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異性と傷つけ合わずに仲良くするには?──ジェーン・スー×田中俊之、"男と女の指差し確認"のススメ

2014年08月30日 18時48分 JST | 更新 2014年10月28日 18時12分 JST

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作詞家にしてコラムニスト、ラジオ人気パーソナリティのジェーン・スーさんと、「男性学」を研究する田中俊之先生(武蔵大学助教)の対談・第5弾。いよいよ、最終回です。

締めの今回は、男性も女性も、これまでのマインドセット(思い込みによる価値観)を変えていくにはどうしたらよいかを踏み込んでお話していただきました。どうぞ、お楽しみください。

第1回「籍を入れるまでの理由が見当たらん!」

第2回「稼がなければならない」プレッシャーが男を生きづらくする!?

第3回 男は頑張らなくても上に立てる女を好む!?

第4回 都心で働く独身アラフォー女が受けるプレッシャーは低い部類!?

「選択の自由」と「価値観の多様性」はセットで!

田中:いまの時代、「男」とか「女」とか、ひとくくりに語ることが難しくなっていますよね。

たとえばジェーンさんのように、都市部で働いている未婚の女性たちの話と、女性の働き口が少ない地方に住んでいる方たちの話は、別個にとりあげるしかない。いろんな生き方をしている人たちを、細かくとりあげていくしかないんだろうと思います。

ジェーン:まさに「多様性」ですよね。いまの女の人の生き方は「結婚する/しない」「子どもを産む/産まない」「働く/働かない」という2×2×2で、最低でも8パターンがあるわけですよね。でも「女の子はこうじゃないと、幸せになれません」というのは単一なままなんですよね。

田中:なるほど。

ジェーン:すごく残念だと思うのが、わたしたち「選択の自由」は与えられてきたんですけど、「価値観の多様性」をセットでもらえなかったってことなんです。

中学ぐらいのときから、これからは女性も働く時代で「結婚するもしないも自由」と言われてきたにもかかわらず、価値観は以前のままのものしか与えられてこなかったから。

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田中:女性はそういう状況ですね......。

ジェーン:やっぱり、「選択の自由」と「価値観の多様性」は、絶対セットじゃなきゃダメなんだな! と、30代中盤のとき、やっと気が付いたんですけど。

そこがセットでもらえなかったから、いつまで経っても自分が選択したものに自信がもてなくて、「あっちを選んでいたほうが幸せだったんじゃないか?」と思ってしまう。

田中:「べつの人生があったんじゃないか?」という感じですね。

ジェーン:以前、中村うさぎさんが「女は必ず、自分が選択しなかったほうの選択肢に呪われる」みたいなことをおっしゃっていましたけど、それはすごくピンときます。

せっかく8つも生き方のパターンがあっても、「やっぱり幸せなのは、旦那がいて、働いていなくて、子どもがいること」というワンパターンだと思っていると、あとの7つがダメになっちゃいますからね。まったく、もったいない。

ほかの人と話すことで考えは深まる。

田中:お話を聞いていてもこの本を読んでいても、面白いと思うのですが、ジェーンさんって、考え続けているじゃないですか。自分一人で考えて答えを出しているんですか? それとも、同世代の、同じ境遇の友だちとの会話を通じて結論を導いているんですか?

ジェーン:友達ですかね、やっぱり。わたしは完全に「友だちの集合体」なんですよ。「友だちの集合知が、わたし」みたいな(笑)。

その子たちとわーっと話して出てくる、つじつまのあわなさや目が覚めるような意見を、洗濯機でもみくちゃにして洗っていると、だんだん余分なものが落ちてキレイにあがってくる、という感じですね

田中:なるほど。それはヒントになりますね。 「多様性を認めよう」とか「ほかの選択肢もあるよ」といくら言っても、「いや、ない」と思ってしまう人も多いじゃないですか。

