女性ファッション誌の新しいスタンダードを目指す 『VOGUE GIRL』がリニューアル

8月23日に『VOGUE GIRL』のリニューアル号が発売されると聞き、編集長の宮坂淑子さんにお話をうかがいました。これまでの女性ファッション誌とは根本から大きく異なる、まったく新しいメディア作りを日本発で行うようです。

8月23日に『VOGUE GIRL』のリニューアル号が発売されると聞き、編集長の宮坂淑子さんにお話をうかがいました。これまでの女性ファッション誌とは根本から大きく異なる、まったく新しいメディア作りを日本発で行うようです。

Q1.リニューアルする『VOGUE GIRL』のテーマ、ターゲットとなる読者層を教えてください。

テーマは『ITガールのためのデジタルトレンドマガジン』で、「"it"ガール」とデジタルに強い「IT」をかけたダブルミーニングになっています。雑誌に終わらない雑誌、つまり雑誌とデジタルとコミュニティの3つがあることで『VOGUE GIRL』が成立します。単に雑誌のリニューアルではなく、新しいメディアの誕生と捉えていただければ幸いです。

雑誌は年に2回で春(3月)と秋(8月)、スマートフォンに完全対応したデジタルサイトは8月23日にグランドオープンします。これまでの媒体は雑誌のオマケでデジタルサイトがあるというスタイルでしたが、『VOGUE GIRL』はデジタルありきの雑誌になっていて、編集部全員がデジタルと雑誌の両方に関わっていきます。

最初に秋冬トレンドの総まとめを雑誌として出版しますが、「これだけ読めば秋冬のトレンドはOK」という教科書的な内容で、半年分の内容を1冊にまとめました。

雑誌でトレンドを大きくつかんだあと、「じゃあ明日、何を着ていけばいいの?」「どう着ていけばいいの?」となったときにデジタルをチェックしてもらうと、その具体例が紹介されているわけです。たとえば雑誌に白いシャツのトレンドが掲載されたら、デジタルには白いシャツの着方がいくつも出ている、と。雑誌とデジタルは、教科書と実用書の使い分けといった感覚です。

ターゲットは20代前半でコアターゲットは25歳くらい。ファッション意識やインターナショナル意識の高い女の子です。『VOGUE GIRL』の読者は『VOGUE』の入り口に立つ女の子ですから、モードに対する意識が高くインターナショナル化が進んでいます。25歳といえば大学や短大を卒業して3~5年。進路に対しても悩める時期で、まだ『VOGUE』には行かないけどオシャレも本物に憧れる年齢ですから、そんな女の子たちに対してトレンドや働き方などの情報を提供します。

いろいろな20代向け媒体がありますけど、ここまでハイ&ローを実現している雑誌は『VOGUE GIRL』以外にないと思います。ファストファッションにラグジュアリーブランドのコーディネイトができるのは『VOGUE GIRL』だけですね。

また今回、デジタルのサイトを立ち上げるにあたってブログをやめました。私を含めて2名だけブログをやりますが、『VOGUE GIRLブロガー』のようなものは、やりません。

そこで最注力しているのがSNS、中でもインスタグラムです。「VGRAMMER(ヴイグラマー)」=ヴォーグ・ガール・インスタグラマーとして彼女たちに発信してもらいます。ルポというより、交流しながら面白いと思ったものを発信してもらう感覚ですね。そこでバズが起きれば記事に反映されるかもしれないし、イベントが生まれるかもしれません。

Q2.こうした新しい取り組みは海外でも行われているのですか。

海外ではまだ少ないはず。私もスタッフもデジタルメディアの編集経験者なので、紙もデジタルも対応できます。それが強みです。そんなスタッフと一緒に、まだ見たことのない媒体を作ろうと思っています。

雑誌を開いてもらうと、「ここでデジタルの仕掛けとつながっているんだ」とわかってもらえるでしょう。日本の雑誌がまだやっていないことなので、あっ!と驚いてもらえると思います。

そんな作戦を練るのが得意な編集部ですが、デジタルをやってきた編集者は紙の編集者が思いつかないことを考えられるし、紙の編集者はデジタルに対し別の視点で提案できる。互いに足りない部分を補いながら企画したので、新しい媒体になっていると思います。

雑誌離れが叫ばれている中で、新しい雑誌を出すのは冒険です。今回は20代の女の子にかなりリサーチしましたが、雑誌を読まずネットしか見ないのでは......という予想に反し、紙をめくる喜びを感じていたり可愛いページを切り取って部屋に飾っていたりと、若い世代も雑誌を楽しんでいることがわかりました。

