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経営者の育児は社会を変える? ──LIG×サイボウズ子連れ経営者対談

2014年05月03日 22時49分 JST | 更新 2014年06月30日 18時12分 JST

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サイボウズの青野慶久社長(左)とLIGの岩上貴洋社長(右)、初の子連れ対談

「わくわくをつくり、みんなを笑顔にする」を企業理念に掲げ、話題性抜群のおもしろ企画を続々と世に送り出してきたWeb制作会社・LIG。その社長である岩上貴洋さんに昨年10月、第1子となる娘さんが生まれました。それを聞きつけたサイボウズ青野社長との「イクメン経営者対談」が実現。お互いの子育てにまつわる話から、子育て支援などの制度導入を考えるベンチャー企業の悩み、さらにはイノベーションを生み出すための企業文化のあり方にまでトークが広がっていきます。「育休を取りましょう!」と熱く迫る青野社長に、岩上社長は何と答えるのか? 要注目です!

子供が生まれて"会社人"から"社会人"になった

青野:いや~、お子さん、本当にかわいいですね! いきなりですが、岩上さんってイクメンですか?

岩上:う~ん、平日は帰宅するのが22時から24時くらいですからね。イクメンとは言い難いかもしれないです。ただ、お風呂は僕が入れていますよ。あと、土日はできるだけ一緒に過ごすようにしています。

青野:お子さんが生まれてから、ご自身に何か変化はありましたか?

岩上:そうですね。物事を考えるスパンが長くなった気はします。子供が生まれる前は、会社の未来を考えるにしても5年くらい先のことまで。それが、子供が生まれてからは80年くらい先まで考えるようになりました。できればこの子が死ぬまでハッピーであり続けたいなと(笑)。

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サイボウズ青野社長、長男とLIGオフィスを訪問

青野:出産には立ち会いましたか?

岩上:はい。

青野:僕も立ち会ったんですが、ああいう"生命のリレー"のような瞬間を目にすると、この世界は自分の世代だけで終わらないんだなと改めて感じますよね。

岩上:そうですね。この子が生まれて、いずれまたこの子も子供を生むだろう。となると、社会のことももっと真剣に考えなくてはならないと思うようになりました。選挙もちゃんと行こう、とか(笑)。

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子どもが生まれ「自分だけの時間ではない」と時間の使い方を見直したという岩上社長

青野:そういう意味では僕も、子供が生まれて初めて"社会人"になったかもしれません。それまでは"会社人"でしたから。子供を育てるうちに会社とは全く関係のない人とのつながりができ、こんな世界もあるんだなと感じたり。考え方以外に、実際の生活にも変化はありましたか?

岩上:ありましたね。特に変わったのは時間の使い方です。今でも夜中まで仕事をしちゃうこともあるんですが、やはり子供の顔が見たいので、効率的に仕事を進め、なるべく早く帰れるようにしたり。仕事だけではなく、家族も含めたタイムマネジメントやタスク管理を意識するようになりました。

青野:僕も子供が1人の時はまだ遅くまで働いていたんです。大人2人に子供1人だとまだ、妻に任せて逃げられるんですよ(笑)。でも2人になった瞬間に1人ではどうにもならず、自分も仕事をうまく切り上げないと子供を育てられなくなる。

岩上:僕はもともと社長が忙しい会社というのは体質的に良くないと感じていて。その思いは最近ますます強くなっています。

青野:どうしても自分が仕事を持ち過ぎちゃうんですよね。経営者の仕事は意志決定。それって瞬時にできるはずなんです。でもなぜか忙しい。

岩上:でも青野さんは、持ち過ぎていた仕事を徐々に手放してきたんですよね?

青野:そうですね。「ゴメン、お願い」と言ってもそれでメンバーが嫌がるかというと、実は全然そんなことないんですよ。こんな面白そうな仕事をようやく手放してくれましたか、みたいな(笑)。

岩上:僕もそうやっていかなくてはいけないですよね。

子育てができないことを離職の理由にしないためには

青野:LIGさんは今、50人ぐらいの規模ですよね。平均年齢はいくつくらいですか?

