のあるあるネタ"って、なにかありますか?

杉山:3歳児健診で100組くらいの母子のなか、お父さんがひとりくらいしかいないと、女医さんとかにすげー気を遣われる(笑)。「ふだんの様子とか、知らないと思うんですけどぉ」、みたいなことを言われるんだよ。(一同笑)

堀込:「知ってるよ」っていうね!(笑)。

杉山:何か聞かれたことに、ちゃんと答えられなかったりすると、「あ、じゃあ今度お母さんに聞いてもらえますか」とか言われるし。「いやいや、ふだんの様子は妻じゃなくてこっちが見てんじゃい!」と言いたい。(一同笑)

子どもの頭をなでつつファシリテーションする兼業主夫/翻訳フリーライターの堀込泰三さん。『子育て主夫青春物語 「東大卒」より家族が大事』(言視舎)著者。

堀込:うちは一回、妻が有給取って健診に付いてきてくれたんですよ。あくまでも妻は付き添いなのに、お医者さんは全部妻にしゃべりかける。「今日の朝、何食べましたか?」とかね。答えるのは全部こっち。

吉田:「お母さんは、今日何してますか?」っていうのも、必ず聞かれますね。

杉山:健診時のアンケートに「お母さんの体調の変化を教えてください」っていうのがあって、そこだけはわかんないんだけど。

堀込:僕「お父さんのことは聞いてくれないんですか?」って書いて出したことありますよ。(一同笑)

いかにオリジナルさを認められるか?

質問者:(会場から)専業主夫になって1年経つんですけど、なかなか「ふっきる」ことができません。何をしても「自分が稼いだ金じゃないのに」みたいな考えが浮かんでしまって。どうしたらみなさんのように自尊心を保ちつつ、"楽しそう"になれますか?(一同笑)

杉山:その自尊心、プライドっていうのは、もともとあった"旧態依然の価値観"みたいなものですよね。主夫を始めると絶対「それをどう壊すか」というところにぶつかると思うんです。

さっき「主夫になって何年でふっきれましたか」って質問がありましたけど、僕はそうじゃなくて、「主夫になったから、ふっきった」んです。「主夫」と自分で名乗った瞬間に、ふっきれた。 それまでは「ほとんどの家事をやってるのに、僕はただのパパ」だったのが、「主夫」って名乗ったら、「あ、これでいいんだ」って思えるようになったんです。 結局、「ほかと比べてのプライド」みたいなところはどうでもよくて、「いかに、オリジナルさを認めるか」みたいなことが重要なんだと思いますよ。

堀込:ここに3年生の子がいますね。パパが子育てメインでやってるのって、どう?

お子さん:なぁに~??(一同笑)

村上:そうそう、子どもはよくわかんないんですよ。仕事してるしてないとか、誰と比べて稼ぎがいい、何の仕事してるか、なんていうのは、持ちたい人が勝手に持っている「男のプライド」です。

子どもにしてみたら、親が何の仕事をしてるかってことより、「親が笑顔で家のなかでいるかどうか」ってことのほうが、だいじなわけで。

実親の介護のために主夫となった兼業主夫/グラフィックデザイナーの村上誠さん。PTA活動も夫婦で行う。

堀込:そうです!

村上:ちなみにうちの子は4歳くらいまで「親父の仕事はバルーンをふくらますこと」だと思っていました。(一同笑)

白河:これからいちばんの課題は、「奥さんがどの程度、家で笑顔でいられるか」っていうところでしょうね。家族みんなが笑顔でいられることがいちばんいいので。

堀込:(質問した男性に向かって)こっちに座れば、ふっきれますよ!(笑)

杉山:堀込さんのおっしゃるとおり。みんなね、笑えない話も、本当はいっぱいもってるんですよ。(一同笑)でもこっち側に座ってる人は、ある意味もう「いっちゃってる」から、「この状況をどう楽しむか」っていうほうに、すごく向かってるんです。

相手に対する"期待"より"自分との戦い"

渡辺:(会場から)みなさんが主夫になったことで、夫婦の仲はどういう方向に変わりましたか? よくなりました?

