サイボウズ式:「いい加減」なのに信頼される人が、仕事で絶対に外さない「本質」

忘れっぽく細かい作業は苦手、一度聞いたことでもすぐ忘れてしまうタイプの人なのに、なぜ人気者? 実は「あるポイント」を必ず押さえていた。

サイボウズ式編集部より:著名ブロガーによるチームワークや働き方に関するコラム「ブロガーズ・コラム」。はせ おやさいさんのコラムです。

こんにちは、はせおやさいです。

いつも適当に見えるのに、なぜか慕われる人、人望のある人っていませんか。わたしは自分が神経質で周りを緊張させてしまうタイプだったので、それとは真逆の、常にリラックスしていて、周りに自然と人が集まってくるような人に憧れて、よく観察していた時期がありました。

そんなに多くはいないタイプではありますが、数人、そういう人を観察してみて、ふと共通点に気付きました。それは全員が「あるポイント」を必ず押さえている、ということ。

「ゆるゆる」なあの人がなぜ人気者?

あるとき、ファッションも含めてとても「ゆるゆる」なタイプのメンバーと組むことがありました。マイペースで明るく、周りを巻き込んで楽しく進めるのが上手な人でした。同時に忘れっぽく、細かい作業は苦手、一度聞いたことでもすぐ忘れてしまう、というタイプだったので、細かくて神経質なわたしとは、おたがいにない部分を補い合って相性がよく、年齢が近いこともあっていろんな話をしました。

いつも冗談を言っているような人で、彼が深刻な顔をしている瞬間の記憶は、数えるほどしかありません。困難なときほど逆に笑う、というスタンスがわたしと似ていて、課題が増えれば増えるほど面白がり、「やべー!」と笑いながら立ち向かえるチームメイトでした。とはいえ、抜けている部分も多く、わいわい文句を言いながらも楽しく仕事ができるパートナーでした。

それにしても、ポカを見逃してくれる社内ならまだしも、社外の取引先にもとても可愛がられ、何かと相談を持ちかけられている彼を見て、「こんなにテキトーなのに、なぜみんな彼に仕事を頼みたがるんだろう?」といつも不思議に思っていたのです。

テキトーだと思っていた同僚が必ず押さえていた3つのポイント

彼と一緒に働いていく中で、テキトーに見えた彼が必ず死守するよう心がけているポイントがいくつか見えてきました。

まず、「絶対に納期を破らない」こと。彼は会議のない朝に遅刻をしてくることはたまにありましたが、クライアントと約束をした納期についてだけは絶対に破らないよう、死守していました。「寝坊しました?」で遅刻してくる彼のことだから、「すみません、納品が1日遅れます」くらいは言いそう、という勝手な印象を持っていたのですが、それこそ半日でさえ提出が遅れるのが嫌いなのです。進行には神経を配っていて、万一、遅れそうになった場合でもどうにかならないか、他に打つ手はないのかを必死で考える姿勢に驚きました。

次に自分に不利なことでも「相手に嘘をつかない」こと。自分が提案したいサービスがあったとして、それがこのクライアントには不向きだ、と感じたら、どんなにそのサービスを売りたいと思っていても「これを導入しても、たぶん効果はあまり出ませんよ」と正直に言ってしまうのです。極論、こっちのほうがもっと適している、と関係ない会社のサービスの情報を教えたりすらしていました。つまり、どんなときでもクライアントの立場になって物事を見て、それを正直に伝えていたのです。

そして最後は、「どんな相手にもフェアである」こと。こちらがお金を支払う側であっても、受け取る側であっても、どんな相手とも対等な立場と視点で向き合い、同じ目線を持っていました。1つ前の項目、「相手に嘘をつかない」と似ていますが、予算に上限があるなら正直にそれを伝え、できる範囲の可能性を探る、というフェアなスタンスでどんな相手とも向き合う。そのため「彼ができないと言うなら、それは本当にそうなんだろう」という前提ができ、その姿勢を通じて信頼を得ているように見えました。

