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残業はエクスタシー!? イクメン経営者に学ぶ"働き方革命"──フローレンス駒崎代表×サイボウズ青野社長

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サイボウズ青野慶久社長(左)と認定NPO法人フローレンス駒崎弘樹代表(右)

「できれば子育てにもっと関わりたい。でも毎日、残業続きでとてもムリ」なんて思っている男性、多いのではないでしょうか? そんなアナタにお届けするのが、若くして自ら病児保育を提供する認定NPO法人フローレンスを立ち上げた駒崎弘樹さんと、サイボウズの青野慶久社長によるこの「イクメン経営者ズ」対談。モーレツな昭和型仕事人間から、育児や家事にも積極的に携わるイクメンへ脱皮を遂げた経験を持つ2人が、そこに至るまでの自身の葛藤や、9時から18時までの定時でキッチリ成果を出すための「超時短仕事術」について、余すところなく明かします。

「ベンチャー経営者は忙しくなくては」というヘッドギアをはめていた

青野:まずは、なぜ我々がイクメン経営者になったのか、という話から入っていきたいなと。

僕の場合、もともとは24時間働き続けて職場で死ねたら本望、みたいな昭和型の会社人間だったんです。ところが、住んでいる文京区の区長が全国の自治体首長として初めて育児休暇を取った方で、たまたま子どもの誕生日が一緒だったことから「青野さんも育児休暇を取りなよ」と勧められて。で、実際に取ってみたところ、子育てってこんなに大変なんだ、これを女の人にだけ押し付けるなんてあり得ない、と気づいたんです。

その後、2人目の子どもが生まれた時も育休を取得。2回も育休を取ったということでイクメン経営者として取り上げられるようになりました。

駒崎:僕も、3歳の娘と1歳の息子の、2人の子どもがいまして。子どもが生まれた時は2回とも育休を取りました。ただ、その前から働き方を変えていたので、育休も取りやすかったんです。

青野:どのように変えていたんですか?

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駒崎:僕は大学生の時に、ITベンチャーを経営していたんです。当時は1日16時間働くのが当たり前で、文字どおりオフィスに住んでいました。そのノリでフローレンスも始めたので、めちゃくちゃ働いていたし、そうでないとスタートアップなんて成立しないと思っていました。

そのうちに、フローレンスはある程度社会的な評価をいただけるようになったのですが、それと反比例するように、社内の雰囲気が悪くなっていったんです。殺伐とした感じで、どんどん人が辞めていく。特に優秀な女性が辞めてしまうんですね。「子育て支援をしているNPOなのに女性が辞めてしまうってどうなんだ?」と考えるようになりました。

青野:矛盾していますよね。

駒崎:ええ。そんなことから、これは働き方を変えなきゃ、と思っていた時に、お世話になっている経営者の勧めで、わざわざ米国まで行ってルー・タイスというコーチングの神様と呼ばれている人の研修を受けたんです。そこで自分がヘッドギアをはめていることに気づいた。「ベンチャー経営者は忙しくなくてはいけない」という思い込みのヘッドギアですね。

ならば自分の理想とする働き方に挑戦してみよう、ということでいろいろな方法を試したところ、9時から18時の定時で仕事を終えられるようになったんです。そこから社内にも広げていって。今は社員1人あたりの残業時間の平均は1日15分です。

青野:15分ってすごいですね! ほぼゼロじゃないですか。

駒崎:マネージャー6人のうち半分は時短勤務中ですし、事務局長をしているCOOの女性も時短勤務です。なんだ、やればできるじゃないかと。社員200人の僕らができるんだから大企業でできないはずがないんですよ。そんなことから、新しい働き方を世に広めるための様々な活動を始めました。

妻と会話するにも「結論から先に話して」「アジェンダを出して」

青野:やはり、やってみると気づきますよね。僕も1人目の子どもが生まれた時は、まだなんだかんだ理由をつけて遅くまで働いていたんです。けれども2人目が生まれ、しかもその子が病気がちだったことから、これはもう早く帰るしかない、働き方を変えるしかない、となった。

早く帰るとなると、当然、働く時間は減りますから、自分が本当にしなくてはいけないことは何かを徹底的に見直しました。そうしたら別にやらなくてもいい仕事がたくさんあることに気づいた。働く時間を減らしても、あまりアウトプットの量は減っていないじゃないかと。

駒崎:僕も18時に帰ることから始めてみたんです。それまでは、午前中は準備運動で18時を過ぎてからノッてくる、みたいな感じだったんですが(笑)。最初は「俺が帰ったらみんなサボるんじゃないか」みたいに疑心暗鬼でした。でも実際は、誰も困っていないんですよ。

青野:むしろみんな「早く帰ってくれてありがとう」みたいな(笑)

駒崎:ホントそうなんですよ。その時に、俺は今まで何をやっていたんだろう、と思ったんです。今まで、本来は18時に帰れたのに22時23時まで働いていたのなら、その時間って僕の人生の何年分だったんだろうと。

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青野:わかるなあ。僕も昔は、真っ白な灰になるまで働くのが好きで。

駒崎:"ひとりあしたのジョー"みたいな(笑)

青野:そうそう(笑)。でも、それって、自分のエクスタシーを求めていただけで、本当の意味での生産性は追求していないんですよね。逆にそれによって失っているものがあるのに気づいていない。

駒崎:僕も"エンターテインメント忌避症"になっていた時期があって。仕事に没入するために、読書や映画鑑賞など、文化的なものに触れる時間を削っていく。そうすると、自分がどんどんつまんない奴になっていくんですよ。