杉山:僕がいちばん変わったと思うのは、「責任の問題」だと思っています。

たとえばですよ、僕が仕事から家に帰ってきて家が汚いとしますね。主夫を名乗る前は、自分より2、3時間早く帰ってきてるのに妻がやってないことに腹が立つんです。

「早く帰ってるなら、やっといてくれよ」って思う。だけどこっちが主夫と名乗ったら、むしろ家が汚れてることを「ごめん」って思うんですよ。

だから、ケンカが劇的に減ったんですね。相手に対する期待よりも、自分に対するマネジメント力みたいなものとの戦いになってくるから、腹が立たない。

一同:あ~~。

村上:僕がよかったと思うのは、夫婦でたくさん共通の話題をもてることかな。

夫婦どっちかが仕事、どっちかが家庭、という分担になっちゃうと、お互いが共通で盛り上がれる話題がなくなっちゃう。お互いが両方できるようになっておくと、家のこと、子どものこと、社会のことなど、話題がいっぱいあるわけですよ。そうすれば、ぶつかりもするけど、コミュニケーションをはかろうという意思も出てくるし、前向きに変わっていける。

そういう意味で、男性も家事育児をいっぱいできる主夫になったほうが、夫婦関係はよくなるんじゃないかなと思います。

中村:あ~、僕は逆に、家のことを全部自分でやりたいんですよ。妻にはホント手を出してほしくない。キッチンに妻を入れないのがオレのプライド、みたいな(笑)。

吉田:僕はやってほしいですね。

片元:僕は中村さんといっしょ。"聖域"というか、「やられたら負け」みたいな気持ちがある(笑)。

‟キッチンは聖域派 "の片元彰さんは、専業主婦歴1年目。気持ちは兼業主婦。

杉山:キッチンに関しては、自分のやりやすいように配置しているものを勝手に移動されるのって、すごいイヤ。(一同、激しく同意)

中村:でもそれにムッとするんだったら、やっぱり自分でやらざるを得ないですよね。

悩める専業主婦、兼業主婦へのメッセージ!

安藤:(会場から)いま全国に、悩める専業主婦や、いっぱいいっぱいで働いてるママたちが大勢いるんだけど、そういう人たちに向けて「楽しむシュフ」からメッセージをお願いします。

中村:何か「リセット法」があるといいですよね。僕の場合は、夫婦ふたりで酒を飲めるようにしてます。飲んで、嫌なこともいいことも、全部忘れちゃう。

佐久間:いわゆる主婦の方たちって、自分の思いをパパに伝え切れてないんじゃないかな、という気がするんですね。パパのほうにも聞けるような余裕がなかったりして。

僕はこの18年間、夫婦で何かをしゃべるのをほぼ毎日ずーっと続けていて、ヘタすると明け方までしゃべっています。それで保たれているものは、あると思う。それができてなかったらどちらかに比重がかかって、つらい思いをしてたんじゃないかな。

まぁ、それを他人にいまからやれと言っても、難しいと思うんですけど......。

悩める主婦に"夫や子どもの観察"を提案する兼業主夫/放送作家の杉山錠士さん。座右の銘は、「毎日が文化祭」。コミックエッセイ『新ニッポンの父ちゃん ~兼業主夫ですが、なにか?』(主婦の友インフォス情報社 絵/アベナオミ)の原作者。

杉山:こうしたらどうですか、っていうアドバイスは、その人がそれをできてない、という否定に感じられるかもしれないので、なかなか難しいんですよね。 苦しい専業主婦の人がいたら、「じゃぁ、その様子をもっと観察してみたらどうですか」というのは言えるかな。ダンナさんや子どものことを観察していたら、面白いところも見つかってきますよ、という。

白河:「第三者的に俯瞰してみる」ってことですね。

いやー、今日はよい話がいっぱい出てきましたね。

堀込:そろそろ、時間を過ぎましたので終わりにしたいと思います。「秘密結社・主夫の友」に入社を希望される方は、受付で「入社します」と言って帰ってください(笑)。

文:大塚玲子 撮影:内田明人 編集:渡辺清美

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本記事は、2015年9月1日のサイボウズ式掲載記事「悩めるパパから楽しむシュフへ──「主夫」を名乗りいきついた境地とは?」より転載しました。

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