だから、ジェーンさんみたいにいろんな友達と意見を交わして、自分なりの結論が出てくる場があることが、必要なんだろうなと思います。

でも男の人には、そういう場は少ないと思いますね。仕事関係の人とか自分と似たような人としかしゃべらないと、そういう自省みたいなものが生まれてこないし、価値観も均一になっていく。

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ジェーン:同じ会社のなかでもいろんな世代の人がいるんだから、もっとそういう人同士で話してもいいと思うんですよ。

たとえば、会長クラスの人は「おれたちが戦後の日本をっ!」という自負があるような世代で、社長と言われてる人は、いまだとやっぱりバブルのド頭から知っていて、適度に甘い汁を吸った人たち。その後、わたしたちの世代以降はずーっと氷河期で、心電図で言うならある種のフラットラインが続いている。

これだけ違う経済状況・社会状況をベースにしてきた人たちがいっしょに働いているんだから、考えたりしゃべったりっていうのは、もっとしたほうがいいと思いますよね~。

田中:そうですねー。場があれば、けっこうみんな、話すと思うんです。最近、市民講座でワークショップをやったりしていますが、そうすると男の人もわーっと話すんですよね。いま自分が抱える、子育てとか、仕事とかの問題について。

ジェーン:そうなんですよ。読書会のワークショップも、始まったらもう、蜂の巣をつついたみたいに、うわーっ!ってなります。「なんかあったら声かけてください」と言うんだけど、だっれも声かけてくれないくらい(笑)。 「こういう話を人とする機会がなかったので、すごく楽しい!」っていうんですね。だから、そういう場がもっとあったらっていうの、わたしもすごく思います。

「正論」よりもネゴシエーション能力を

ジェーン:世代の全然違う人同士がしゃべったりするときは、うまくナビゲートできる人もいるといいんですよね。たとえば、おじいちゃんがすっごく偏ったことを言ったときに「まぁでも、なんでこの人がこう考えているのか、みんなで考えてみようよ!」と言えるといいんですけど。

田中:そうですねー。

ジェーン:たとえば、うちの父親なんかも、かなり偏ったことを言う人なんですけど、それでも話せばわかるんですよね。「そういうこと言うのやめろ」と正論ぶちかましても絶対、やめないですけど、「お父さん、家族だから教えてあげるけど、いまそういうことを言うと、すっごく恥ずかしいんだよ。教養がない人って思われて、すごく野蛮な現代人じゃない人だなって判断されるんだよ」と言ったら、ピタリと言わなくなりましたからね。

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田中:そう、正論で世の中変わったためしがないですからね。正論って、言われた相手が自分で考える余地がなくなっちゃうから。それよりも、たとえば気の利いた皮肉みたいなのを言って、「相手が自分で気がついた」みたいにもっていってあげたほうがいいですよ。

ジェーン:そうなんですよね。正論とネゴシエーションは、全然べつ。「正論をプラカードに書いて、その人の目の前に出す」というのではないネゴシエーションの方法を、女の人がたくさん覚えるといいな~。

あと、こっちが勝手に「お年寄りは頭がかたいから」と思っちゃうのも、よくないですよね。「いまの若者はこうですよ」と説明したら、「あーそうなんだ」っていう人もけっこういるので。

田中たとえば定年退職者の人たちに「いまの大卒って、むかしの大卒と全然違うんですよ、進学率がまず違いますから」と説明すると、「あ、そうか。だから息子は、大卒でも俺が思っているような職業につかねえんだ」と納得してくれたりするんですよね。

ジェーン:そうそう、素直に話してみるのも大事。

「己のマッチョ思想」に首を絞められる前に

田中:ぼちぼちまとめっぽい話に入るんですが、男性学が広まらない理由は、いくつかあるんですよ。 まずひとつは、男性学が問題だと言っていることの何が問題かわからない、というもの。そういう男性は、今回の対談でお話したようなことをいくら話しても、ピンときてくれないんですね。

