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サイボウズ式:子どもにこそ上位機種のMacを与える、親はお古で良い──実践子どもIT教育

2015年09月13日 01時36分 JST | 更新 2016年09月02日 18時12分 JST

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子どもへのIT教育が関心を集める中、Webアナリストの清水誠さんの教育法は特殊といえるかもしれない。日本最大級のセキュリティコンテスト「SECCON」などに出場し、「天才ホワイトハッカー」として次代を切り開く清水さんの息子さん。「もっと外で遊べ、人との直接対話が大事」といった干渉をまったくしなかった清水さんに、子ども教育の秘訣を聞いたところ「勝手に好きなことをやればいい、突き進んでほしい」という答え。実際はどうなのか?

(前編「「外で遊ぼう」「人との対話が大事」なんて子どもにとって余計なお世話」の続きです)

結局、人間って自分がやりたいことしかできない

河崎:中学受験が終わった途端、ものすごく加速した1年間だったんですね。

清水:中一の時はすごかったですよ。GitHubでもアクティブです。受験があって1回ストップしていましたけれど、あれがなかったらもっと早かった。

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清水:まあ、将来がどうなるかわかりませんから、受験も大事。両立させるために、自分でパソコンは制限していましたね。マインクラフト辞めると言って、小6のころに、一切やらなくなりました。

河崎:世の中のゲーム好きな少年たちっていうのは、親に受験だからダメって言われて押入れの奥にDSなどを封印されて、すごく鬱屈した3年間を過ごし、みたいなところがあると思うんですけど、清水さんの息子さんは自分で制限した。驚きです。その自立のポイントは何ですか?

清水:自由だからじゃないですかね。人間ってひとから言われると渋々やるけれど、言われないと自由だからかえって不安になるし、自分でコントロールしないとって思うようになる。実際、息子はどうするか自分で決めて、自分でバランス取りながら、勉強と両立させて、という風に、自分でコントロールし始めました。たまーにハマり過ぎた時などは「ちょっとやめたら」と声をかけて、若干の軌道修正をしましたけどね。 

結局、人間って自分がやりたいことしかできないと思うんです。自分もそうだったんですけど、好きなことは突き詰めて、それが一番強い。他人がいくら教え込んでも、無理矢理だと続かないし、効率も悪い。だからいかに自分で突っ走らせるのかを考えて、背中を押し続けてきました。

子どもにこそ、上位機種のMacbookを買い与えた

河崎:「なんちゃら子育て」的な文脈だと、ついつい「どう導きますか」「どう動機付けしますか」という話になりがちなんですが、そうじゃないと。害も何もないんだと。ただ障壁を取り除いて、自分でバランスを取れる境地まで突っ走らせるんだと。

清水:それでいいと思うんですよ。受験を無事に終えて中学生になった時に、息子専用のパソコンを買ってあげることにしたんですけど、最初パパが未だに使っている4年前のMacBook Airをお下がりであげようとしたら、「お下がりなんて嫌だー」と拒否されました。 

普通なら「子どものくせにけしからん!」とか「まだ子どもだからスペックは低くて良い」と考えてしまうところですが、冷静に考えると、大人といっても普通の人はPowerPointやExcel、ブラウザ上のGmailとかしか使わないじゃないですか。一方息子は、これから開発を覚えようとしているので、コンパイルやデバッグ、仮想マシンの実行など重い処理をすることになる。

そもそも、頭が柔らかくて覚えるのも早い時期なんて、あと10年もないので、その貴重な時期をいかに効率良く過ごすかが大事。一方、新しいことを覚えることができなくなって、作業も入力も遅い大人こそ、古いマシンで十分。そう考えて、上級モデルのMacBook Proを子どもに買ってあげることにしました。iPhoneも中学に入学してすぐに持たせました。最近はさらにVAIO Zも買い増しして、いつも2台を並べて使っています。

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河崎:障壁を取り除く」わけですね。ペアレンタルコントロールもかけなかった?