ただし20代向けの雑誌がこれだけ日本にあふれていても、同じブランドを同じように扱っていて差別化が難しくなっています。そこで見たことのない、どこにもなかった雑誌を作りたいと考えましたし、読者がお金を払って読んでもらえる価値のあるページにしようと意識しています。

デジタルが雑誌のオマケ的な関係でなく、しっかりと両方があってひとつの媒体になることを目指したので、その点で他との差別化を図ることができていると思います。

インターネットとSNSのおかげで早く、しかも無料で情報が手に入るこの時代にあえて雑誌を作るのですから、580円の意味を付加しなければいけません。情報が古くネットの二番煎じになっている雑誌も多いので、読むことで学びや気付きがあり、そして自分でアクションを起こしたくなるような雑誌にしたつもりです。

Q3.インスタグラムやフェイスブック、ツイッターなど、ソーシャルメディアを活用した新しいチャレンジはありますか。

インスタグラムは特に需要が高いので、力を入れていきます。そこから情報が自然発生していくことももちろんですが、次のジェネレーションの顧客が育つよう、20代の女の子に対してのイベントやコミュニティを作る仕掛けも行います。

来年はファッション・ユニバーシティなどを年数回予定していますが、第一線で活躍されているプレスの方やカメラマン、スタイリストなどからファッションインサイダーと呼ばれる方々を講師に招き、進路相談やファッションの講義を開こうと思っています。学校のような感覚ですね。

インスタグラムなどを通じて世界の最新トレンドが手に入るから「ちょっと威張れちゃうよ」と(笑)。

イベント情報などはデジタルに掲載します。こちらも月に700ページ以上を予定していますが、雑誌の二次使用的なページではなくオリジナルコンテンツを作っていきます。新しいシステムを使い、デジタルでしかできないファッションの見せ方を考えています。

Q4.リニューアル号の見どころを教えてください。

秋冬トレンドを22ページのボリュームで紹介していますから、それだけ読んでいただければひと冬越せます(笑)。カルチャーでもファッションでもメイクでも、そこだけ見てもらえば「私、ちょっと先取りしてるの」って威張れますよ。

またトレンド予測も行いますが、ウチのエディターはかなり勘がいいので当てますよ! どれくらい当たるか楽しみにしていてください。

Q5.さまざまなブランド・企業・お店などが、『VOGUE GIRL』と何か一緒に取り組みたい!と思うのではないでしょうか。こんな企画ならウェルカム!というものがあれば教えてください。

私たちは企画を練るのが好きなので、ざっくりと「これ、どうやったら売れる?」というクエスチョネアを募集しています。「企画書100本書きます!」とよく言いますが(笑)、企画書を書くのが好きなスタッフが集まっていますから、ご相談をお待ちしています。少人数ですが死ぬ気で頑張ります(笑)。クライアントと打ち合わせしながら企画やモノをイチから作っていけることがこの編集部の強みなので、「新しい商品はどうやったら響くかな」とか、一緒に相談しながらできると嬉しいですね。

Photo: Angelo Pennetta

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【VOGUE GIRL】

『VOGUE JAPAN』の増刊として、2011年3月に創刊し、2014年8月にリニューアル。"デジタル世代のトレンドエリートガールに送る新メディア"をテーマに、「マガジン」「デジタル」「メンバーシップ」で構成。春夏、秋冬のシーズン展開に合わせた、年2回、3月と8月に発行するマガジンは「ITガールのトレンドバイブル」として、ファッションからカルチャーまで、最先端のトレンドを全網羅。完全スマホ対応のウェブサイト「VOGUEGIRL.jp」は、ガールなNEWSを完全オリジナルで毎日更新。インターナショナルかつデジタル意識の高い20代のガールたちに向けて、様々なプラットフォームでオリジナルのスタイルを提唱していく総合メディア。http://voguegirl.jp/

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紙の編集とデジタルの編集の境界線がまったく存在しない女性ファッションメディアとなる『VOGUE GIRL』は、まだ我々が想像できない新しい体験をもたらしてくれることでしょう。その体験は、雑誌を手に取ったり、ウェブサイトにアクセスするときだけではなく、なにげなくSNSに触れている瞬間に、突如訪れるかもしれません。まずはインスタグラム、ツイッター、フェイスブックをフォローしておきましょう。楽しみですね!

[ 國枝 至 / DIGITAL BOARD ]

(2014年8月27日 DIGITAL BOARDより転載)