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11万いいね!ニッチな業界で築き上げたcottaのファンづくりの神髄

2015年08月23日 01時00分 JST | 更新 2016年08月19日 18時12分 JST

昨年11月、とある通販サイトの公式Facebookアカウントが、「企業公式アカウント週間いいね!数ランキング」で日本一になった。並み居る大企業の公式アカウントを抑えてトップに輝いたのは、製菓材料・ラッピング・レシピの通販サイトcotta(コッタ)。BtoBの製菓材料通販として大分県で事業を展開していた株式会社タイセイが、BtoC向けの通販サイトとして2006年に立ち上げた。10年足らずで、月間1,300万PV、公式Facebookで11万いいね!を獲得するまでになったのはなぜか。社員数100人足らずの小さな会社が運営するcottaのSNS活用術、コンテンツ作りの秘訣に迫る。

団子より花!?

cottaは、サービス開始当初からコンテンツマーケティングの手法を取り入れたサイト運営に注力し、プロのパティシエやカリスマブロガーによるレシピ紹介、トレンドを押さえた特集ページなど、読み応えのあるサイト作りを心掛けてきた。数年前までは、バナー広告やリスティングなどのアドネットワークとブロガーのブログからの流入が大半を占めたが、ここ数年で、FacebookやInstagramといったSNSからの流入が急増。cotta立ち上げ時から運営を担っている佐藤綾希子さんは「今、cottaへの流入はSNSからのアクセスが圧倒的に多いので、以前にも増して写真に力を入れるようになった」と話す。

SNSの投稿に、かわいいお菓子の写真は欠かせない。「少し前は"濃厚ガトーショコラ"や"ふわふわもちもちパン"など、語感から生まれるシズル感を持つお菓子が人気だったが、今、はやるお菓子は写真で撮った時にかわいいお菓子。ブロガーさんはみんな独学で写真の勉強をして、一眼レフでお菓子の写真を撮っている」という。特に今、注目されているのが、真上から撮った写真。オープンサンドにスキレット(鋳鉄製のフライパン)など、cottaのFacebookは、真上から撮ったかわいいお菓子の写真であふれている。

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カラフルなフルーツオープンサンド/写真提供:cotta

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左:スキレットを使った魅せる盛り付けで食卓を華やかに  右:フルーツアイスバー/写真提供:cotta

今、ママ層に最も人気のSNSはInstagram。写真で魅せるSNSゆえに、一層、かわいい写真を意識するようになったと佐藤さん。「おそらくユーザーは意識してないが、見た目重視のライトで直感的なコンテンツが受ける傾向はどんどん進んでいる。ぱっと見て、『きゃー!かわいい!』と思えるお菓子しかブームにならない。『おいしそう』とか『美しい』とかは、以前ほどははやらない」

cottaの歴史は、移り変わるブームを柔軟に取り入れ、その時々に最も適したコンテンツを作ってきた歴史でもある。

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昨年から、SNSで大人気の「抱っこくまビスケット」/写真提供:cotta

石の上にも"2年"

cottaと同じように、ファンを増やしたいと考えている企業はどのような点に注意してSNS運用を行えばいいのだろうか。

「一般の方は、広告色が強い投稿にはとにかく敏感」と佐藤さん。cottaもSNS投稿を始めた当初はセール情報などを投稿していたが、1投稿につき、5いいね!ほどだったという。これではダメだということで、セールス情報を封印。意識的にかわいい写真を投稿するようにした。すると、1回の投稿に300いいね!も付くようになり、ファンが徐々に増えていった。「かわいい写真は直感的にどんどんシェアされていく。お菓子作りに興味が無い人でも、かわいい写真を見たいからファンになってくれる。cottaのファンの中には、cottaが通販サイトと知らない人も多いと思う」。しかし、それでもかまわない。まずは入り口となるファンづくりを大切にしている。

しかし、通販サイトである以上、いつまでもファンづくりだけを目標にはしていられない。一度は封印した、売り上げにつなげるための投稿をどうするか、何度も葛藤があったという。それでも「10万いいね!を獲得するまでは、セール情報などの売り込みは我慢しようと決めました」

2年間の我慢の結果、10万いいね!を突破。セール情報を解禁した。セール情報の投稿は他の投稿に比べるといいね!の数が減るのは今も変わらない。しかし、「地道に築き上げたファンの方たちは、たとえセール情報であってもcottaの発する情報は有益なものと信じてくれています。その証拠に、アクティブ率はあまり下がっていません」

井戸端会議の感覚

コンテンツを作る際、佐藤さんは「お客様が求めている情報と企業側が流したい情報は全然違う」ということを常に意識している。その姿勢は、cottaの人気を支えるブロガーたちとの関係にも表れている。「ブロガーさんたちは、自分が考えたレシピを見てほしい、おいしいと言ってほしい、という気持ちが何より強い。お金目的でブログを始めたブロガーさんはいない」。極めてユーザーに近い存在といえる。

成功の秘訣は、ブロガーとともに「とにかくユーザーに近い感覚で発信すること」。全国のブロガーに会いに、出張を重ねる日々。ビジネスライクに接することなく、友達のような感覚で井戸端会議を重ねることで、cottaのファンになってもらうという。そうして、ブロガーを介したコミュニケーションによって、ユーザーのニーズに合ったコンテンツを作りあげていく。比較的生活に余裕があり、こだわりのレシピを作るブロガーもいれば、節約・時短・お手軽レシピを作るブロガーもいる。「ブロガーさんごとに付いているファンは全く違います。十人十色のブロガーさん、それぞれとの強力な関係性がcottaの強みです」。細分化された、ユーザー一人ひとりのニーズを汲み取ることを怠らない。

生活必需品じゃない

cottaのキャッチコピーは、「だれかを想う。またつくりたくなる。」だ。お菓子は決して生活必需品ではない。だからこそ、「自分のためではなく、だれかのことを思ってつくる。食べてくれる人の笑顔を想像してつくるのだと思う。本当にハッピーな業界です」。佐藤さんの真剣な表情がほころび、満面の笑顔に変わる。ユーザーがどんな気持ちで普段の生活を送っているのか、どんな気持ちでサービスに接しているのか、ユーザーの立場になって本気で考える姿勢こそが、cottaの最大の魅力なのだろう。

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cotta立ち上げ時から運営を担っている佐藤綾希子さん

(文:サワムラ・サトウ)

(撮影:ヤマシタ)

(2015年8月20日「週刊?!イザワの目」より転載)