岩上:27、8歳です。なので、ちょうど子供をつくろうかと考えている社員も多いんです。子育てができないからという理由で、優秀な人材が辞めてしまうのは避けたい。だから子育てしながらでも働ける会社を目指したいと思っています。特にIT系の場合、競争力の源泉は人。イケてる人がいるかいないかで会社の成長率が決まってしまうところがありますから。

青野:確かにそうですよね。

岩上:そもそもLIGという社名は、"Life is Good"の略なんです。会社としても、仕事一辺倒になるのではなく、家族の存在も踏まえて楽しく人生を送れるようにしたいと思っています。それもあってウチは、土日は完全に休みにしているんです。制作会社は週末なんて関係ないというところも多いんですが。

青野:女性社員の割合はどのくらいなんですか?

岩上:4割ぐらいです。

青野:サイボウズと同じくらいですね。これから出産する女性も次々出てくるでしょう。育児休暇をとっている人はいるんですか?

岩上:まだいないです。既婚者の数自体、社員50人のうち10名ほどで、子持ちとなると4、5人だけ。しかも子供たちもみな4歳以下です。だから子育てのために会社を休みたいといった声も、今のところ多くないんですよね。これからそういう制度も整備していかなくてはと思っていますが。

青野:サイボウズには常時、産休育休を取っている社員が5、6名います。育休は最長で6年まで取れるんですよ。

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岩上:え~っ、6年ですか! それはすごいですね!

青野:復帰する時にサイボウズがあるのかという話ですけどね(笑)。

岩上:いやいやそんな(笑)。今後、育休などの制度の導入を考える上で、僕自身に子供が生まれて当事者になったのはすごくよかったと考えています。じゃないとやはり子育てをしている社員の本当の気持ちはわからないでしょうから。

社長発信の案は社員に拒否られる!?

青野:これからLIGさんでも子育て支援などの制度を作っていくならば、ぜひとも社員の声を聞きながら作ってほしいと思います。僕は以前、大企業に勤めていて。制度は一応存在しているのに、何のためにある制度かわからなくなり、形骸化してしまうのを見てきましたから。

岩上:今日はその点でぜひお訊きしたいことがあって。サイボウズさんには様々な制度がありますが、それはどのようなプロセスで決めていくんですか? 青野さん発信で決めるんですか?

青野:僕発信で作ろうとした制度は、むしろ拒否られているんです。例えば会社に保育園をつくろうとか。いいアイデアだと思ったんですが、「どうやって自宅から満員電車に乗せて子供を会社まで連れて来られるんですか?」と言われ「ごめんなさい。取り下げます」って(笑)。

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岩上:ははは。確かにそうですよね。

青野:制度を作るためのプロセスも一応決めています。まず、サイボウズでは全社員に、足りない制度があったら言ってくださいと伝えています。人事制度を愚痴るだけでは反則ですよと。

すると、いろいろな意見が上がってきます。「在宅で働きたい」とか、「場所も時間も意識しないでフレキシブルに働きたい」とか。それを人事のほうで拾って、ワークショップを開きます。そこで議論した上で制度化するんです。こうしたプロセスを踏むと、社内に制度の目的が何であるか浸透した状態からスタートできます。

岩上:なるほど。参考になります。

危機脱出のためにも社員が意見を出し合う

岩上:LIGでも働き方や子育て支援に関するいろいろな制度を導入したいんですが、その前に、そうした制度を導入しても利益を生み続けられる仕組みを作らないといけないと思っているんです。正直、まだそこまでの余裕がないというか。

青野:サイボウズにしても、ずっと赤字の状態が続いていたら今と同じような制度を導入できていたかどうか疑問です。

ただし、ウチもずっと余裕があったわけではなくて。2012年までは4年間、売上は横ばいで社員だけが増え、人件費比率がものすごく高くなっていました。

みんなサイボウズで満足して働いてくれているかもしれないけれども、このままだと人を採用できなくなるし、給料も上げられなくなるかもしれない、という状況だったんです。

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岩上:そんな時どうしたんですか?

