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サイボウズ式:「火力調整」ができない人は人間関係をダメにする

2015年05月01日 18時25分 JST | 更新 2015年06月30日 18時12分 JST

【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズの外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回ははせおやさいさんが、人間関係を良くする方法を、"火加減"の視点で考えてみます。

ストレス発散に料理をするのが好きです。作り置き+何かしら1品つくってお弁当にしているので、毎日ちょこちょこと料理をするのですが、何度やってもたまに失敗してしまうのが「火加減」。うっかり気を抜いたり手を抜くと塩梅を間違えてしまうのですが、これって人間関係にも似ているなあと感じました。


料理は火加減が命

料理をする人にとって周知の事実かとは思うのですが、「火加減」には何段階か違いがありますよね。たとえば「弱火」。コトコトゆっくりと煮込んだりするのに使います。そして「強火」は中華料理店のイメージで、ゴーッと勢いのある火で一気に炒めたりする野菜炒めによく使われます。その間が「中火」です。それぞれの違いは「火がどの程度、鍋やフライパンの底に触れるかの距離」。

なんとなく強火とかなんとなく弱火、みたいな感じでこれを間違えると、どんなに上等な材料を使っても、すぐに失敗してしまいます。

これを人間関係に置き換えてみると、優しくじっくり対応するのが「弱火」だとしたら、はっきりとした強い態度で接するのが「強火」

硬いお肉や野菜を柔らかくするためには根気よく弱火で付き合わなきゃいけませんし、おいしい肉汁や水分が流れ出さないよう周りを焼き固めるために強火で一気に熱を入れることもあるかもしれません。

また、昔からあるお米の炊き方でいうように、「はじめちょろちょろ中パッパ、赤子泣いてもフタ取るな(はじめは弱火であとから強火、噴きこぼれてもフタをあけてはいけない)」と、火加減を途中で変えなければいけないテクニックもあったりと、なかなか複雑。


人間関係にも火加減がある

料理と同じように人間関係が難しいのは、誰にでも同じ火加減で接しても、まったく通じない点です。

相手に対しての態度の強弱を火力に例えて考えてみると、じっくり柔らかくしよう、と思って「弱火」で接してみたとしても、相手が煮崩れてグズグズになってしまったり、ハッパをかけるために「強火」で接したのに、逆に相手が萎縮して硬くなってしまって、いいところが引き出せなかったり。「これなら成功すると思ったのに!」「他の人にはこれでうまくいったのに!」と感じていたことが、すべての人に当てはまらないのが難しいところ。

じゃあ、どうしたらいいんだろう?と悩みまして、周囲の「人間関係の火力調整がうまいひと」たちを観察してみました。

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「火加減のうまい人」たちの共通点

交渉や調整、部下の指導など、相手との押し引きがうまい人たちは往々にして相手をよく観察し、適切な火力で対応しているように感じました。オラオラ系で強気が持ち味の人でも、普段は温厚で穏やかな人でも、元々のキャラクターはありつつ、必要に応じて強弱を変えて相手に接しているのです。

ファーレンハイト氏のブロガーズ・コラム「職場でキレる技術」にもあったように、「ここは強火でいかないとダメだな」と思ったとき、すぐに火を強められるかどうか。

で、あるときに俺が失礼な物言いをされる番になった。けっこう溜まっていた俺はガツンとやってやろうと思ったわけ。上司でもないし。普段はニコニコ返すタイプの俺が、打って変わって低いトーンで

「ん? いまなんて言いました? もう一回言ってみて」

このように「いま、この瞬間」を察知して、相手に対して自分の火力を変えられるテクニックはとても有用です。また、このテクニックが有効に作用するとき、それは「普段との落差が大きい」ときでもあり、この落差が大きければ大きいほど、効果は高いと考えて良いと思います。

このテクニックが有効に作用するケースを分解してみると、以下3点それぞれのパラメータがあるのではないかと思います。

(1) 相手のキャラクター

(2) 自分の普段のキャラクター

(3) いま、この瞬間の状況とお互いの関係性

おそらく、引用したようなケースでも、(1):相手のキャラクターが強い態度で接することが効かない場合、このような態度をとるのは得策ではありませんし、(2):自分の普段のキャラクターが「怒りの沸点が低い」人だったりすると、「また◯◯さんがキレてるよ?」と茶化されただけで終わりかねません。

(3):相手から失礼な対応をされ、こちらが反発しても仕方がないと言える状況かどうか、また、それを表明してもいい関係性かどうかの判断を見誤ると、これまた火力調整が有効に働きにくい状況になるのではないでしょうか。


「人間関係の火力調整」を意識することの副効果

さて、ここまで分解してみると、あることに気づきました。

(1)、(2)、(3)、それぞれのパラメータが適正であるときにのみ火力調整するのが有効なのだとしたら、そのテクニックを身につけることで「相手をよく観察し、自分を客観視できている」という状態を作れるのだということ。

副次効果として、個人的には「自分を客観視できている」というのがかなり大きいと感じていて、「あ、いま自分は強火で接しているな」と意識すると、怒りや拒絶の感情をコントロールしやすくなるんですね。

怒りや拒絶の感情をコントロールできるようになると、なにか良いかというと、自分を不利な状況に追い込みにくくなるというのがまず挙げられます。カッとなってつい言いすぎてしまったり、やりすぎな態度を取ってしまうことが予防でき、自分と相手、そして今の状況を客観視することで、二手先三手先の展開を予測しやすくなるのです。

ということで、「人間関係の火力調整」を意識するということは、相手との交渉を有利に運んだり、自分を冷静に客観視して悪手をとらないよう予防できたり、なかなか有効な手段なのではないかなと思うようになりました。

また、自分の状況を有利に運ぶだけでなく、相手のキャラクターや状況を観察する癖をつけると、部下や後輩の育成にもとても役立つのではないでしょうか。

料理と同じで、どんなに良い素材でも火加減を誤れば失敗してしまうこともありますし、けっして最高級ではない素材でも、丁寧に調理することで、思わぬごちそうになるかもしれませんよ。

今日はそんな感じです。

チャオ!

はせおやさいさんよりインターネットの備忘録」というブログを書いています。ブロガーズ・コラムでは、仕事を通じて他人とかかわることの楽しさ、おもしろさ、難しさみたいなことを書いていきたいと思います。今のところ唯一の女性なので、そのへんの視点も盛り込めるといいかなと思ってます。

(サイボウズ式 2014年10月27日の掲載記事「「火力調整」ができない人は人間関係をダメにする」より転載しました)

イラスト:マツナガエイコ