あと多いのは「くだらない」という反応ですね。経済とか政治とか、そういう大きな話じゃないから、「そんなのくだらん」ていう。

それでも以前よりはだいぶ変わってきて、ピンときていただける人も、だいぶ増えてはきましたけどね。

ジェーン:わからないかー。「キミのマッチョ思想が、キミの首を絞めるよ!」というのは、ほんとう~に思うんですけどねー。

田中:その「自分の首絞めるよ!」ということが、そういう人たちには、うまく腑に落ちないんですね。その古いマッチョ思想でうまくやってきたか、うまくいっているか、なんでしょうけど。でも、いつか首絞められちゃう可能性は十分高いわけで。だからそこは、男性学を専門にしているぼくががんばって伝えていけるといいのかなーと思うんです。

ジェーン:あのね、男の人たちと仲良くしたいんですよ。すごく。 だから、お互いどうしても変われない部分、性差っていうのがあるのは大前提としたうえで、どうやったら下手に傷つけあったり、苦しい思いをしたりせずにやりとりができるのかなっていう......。話し合いの、テーブルがほしいですね。

田中:お互い交渉したり譲り合ったりして、「男はこうでありたい」と男の人が願っている部分を、考え直してもらってもいいんじゃないか、というようなことですよね。

ジェーン:そうですねー。 あとこっちも、好きな相手からは「女の子」としてかわいがってもらいたい、みたいな気持ちはありますから、そことギブ&テイクにする交渉もできますよね。全社会の男に対してはムリですけど、恋人とか、親密な関係の相手だったら、できるんじゃないですか。

たとえばお付き合いしてる男性が時に見せるマッチョな一面に対しても、「あー、いまこの人威張りたいんだなー」と思ったら、そこはいちいち潰しにはいかずに威張ってもらって、その代わりこっちが「女の子」みたいな扱いをしてもらいたいときには、「ちょ、こないだこっち払ったから、今日はそっちが...」という感じでやれればいいかなーって思うんですけど(笑)。全方位との関係性を一定にするのは無茶ですからね。

自分も多様であってもいい

田中:「自分も多様であってもいい」というのも、思うんですよね。女性だったら、「女の子」モードの自分もいていいし、バリバリ仕事モードの自分がいてもいい、っていう。

そういう意味でいうと、男の人はどうも多様な自分というか、変わることに対する恐怖感っていうのがあるのかなと思うんですね。たとえば学生だと「あいつ、高校デビューじゃん、大学デビューじゃん」って陰で言われるとか、そうやって「昔と変わったね!」と後ろ指さされるのが、男らしくない、みたいな考えがあるのか。

ジェーン:一貫性があるっていうことと、変化をこわがらないっていうことは、並立すると思うんですけどね。絶対変わっちゃいけないなんて、老舗の味じゃないんだから(笑)。人の影響受けたらだれでも変わるし、その変わったところでの一貫性があればいいだけの話ですから。

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田中:そうですよね。男の場合はどうも、「競争」みたいなところで考えるから、そこでの見栄を張るのをやめられないのかなー。誰だって一生は勝ち続けられないんだから、競争をおりたほうがラクですよねー、たぶん。

ジェーン:そういうことを、どうやったら分かってもらえるんだろうなー......。

田中:最近ほんとによく思うのが、やっぱり、両方の性で"指差し確認"をやってかなきゃいけないんじゃないか、ってことですね。

男の人と女の人と、いっしょに考えないと意味がない、ということですね。

ジェーン:そう。だから「ほんっとに、そんなに〝男らしい〟ほうがいい?」とか、「ほんっとに、そんなにお金もってなきゃダメ?」「ほんっとに、そんなに若くなきゃだめ?」ということを、両性同士で、一回確認したほうがいいと思うんです。 そうすると、 じつは「ただの思い込みだったね!」ということもわかると思うので。

田中:今回の対談は、まさにそういう指差し確認の試みだったともいえますよね。いやー、面白かったです。ありがとうございました。

ジェーン:ほんっとに。あと何時間あってもしゃべれるくらい、楽しかったです。こちらこそ、どうもありがとうございましたー!

文:大塚玲子、撮影:橋本直己、編集:渡辺清美

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(2014年8月25日のサイボウズ式 「