仕事をする上で絶対に外れないポイントさえ押さえれば、あとは自由でいい

彼と仕事をしていて気づいたのは、自分の中にたくさんの「どっちでもいいルール」があったこと

たとえば、朝、決められた時間に来ることはもちろん重要なのですが、スケジュールさえ守っていれば、少しくらい遅刻しても体調を整えるほうが重要です。また、自分の利を守ろうと誤魔化して後々の調整の手間が増えるくらいなら、最初から正直に言ってしまうほうが結果的に効率がよくなります。このように、目の前で彼が実践してくれている様子を通じ、「本質さえ守っていれば、あとは自由でいいんだ」という実感が得られたのです。

もちろん、環境や会社の規則に準ずる必要はあります。ですが、この実感はわたしの凝り固まった意識をほぐしてくれました。彼は最低限の規則やルールを守りつつ、それよりもこの「絶対に外してはいけないポイント」だけをどうやって守るかを真剣に考え、動いて「力の抜きどころ」を作っていたのかもしれません。

そして「適度に力が抜けている人」というのは、周りにもよい影響を及ぼします。人は身近にいる人の影響を受けやすいもの。彼が「これだけは守ればいい」を取捨選択できていたことで「抜きどころ」を上手に使い、リラックスした空気を作ってくれました。そして、周りで一緒に働くわたしたちもその影響を受けました。彼にならって、「本質だけをしっかりと見て動けばいい」と思えたことで、そのぶん、メリハリをもって働けていたのだと思います。

「ゆるゆる」に振る舞うことでチームにもたらすポジティブな効果

彼の影響を受けて、わたしもすぐにまねをすることにしました。

案件が立て込んだりトラブルが続いたとしても、先ほどの3点、「納期を破らない」「相手に嘘をつかない」「どんな相手にもフェアである」ことだけを守ればいい、と決めて、それ以外は多少「ゆるく」、まあいいか、で進めてみたのです。

結果、判断基準の取捨選択ができ、優先順位がはっきりしたことで「全部を死守しなければ」という状態が変化し「抜くところは抜く」「締めるところは締める」空気が動き始めました。全部を守らなければ、と思わなくなったおかげで自分にも余裕ができ、精神的な余裕が良好な雰囲気づくりに効果を見せたのです。取捨選択、優先度付けの重要さを痛感した出来事でした。

そしてそれは結果的にわたし自身の気持ちの余裕につながり、余裕ができたおかげで細かいことへの目配りもできるようになりました。つまり「全部を守らなければ」と思っていたとき以上に、視野が広がったのです。これは思わぬ収穫でした。

副次的な効果としては、余裕ができたおかげで周りから声をかけてもらいやすくなり、それまで以上に情報が集まってくるようになりました。プロジェクトの進行において、情報をどれだけ持てるかは非常に重要です。いつもカツカツで焦っていた頃よりも、「雑談」という形式を取って細かい問題点の共有をしてもらえたり、懸念点を知らせてもらえるようになりました。「余裕」が生む空気が人を呼び、人が情報をもたらしてくれたのです。

このやり方は今もわたしの力になり、さまざまな人が多くの情報を持ってきてくれます。情報を多く持つ、というのは、より精度の高い判断をするための大きな助けになります。周りの人たちが心地よく働くために余裕を持ってみよう、と思ったことが自分の助けになった、というこの経験を通じて、「ああ、これでいいんだ」という自信がつき、それがさらに余裕をもたらすという好循環に入りました。

「納期を守る」「相手に嘘をつかない」「フェアでいる」の3つは、最初は彼のまねから始めたことでしたが、今ではわたし自身の判断基準にもなっています。そして何より、「普段はゆるいけど、肝心なところで信頼される人」ってカッコいいと思いませんか。「ゆるゆる」なのに「キチっとしてる」、この両立を目指し、日々精進していきたいと思っている今日このごろです。

今日はそんな感じです。

チャオ!

イラスト:マツナガエイコ

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本記事は、2016年10月12日のサイボウズ式掲載記事「いい加減」なのに信頼される人が、仕事で絶対に外さない「本質」より転載しました。

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