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サイボウズの給料は「あなたが転職したらいくら?」で決めています

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「市場価格は適当に決まるから、給与は最終的には適当に決める」「でも、そのプロセスの説明責任はしっかり果たす」

こう話すのは サイボウズ副社長 兼 サイボウズUS社長の山田理。創業以来、人事評価制度を決めては変え、変えては決め、紆余曲折をたどってきました。

そして今、サイボウズの給与は「市場価値」から決めています。それは社外/社内的価値の2軸から定められるものです。給与が決定した後は徹底的に「説明責任」を果たします。「市場評価は適当」と話す裏側にある、サイボウズの人事制度の変遷を追いかけてみます。

2015年10月28日開催、「Gartner Symposium2015」の講演を再構成したものです。後編「社内評価だけで給料を決めるのをやめたら、多様な働き方が実現できた」に続きます

サイボウズの山田です。最近注目を集めているサイボウズの働き方や人事制度の中で、今回は「市場価値」について話してみます。市場価値を意識していかないといけないのが、世の中の流れかなと思っています。

僕は社会人として8年間、日本興業銀行で働いたあと、創業2年目のサイボウズにジョインしました。当時は15人くらいの規模だったかな。事業支援全般や人事を担当して、2015年4月から単身一人でアメリカに乗り込んで行きました。

いまもサイボウズUSの社長としてサンフランシスコに住み、10人くらいのメンバーでやっています。

市場価値って何のために評価するの?

今日は人事制度や人事評価について、「評価って何のためにするの?」「市場価値って何のため?」をテーマにお話ししたいと思います。そもそも僕が銀行員の時は一切考えなかったことです。

サイボウズという会社の成長にあわせて人事制度を作る中で、そもそも「評価するのは何のためだろう?」というのを考えるきっかけがありました。

サイボウズの人事制度は、紆余曲折があって今の形に行きついているんです。まずはこれまでの人事制度をずらっと話してみようと思います。

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個別評価は、評価を受ける側の納得感がなかった

最初は個別評価です。「あなたは頑張っているね、頑張っていないね、できているね、できていないね、だからお給料はこれくらい」という感じで、社長がメンバーを個別に評価をしていました。

そこから人が増え、1人1人個別に評価するのが難しくなってきたので、目標管理制度にしました。目標は個人で設定して、上司が「あなたは80%できた」などと評価して給料を決めていました。

これは「どれだけできたか?」という成果に基づいて評価する、いわゆる成果主義というものです。

ただ、問題がありました。「上司の判断が辛い/甘い」という不満が出てくるんですね。評価を受ける側の納得感がなく、もっと納得のいく評価をしてほしいという声があり、評価の精度を高めていく必要がありました。

市場評価・360度評価、誰を見て仕事をすればいいか分からなくなった

そこで取り入れたのが「社内市場評価」です。社内の全事業部長が「あの人に自分の事業部に入ってほしい」と思ったら、そのメンバーに「キテキテカード」を渡すんです。このカードが集まった人ほど、社内での市場価値が高くなっていくというものです。

360度評価もやってみました。アットランダムに5人くらい選び、「あの人のここは良かった、ここは良くなかった」と評価するものです。

この2軸を加えて評価をすると、1人の上司だけではなく、回りの上司やほかのメンバーもその人の評価をするので、納得感が出ると思っていました。

でも、ここでも問題が出ます。こうすると、多面的に評価されるので何となく納得感は出てくるものの、いったい誰が評価したかのが分からなくなってくるんです。

「上司の山田さんからは8割できたと言われていたのに、なんでC評価なんですか」「分からへん......。もしかしたらほかの事業部長に好かれてないんかも?」「ええ~、じゃあ僕どうしたらいいんですか?」「分からへん......」「ええ~」みたいなやりとりが出てきたんです。

結局、誰を見て仕事をすればいいか、誰を信頼すればいいか、わからなくなってしまったんです。チームの一体感も希薄化し、このタイミングで離職率も上がっていきました。そこで人事制度を「もう1度原点にかえって考えよう」となったんです。

階層の定義を撤廃、職種間で不公平感が生じた

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サイボウズ取締役副社長 兼 サイボウズUS社長の山田理

当時の社員数は100人くらい。まだ1人1人を評価できる規模にもかかわらず、今後の規模拡大をにらみ、「相対評価」を取り入れました。全員の評点を1位から100位まで並べ、上位2割はS評価、下位の数%はE評価、みたいな感じです。

そして、E評価を2回とれば、「退場」。どれだけ全員が頑張ろうが毎回必ずE評価が何人かでるにもかかわらずです。やっぱり「ええ~」という反応でした。
それじゃいかんとして、絶対評価を取り入れます。そのため、能力を職階に応じて定義する必要がありましたので、「階層の定義」というものをつくりました。職階ごとに能力を定義するのは、僕がいた銀行にもありましたし、一般的な評価制度と何ら変わりません。

違いといえば、多くの企業が階層を定義してはいるものの、基本的には年功で給料が上がっていくのに対して、階層ごとに定義した定量的および定性的な能力の水準を、特性や成果を見てクリアしているか、していないかのみで評価をするというところです。つまり、1人1人の顔見て評価する。原点回帰ということです。