青野:そこでも制度を導入する時と同様、売上高を上げるためには何ができるかを考えるワークショップを開いたんです。そうすると単に危機感が伝わるだけでなく、危機を自分のこととして社員が主体的に考えるようになる。

岩上:ウチもそういう企業文化をつくりたいんですよ。特定の人だけでなく1人ひとりがLIGを"自分の会社"だと認識して、会社の環境をどうよくするか考えて動ける人材を育てたいです。

青野:働き方に関する制度は早く導入したほうがいいですよ。特に採用に圧倒的に有利ですから。サイボウズも本来、BtoBの目立たない会社ですが、新卒採用でもびっくりするような人がきますもん。

イケてる企画量産の秘密はキッチンにあり!?

青野:LIGさんはオフィスもかなり独特ですね。キッチンがあったり、マンガがずらっと並んでいたりして(笑)。どういう狙いがあるんですか?

岩上:Web制作の現場って、どんどん専門的になってきていて、1人で完結できる仕事ってないんですよ。必ずチームで動かなくてはならない。その場合、コミュニケーションがとても重要で、それがきちんとできているかいないかでプロダクトの質が大きく変わってくるんです。ならばどうすればコミュニケーションが自発的に発生する場になるかと考え、その一環としてキッチンを設けました。

マンガが並んでいるのもコミュニケーションを活性化するためです。マンガはほとんど社員が持ち込んだものなんですが、自分が好きなマンガをほかの人も好き、となると、そこでコミュニケーションが発生しますよね。

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LIGのオフィスでは、キッチン、休憩スペース、打合せスペース、ワークスペースが壁で区切られずにつながっている

青野:なるほど。

岩上:基本的にオンオフを明確に分けたくないんですよ。クリエイティブな仕事をする場合、マンガを読んだり、お風呂に入ったりしている時にいいアイデアが思いつくことって多いじゃないですか? 

イケてる企画も、みんなでワイワイ話をしている時に浮かんだりする。それをできるだけ誘発したいんです。青野さんは、イノベーションが生まれやすい環境についてどうお考えですか?

青野:ビジョンが社員みんなの心に浸透しているかも大事ですよね。前向きで高いビジョンに共感している組織だと、イノベーションを起こそうとみんなが自分で考え始めるようになります。さらにダイバーシティもあれば様々な視点が入っていいですね。

岩上:やはり最初はビジョンありきなんでしょうね。

青野:サイボウズが設けている制度も、全ては"グループウエア世界一"になるためのものです。それにつながらないのであれば即座に廃止すると常々言っています。そう言っておくと制度を悪用して既得権益に乗っかろうなんて考える人は出てこないんですよ。

岩上:LIGも「わくわくをつくり、みんなを笑顔にする」という企業理念を掲げています。10人の時は"Life is Good"、20人の時は「わくわくをつくる」、そして40人になったところで今のスローガンにしました。人数が増えると、広い意味に取れる言葉だと正確に伝わらなくなっていくんですよね。

青野:確かにそうですね。

岩上:企業理念は、会社の成長に合わせて変えていいものなんですかね?

青野:変えていいと思うんです。変えられないと制約になりますから。「企業理念は石碑に刻むな」という人もいます。

岩上:わかりやすいビジョンを掲げることで、人が集まり、組織ができて、制度ができる。その循環をうまく作らなくてはなりませんね。

奥さんが完全フリーになれる日を作ろう!

青野:僕は"経営者育児連盟"というのをつくりたいと思っているんです。僕が4年前に育休をとって、その後ほかの経営者もどんどん続くものだと思っていたら、パッタリ止まってしまっている。

自治体の首長はかなり取り始めているし、イクメンという言葉もこれだけ定着してきているのに、経営者は何をやっているんだ? と思っていて。

ぜひとも若い経営者に続いてもらい、バトンを引き継いでいきたい。岩上さん、育休取りませんか?

岩上:ここで即、「はい!」と答えられず、考えてしまうところがまだまだだと思うんですが(笑)。青野さんはどんな形で育休を取ったんですか?

青野:僕は毎週水曜日、半年間休みを取り続けたんです。?