清水:幼稚園児のころはかけてましたが、小学生になったころに解除しました。自分で判断できるようだったので、必要なかったかなぁと。でも中学生になってTwitterをはじめた最初は、ハラハラしました。どう書くとどんな反響が来るか、本人は加減がわからずにいろんなことを書き始めたので。

河崎:それは一応、モニターされていた?

清水:最初のころは息子をフォローして、投稿するたびにプッシュ通知がくるようにしていました。Twitterのバカ発見器にひっかかって炎上したら取り返しがつかなくなるので、「ツイッターは誰がみているかわからないし、変な人が検索して覗きに来るかもよ。匿名だと思っていても実は調べれば本名も住所も特定できてしまうんだよ」と話し合いをして、1度鍵をかけてクローズドにしたことはありました。問題になりそうな発言も消しました。

そのあと、子どももだんだん慣れてきて、周りの反応を見ながら何をどう書くと良いのかを覚えていきました。今ではパパよりも上手にバランス良く使いこなしていますね。自分で公開アカウントに戻して、今は無制限状態。モニターもしてません。

河崎:経験しながら、リスク意識も育っていくんですね。今自分が見ている情報の背後の仕組みというか、この情報がどういう成り立ちで自分の今目の前に来ているのか、逆に自分が画面に入力したものがどんな影響をこの世界に持つのかも理解している。それが、今の子どもたちが「情報社会」の高度で正確な概念を持つということなのかな。

清水:親としては、情報がデジタル化されてケーブルや空気中を伝わって、とか余計なことを教えたくなるんですけど、自分で直感的にわかっちゃうようです。経験的に。

子どもって、遊びでも同じことを何回も繰り返しますよね。あれ、実は実験しているんですよね。こうやったらこうなったと、因果関係を学んでいる。デジタルも一緒なんだなって思いましたね。

自意識はどうすれば芽生えるか?

河崎:幼稚園、小学校とものすごく形になっていますよね。息子さんほどすごくエッジの立ったテックキッズって、日本を探しても他に存在しないと思います。このことについて、学校の友だちや先生、周りの人はどう思っているんでしょうか。「すごい! 天才!」みたいな?

清水:そうでもないかもしれない。セキュリティとかホワイトハッカーとか、知らない人にとっては理解不能なのでは?学校からもすぐ帰ってくるし、そんなに勉強熱心なわけでもないので、普通の帰宅部生に見えているのかも。特定のエリアで秀でているっていうだけです。逆にスポーツが苦手とか、口下手とか、凸凹もありますから。

河崎:本人は、自分の秀でた才能をどう思っているんでしょうね。

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清水誠さん。1995年国際基督教大学教育工学科修了。インターネット暦20年。凸版印刷や外資Webエージェンシーにて情報アーキテクチャの分野を開拓しつつ大手企業へのWebコンサルティングを提供。ウェブクルーでは開発・運用プロセスの改善、日本アムウェイでは印刷物のデジタル化とCMS導入、楽天ではアクセス解析の全社展開、GILT GroupeではKPIの再定義とCRMをリード。2011年9月に渡米、米国ユタ州にてデジタルマーケティング製品の品質・プロセス改善に取り組むかたわら、執筆や帰国時のセミナー活動も続けている。IT教育について書き記してきたブログ「こどもIA日記」。

清水:周りの注目や期待を背負っているようですよ。SECCONみたいなイベントに行くと、童顔なので、小学生に間違われるんですよね。警備員に止められたり。注目を受けて「こんなに小さいのにすごい」とか。 

SNS上でも、周りから「すごい!」と褒められたりすると、期待に応えようとしているようです。一度、ご飯を食べながらの会話で「半分は趣味だけど半分は義務的に周りの期待に応えている」と話していました。大人もソーシャルでそういうところがありますよね。周りの期待を背負いつつ、うまくバランスを取っていくっていうのを、もうあの歳でやっているのはすごいなと思います。

河崎:自分がどう見られているかということに関して、自意識が十分に育っているのですね。すごく淡々と、普通のことのように仰っていますが、ものすごいことを話しています(笑)。

