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「博士メガネ男子論」にみる不器用理系男子の需要

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マスコミの報道の中で小保方晴子さんが「リケジョ」と称されていることについて、議論が起きている。確かに、同様の報道の中で男性研究者が「リケダン」と呼ばれないことを考えると、ジェンダーを前に出した呼び方は適当でない。研究所のグループリーダに用いる語としても違和感がある。また、「リケジョ」という語は講談社により商標登録されており、この事情もあって事態は少しややこしくなっている。

ただ、リケジョでもサイエンスエンジェルでもサイエンスプリンセスでも理系マドモアゼルでも助手ガールでも何でもよいのだが、理系に進学する女性の比率を高める効果があるのなら、大学の有志などが自発的にこれらの呼称を用いて活動するのは意義があると、私は思う。報道機関だけでなく、理系女子を増やす努力を行っている理系女子学生達に対してまで「リケジョ」を使用することに対して全否定するのは筋違いだろう。

このような活動では理系学部に占める女子学生の比率は増えても女性研究者の増加には繋がらない、という声もある。だが、入り口で数を増やすことにより女性の理系進学が特別ではないという雰囲気を作ることは意義があるだろう。そしていずれ、理系に進学する女性が十分に増えて、これらの用語を使わなくてもよい日が来れば、それに越したことは無い。

ところで、理系女性だけでなく理系男性もプロモーションすることで、男女両方の理系進学率が高まるのではないか。そんなことを考えていたところに、Twitterのタイムラインに流れてきたツイートがこちら。

この「博士メガネ男子論」という薄い本は、いがやちかさんらにより結成された同人サークル「久谷女子」が出版した本だ。昨年のニコニコ超会議で、私も購入した。

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ちなみに、久谷女子が数年前に出した「Webに見た萌え特集」では、なぜか私とバッタ博士が取り上げられた。こちらについてはバッタ博士のブログ記事を読んでいただくとして、ここで「博士メガネ男子論」について紹介したい。

本書は主に京大教授の山中伸弥さんをフィーチャーしつつ、メガネをかけた博士の「男性的魅力」を綴ったものだ。山中さんの他に、となりのトトロに登場するサツキとメイのお父さんの草壁タツオなど、フィクションのキャラクターについても書かれている。

私は視力が悪いが、普段はコンタクトレンズをしている。顕微鏡を頻繁に覗くので、メガネは邪魔になるからだ。だが、それでもメガネ男子好きの知り合いの女性からはメガネをかけるように勧められる。メガネ男子好きの女性は意外と多い。なぜそこまでメガネをかける男に萌える女性がいるのか。その具体的な理由は本書を読むまで判然としなかった。

博士メガネ男子の魅力は、不器用さに集約されるようだ。外見を気にしてコンタクトレンズを装着したり、おしゃれメガネをかけることは、彼女らにとって萌えポイントにはならない。「メガネ男子好き」の女性を意識してメガネをかけることなど言語道断なのだ。専門分野に特化した高い能力をもちつつ、その他のことは平均以下の能力か発揮できない、不器用な博士メガネ男子。メガネは不器用の象徴でなくてはならない。

不器用でもいい。ありのままの自分でいい。そんな理系男子が好きな女子もいる。この事実を知るだけでも、コンプレックスを抱えた一部の理系男子は救われた気持ちになるだろう。

さて、本書を読み終えて、博士メガネ男子についての妄想をよくここまでうまく言語化できるものだ、と感心してしまった。とりわけ、岡田育さんの文章の破壊力が凄まじい。風の谷のナウシカに出てくる巨神兵の最期のように、激しく腐っているのだ。岡田さんの下のツイートに表れている怒りは、男性側による女性個人個人への観察力の欠如に対してのものだろう。

最大公約的にすら女性を分析・カテゴライズできない男性ライターにキレているわけだ。その怒りはごもっともだが、岡田さんや他の久谷女子メンバーと同じレベルの能力を他人に要求するのも酷というものである。

ここでは本書に記述された具体的な表現の引用は控える。インターネットに精通し、かつプロの書き手集団でもある久谷女子のメンバー達が、ウェブでも商業誌でもなく、あえて同人誌で作品を発表していることを考慮したからだ。今のウェブ上に出したくない、あるいは出せない理由は、本書を読めば理解できる。気になる人は、久谷女子のメンバーをフォローして次回の販売機会を待つとよいだろう。

【追記】

岡田育さんからの告知。要望次第では、イベントで本書を入手できるようだ。

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(2014年2月8日「むしブロ」より転載)