青野:僕の場合は、妻との会話を犠牲にしていましたね。何かと仕事モードで、「結論から先に話して」とか言っちゃう(笑)。そのせいで関係もギクシャクしていました。

駒崎:ああ、それも同じだ! 妻が話しかけてきたら「その前にアジェンダ出して」とか(笑)。それは、プロセスを大事にして感情を共有する大切なコミュニケーションができていなんですよね。

でも実際は、感情の共有から生まれるものって確実にありますよね。例えば、仕事の話を妻としてもしょうがないと思っていたけど、実際話してみると、解はないにしても、自分の中でとっちらかっていたものが整理されたりする。

青野:「新しいベビーカーが出た」という話題を振られた時に、以前は「で、買うの買わないの?」で終わらせていたんです。それを「へえ、どう機能がアップしたの?」「なるほど、コンビさんはそう攻めてきたか!」みたいに話すようにすると、会話自体が楽しくなり、幸福感が得られる。幸福になるのが人生の目的なら、こうすれば得られるじゃないかと。

駒崎:時間は幸福を得るための手段なのに、価値が逆転しちゃうんですね。

青野:今、ミヒャエル・エンデの『モモ』を思い出しましたよ。あの本はそういうことを言っていたのか。家族と素晴らしい時間を過ごすことが幸せ、それこそが人生の目的、というふうに、世の中的にもなればいいですね。

会社にずっといる人にイノベーティブな仕事はできない

駒崎:とはいえ、18時に帰るには、短い時間で最大の成果を出すことも必要。僕はそのために、自分のやってきたことを全部棚卸ししようと思ったんです。自分が1日の中で何に時間をかけているのかをストップウオッチソフトで計って、分析してみた。そうしたら、メールを書いている時間がとても長いのに気づきました。仕事全体の40%くらいを占めていたんじゃないかな。

そこで、返信がいるメールといらないメールがひと目でわかるよう、メールの1行目に【共有】、【要FB】といったコードをつけるよう社内で取り決めをしました。そうしたら、8割ぐらいが返事のいらない【共有】のものだったんです。これでメールを書く時間が2割に減りました。

青野:ちょっとしたことで、そんなにガツンと削減できたんですね。

駒崎:ええ。次に、ウチのNPOは会議の時間が長すぎる上、何も決まらないことも多かったんで、会議の時間も「見える化」して削減しようと考えました。会議の際に、プロジェクターでアジェンダを映し出し、その場でこのタスクをやるのは誰、と書き込んでいくことにしたんです。そうすれば時間も短くなるし、「あれ、これ、僕がやるんでしたっけ?」なんていうこともなくなる。

さらに、「そもそも全ての会議に最初から最後まで全員が出る必要があるのか?」とも感じました。そこで、会議ごとに、ずっと出る必要がある人はフルメンバーに、ある特定の議題だけ出ればいいという人はサブメンバーに、とより分けてみた。そうしたら出なくてもいい会議が炙り出されてくるんです。一番炙り出されたのは僕。当時参加していた12の会議のうち、10はサブメンバーでいいことがわかりました。

こうした地道な「カイゼン」をやっていくうちに、働く時間がどんどん短くなっていったんです。今や僕は週に2日しかオフィスに出社していません。あとは直接、お客様先に行くか、家の近くのスタバで仕事をするか。

青野:すごいですね。僕は独立開業する前、大企業に勤めていたんです。その会社では、若いうちは給料が安いから、残業代で貯金をつくるみたいな慣習があって。若いうちにあれに慣れちゃうと、残業しないで早く帰ろうというモチベーションがなくなるんですよ。

駒崎:そういうふうにしつけられちゃう。

青野:あれがなくなるだけでもだいぶ違うかもしれませんね。

駒崎:「若いうちはむちゃくちゃ働いたほうがいいのでは?」という意見もありますよね。でもそれも同じように、長時間働くクセがついちゃうんですよ。

長時間労働よりも、アウトプットで勝負するという考え方にするべき。働く時間を短くするには頭を使います。そっちのクセをつけたほうがいいのではないかと。

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青野:そのとおりですね。

駒崎:最近は世の中の動きが激しいですよね? 今現在持っているスキルが5年後に全くトレンドでなくなることなんて珍しくありません。ならば、どうしても新しいスキルへのキャッチアップが必要になります。でも、深夜まで働いていたら、とても学ぶ時間なんてない。そうなると自分自身が陳腐化しちゃうんですよ。それを避けるためにも働く時間は短くしたほうがいいと思います。

青野:昔は会社の中であらゆることを学べましたが、今は社会から学べることのほうが多く、しかもそういうものを取り入れないとイノベーティブな仕事ができない。他者にはない差別的なものを生み出せ、なんて言われても、会社にずっといる人にはそんなものは思いつかないですから。

駒崎:そもそも、会社の人以外の他者と会ってないですからね(笑)
ひと昔前は、工場で良い物を均質に安く作れば成功できた。それが最近になって急に労働者に"付加価値"とか"イノベーション"といったものが求められるようになってきたわけですが、そう言われても我々はいきなり働き方を変えられない。ある意味"股裂き状態"にあるというか。

青野:このままいくと、重要な産業で日本はどんどん負け続けてしまう。早く変化を起こさないといけませんね。

後編に続く

撮影:谷川真紀子、執筆:荒濱一、編集:渡辺清美

(2014年3月24日のサイボウズ式 「残業にエクスタシーを感じる仕事人間が、どうしてイクメンになれたのか?──認定NPO法人フローレンス駒崎代表×サイボウズ青野社長」より転載)


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