清水:良い悪いは置いておいて、この先そういう世界になっていくと思うんですよね。そこでの振る舞い方を身につけておいて損はしないし、逃れられるわけでもない。鏡の中の自分を見ながら演出していくというソーシャルっぽい生き方も、気がすむまで突き進んでしまえばいいと思いますね。

日本と北米で、マインクラフトに親子同時ログイン

河崎:父と子のかかわりについてうかがいたいのですが、一時、清水さんのお仕事の都合で北米と日本で離れて暮らしていた時期がありましたよね。ちょうど小学校高学年で、中学受験準備もしていて、難しい時期にさしかかる年代です。離れて暮らしながらも父子がつながるために、当時実際にはどんなコニュニケーションを心がけていましたか?

清水:僕がアメリカにいたのは、息子が9歳、小3のころです。パパと一緒に外で公園、なんていうのは小学1年生で終わり。「恥ずかしいからやだ」と手もつないでくれなくなったので、そろそろ子離れしてもいいかなって、考え始めていました。

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清水:それまでは一緒に遊ぶ友だち感覚だったんですよね。最近は紫外線が強いとか、外は危ないとかで、あまり外に出て行けない。たまに友達と遊びに行くけども、基本的には家にいて、でも一人っ子だと兄弟と遊べない。だからパパが一緒に遊んで、ママに一緒に怒られるっていう関係の中でやってきたんです。 

そういう関係が、小3のころから単身赴任になったので、変わった。離れているとコミュニケーションできないので、僕が年に3回くらい帰国していました。するとだんだん、コミュニケーションがオンラインにシフトしていきました。

小学校4・5年のころに子どもがネットでマインクラフトとか、将棋対戦ゲームなどのオンラインゲームに凝っていました。僕はそのころアメリカやバンクーバーに住んでいたので、日本と時差を考えながら時間を合わせて、「いま暇?」「じゃあログインしよう」なんてメッセージでやり取りをして、バーチャルで遊んでいましたね。

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雪山で鎌倉を作った思い出をマインクラフトで再現

清水:そこでもう1回、親子で一緒に遊べるようになった。これは、ネットがあったからこそできるようになったことですよね。昔、公園の砂場で遊んでいたように、マインクラフトで一緒に家を作ったり洞窟を掘ったりできるようになったのが、うれしかった。しかも地球の裏側で。

河崎:お話を伺っていて思うのですが、清水さん、息子さん相当大好きですよね(笑)。好きじゃないと16、17時間の時差のあるところでわざわざ時間合わせてメッセージが来てお互いにマインクラフトやろうよだなんて、普通言わないじゃないですか! 関わりの時間をものすごく長く取っている。

清水:一番、最優先していますよ。まぁ、あまり外にはそういった感情は出さず、一緒にいくぜー的な感じで、友だち感覚で接していますが。

開発について彼が何言っているか、僕はわかんないですからね(笑)

河崎:デジタルキッズである息子さんの成長を見ていて、お父さんとしては手応えがありますか?

清水:成果は出ていますよね。覚えるのも早いし。開発に関する発言もすごく論理的で、自分でしっかり考えているので、すげーなって思います。開発については、もう彼が何言っているか、僕には理解不能です(笑)。

河崎:えっ、清水さんのようなプロフェッショナルでも?

清水:読んでいる本も良くわかんないし。本当は、一緒に開発したかったんですよ。「一緒に会社やって、アプリを作って売ろうよ」って僕は言っていたんですけど、子どもは「開発なんて目に見える表面的なものは面白くない」と言い出して、アルゴリズムとかプロトコルとか、もっとローレベルな仕組みに興味を持ち始めて、セキュリティ系に進みました。 

セキュリティ系って将来有望なエリアなのかわからなくて、僕自身としては本当はそっちに行ってほしくない、今はデータサイエンティストの方が有利と思っていた時期もありました。

でも、サイバーテロや情報漏えいが多発するこの時代、情報セキュリティやホワイトハッカーは将来