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今、企業に必要なのは予見力。ヤフーに学ぶ危機管理。

2015年07月25日 23時40分 JST | 更新 2016年07月22日 18時12分 JST

7月10日、東京大学にて企業広報戦略研究所主催の『企業危機管理力調査フォーラム』が開催された。同フォーラムは「企業の成長を後押しする危機管理」がテーマで、392社の危機管理担当者を対象に行った「企業危機管理力調査」の結果などが発表された。

事故・事件はもちろん、自然災害等に対する対応いかんによって、組織の存続・成長が脅かされる時代となった昨今、各企業はどのような対応を行うべきなのだろうか。本特集では、同フォーラムの主題でもあった"企業に求められる危機管理"と、モデル企業の先進的な取り組みについて紹介する。

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企業広報戦略研究所、北見幸一上席研究員

求められるのは『予見力』

今回発表された「企業危機管理力調査」は、企業の危機管理に関する取り組みを『リーダーシップ力』『予見力』『回避力』『被害軽減力』『再発防止力』の5つの指標で分析している。企業広報戦略研究所の北見幸一(きたみ・こういち)上席研究員によると、5つの指標において、総合的にスコアが高い企業は、特に「予見力」が優れているという。今後どんな危機が訪れるのか、その危機に対して今、どんな備えをするべきなのか、組織的に予測し、把握しているというわけだ。

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危機管理ペンタゴンモデル(クラス別)

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総合的なスコアが高い会社(S)は、他企業に比べ予見力も高い傾向に

フォーラムの中でリスクマネジメントのモデル企業として講演を行ったヤフー株式会社(以下、ヤフー)・リスクマネジメント室のプリンシパル、高元伸(こう・もとのぶ)氏もリスクの「予見力」を重視しているという。スマートデバイスやIoTの普及などによる市場の急激な変化や大規模システム障害、情報漏えい、広域帯規模災害時のバックアップ体制などを常に考えているという高氏は、「リスクのないビジネスはない」と話す。ヤフーでは、リスクの"発生確率"と"影響度"が高いものは『経営課題』として捉えており、「リスク管理のない経営は、目をつぶって高速道路を運転するようなもの」と、危機管理に対する意識は極めて高い。

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ヤフー株式会社・リスクマネジメント室、高元伸プリンシパル

核となるリーダーシップ

一般的に言って、企業にとって危機管理は本業とイコールではないため、経営層から評価を得にくく、危機管理に対する体制強化や資源の投資などが充分にできない場合が多分にある。しかし、「企業危機管理力調査」によると、危機発生時の対応は、経営陣が危機管理に積極的に取り組んでいるかどうかの『リーダーシップ力』の高さで大きな差が表れる。したがって、経営陣の危機管理意識を高める工夫が必要なのだ。

ヤフーでは、半年に一回、リスク担当部署が、役員と共にリスクの対応方針を決める会議を行うとともにリスクをテーマにした役員インタビューを実施し、その模様を読みやすい記事としてまとめて、社内共有をしている。「経営陣のリスクへの意識はもちろん、それが会社全体のPOI(Portfolio of Initiatives)として重要施策であることを内部に表明することが大切」と高氏。半年に1回という高頻度で危機管理会議を行うことによって、役員の危機管理意識を向上させるとともに、その意識を余すことなく社員と共有することによって、会社全体の危機管理意識が高まるのだ。また社員一人ひとりが現場で行っているリスク対策についても評価を得られるような仕組みを整えることで、現場の危機管理に対するマインドを高める工夫もしているという。

できていないことに気付く

ヤフーの危機管理に対する高い意識と、それに伴う仕組みの裏には「小さなことからコツコツと。まずは今"できていないことに気づく"ことが大切」という思いがある。

東日本大震災発生時、全社員が迅速に避難を行うとともに、早急に震災対策特別室を設置し、インターネット上で情報提供・復興支援に関するページを作成するなどさまざまな取り組みを行ったヤフーだが、それでも「サービス継続に必要な人員が居ない場合があったり、緊急対応に時間がかかってしまったりと課題もあった」と高氏は振り返る。

このような経験を踏まえ、首都直下型地震を想定した対策訓練も細かく、リアリティを追求して行っている。本番さながらの訓練で気づくことは多い。例えば、非常用電源。非常時にも使えるコンセントがどこにあり、どのように使えるか、多くの社員が把握していなかったことが訓練でわかった。そこで、誰もが一目で分かるように色を変えることにした。このように、改善する必要があるものが訓練のたびに発見・可視化されるのだ。「他にも気づきは多く、さらに質の高い訓練の実施、そして社員の興味・関心が高まるような訓練を検討したい」と高氏は意気込む。

「日々想定されるリスクは変わってくるので、リスク管理に終わりはないと思っている。最初は中途半端でも、できることからでも、いい。そこから少しずつ変えていく、そして継続していくことが重要だと思っている」

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■高元伸(こう もとのぶ)氏プロフィール

日本IBM、シスコシステムズ株式会社を経て2001年からソフトバンクBB株式会社にて技術本部、品質管理本部、セキュリティ本部長を歴任。

ソフトバンク株式会社セキュリティ対策室長補佐、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイル株式会社セキュリティ本部長を兼任し、2008年IDCフロンティア取締役システム技術本部長。

2012年からヤフー株式会社CSO室長を経て、現在、社長室リスクマネジメント室プリンシパル。

《企業広報戦略研究所 概要》

企業広報戦略研究所(Corporate communication Strategic studies Institute:略称C.S.I.)とは、企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究を行う電通パブリックリレーションズ内の研究組織です(2013年12月設立。所長:三浦健太郎)。

(取材・文:ハセガワ)

(2015年7月23日「週刊?!イザワの目」より転載)