ただここでも問題が発生します。定義が示す言葉自体は何となく正しいけど、給料と釣り合っていないという点です。

アウトプットが給与に見合っていない、職種ごとに需要のばらつきがあり採用が難しくないポジションの仕事もある──。それなのに階層は職種間で一緒なので、給与も一緒。

「それって何かおかしくない?」となっていきました。そこで、1度階層の定義を撤廃し、給与を階層で決めるのをやめることにしました。

そして、今やっている「市場価値を取り入れた」評価制度を取り入れました。

評価の目的は「成長サポート」と「給与決定」の2つ

評価は何のためにするのか? 今回のテーマに戻ります。

僕、銀行にいた時も評価されるのは嫌だったんです。みなさんも嫌じゃないですか? 他人にとやかく言われるの。一方で、評価するのも嫌なんですよね。いい評価しても「何であいつだけ」。悪い評価したら「何で私だけ」となる。どっちにしても評価すると嫌われるにきまっているじゃないですか。だから、僕は評価するのもされるのも、嫌だったんです。

じゃあ、評価なんかされたくもないし、したくもないにもかかわらず、会社としては評価をしないといけない。それってなんでなんだろう?

いろいろと考えた結果、評価には2つの目的があるなと。1つは成長のサポート。自己流でやるよりも誰かからアドバイスもらったほうが、成長しやすい。個人の成長をサポートするために評価をしたり、してもらったりするほうがいいんです。そしてもう1つは、給料を決めるため。

この2つの目的を意識して評価をすることが大切だというところに行きつきました。

市場価格は案外「適当」に決まっている?

では市場価値はどうすれば分かるか? 一般的な市場価格決定のメカニズムについて考えてみます。

まずは、需要と供給の関係から。供給がたくさんあって需要が少なければ、価格は下がる。逆なら価格が上がりますよね。価格は、こういった要因に影響されて決まっています。

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もう1つは、売値と買値です。価格が決まるのは、市場で売値と買値が合致したところです。売りたい人は高く売りたい、買いたい人は安く買いたい。それが市場です。

売り値を上げれば上げるほど「高く」売れるチャンスがあり、買い値を下げれば下げるほど「安く」買えるチャンスがあります。言い換えると、給料を上げたければ、高い売り値を出していく。そうすると給料が上がる「チャンス」が得られるわけです。反対に、黙っていたら売り圧力が掛かって給料は上がらない、もしくは、下がる傾向にある。このようなメカニズムから、市場の価格が日々実際に形成されています。

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何が言いたいかというと、世の中の価格は意外と「適当」に決まっているということです。サイボウズの株だって、毎日価格が変動します。サイボウズが劇的に変わっていないのに、ですよ。株価は結構適当に変わりますし、投資家は適当に決まった価格で株を売り買いしているんです。

ただ、それこそが市場価値であり価格の原理だ、いうことなんです。それを大前提に、人材の市場価値も考えていくべきだと思うんです。

給与は「社外/社内の価値」の2軸で評価する

サイボウズの給与は「その人の市場価値」で決定されます。市場価値とは「社外的価値」と「社内的価値」の2つで決まります。給与の評価は2ステップで決めていきます。

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社外的価値は、「転職したらいくらもらえそうかという金額」です。その人が転職市場でどれくらいの値段が付くか? 当然、転職する会社によってオファーの金額は異なりますよね。そこから金額のレンジを決めていくんです。

この社外的価値の金額感は、僕らには決められません。また、この金額感は転職を考えたことがあれば何となくわかるでしょうし、少なくとも人事をやっていたら知っているはずです。スキル(職種や経験年数)、属性(年齢や地域)を加味して、決まってくるものですよね。

金額レンジの算出には、給与統計も参考にしています。ITの大企業で30歳課長だったら、40歳部長だったらこれくらいの給与水準、というのは分かるわけです。これで社外的価値のレンジを決めていきます。

社内的価値=覚悟×スキル

次は「社内的価値」です。こちらは社内の話なので、みなさんの会社とは違うかもしれませんが......。

サイボウズで社内価値が高い人とは「社内で信頼度が高い人」を指します。サイボウズでの信頼度は「覚悟×スキル」で測ります。

覚悟はサイボウズへのコミットメント。会社に対してどれだけ尽くせるか、理想への共感度が高いか。ちなみに覚悟は、各人の選択により増減するものですので、必ず会社に尽くさなくてはいけない、というわけではありません。

ただ単に、自らが選択したサイボウズへのコミットメントに応じて信頼度が変わるということだけです。それに各人のスキルを掛けあわせて信頼度をはかります。ちなみにスキルは努力により増やすことができるものではありますが各個人により生まれつき差があるものでもあります。

この覚悟×スキルによる信頼度が一番大きなポイントですが、これに「抜けられたら困る」という人にはプレミアムがつくような「社内需給」や経験年数や同職種のバランスなどを考慮する「社内相対感」などを加味して、社内的価値を算出します。

(後編「社内評価だけで給料を決めるのをやめたら、多様な働き方が実現できた」に続きます)

人事評価は適当でいい?──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談」もあわせてどうぞ。

(文:藤村 能光/写真:鈴木 亜希子)

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本記事は、2015年11月25日のサイボウズ式掲載記事サイボウズの給料は「あなたが転職したらいくら?」で決めていますより転載しました。