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旅行医学の視点で風疹をとらえる

2013年08月28日 00時41分 JST | 更新 2013年10月27日 18時12分 JST

いま、日本では風疹が爆発的に流行している。

では、皆さんは「よその国ではどうなのだろうか?」と考えたことがあるだろうか。

なんと、日本をとりまく東南アジア、安倍首相が進出すると言っているアフリカでは、風疹がふつうに流行している。

これは、WHO が公開している地図で、オレンジ色の部分が、国の定期予防接種プログラムに風疹ワクチンが含まれている国だ。そして、灰色の国々は、風疹ワクチンが実施されていない国を示している。

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(出典:http://www.who.int/immunization_monitoring/diseases/Rubella_map_schedule.jpg)

現在、海外に渡航する人は年間1800万人を超える。そして、その多くがアジア圏への渡航である。

それぞれの国における風疹患者数を年次別にグラフで示した。日本も入っている。なお、インドに関しては、風疹が少ないのではなく、患者数が把握されておらず、データがない(Indian Pediatrics: http://www.indianpediatrics.net/may2012/377.pdf)。もちろん、その他の国々も、医療へのアクセスが悪く、受診していない、もしくは診断されていない風疹患者は何倍もいるだろうが。ここに示す国々だけでも、年間700万人の日本人が渡航する。

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(出典:http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/departure_trends/index.html)

2013年は、日本の風疹患者数は1万人を超えているため、このグラフで中国に次いで2位という不名誉を被ることとなろう。とんでもない先進国である。

トラベルクリニックでは、さまざまな企業から、赴任者および帯同家族の予防接種の依頼を受ける。製造業では、工場のある東南アジアへの赴任が多い。しかし、企業から接種するよう指示があるのはA型肝炎や腸チフス、狂犬病などであり、風疹やおたふく、水痘といったワクチンについては、ケアされていない。

米国 Center for Disease Control and Prevention の Travelers' Health のページを示す。このサイトは、国別な必要なワクチンの種類や、現地で流行している感染症や、健康リスク情報が記載されており、私も常々チェックしている。

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(URL: http://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/clinician/extended_student/vietnam)

下の欄に Vaccines and Medicines とあり、最上段には Routine vaccines と書かれている。これは米国における Routine であり、MMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹混合)、水痘、3種(破傷風・ジフテリア・百日咳)混合、B型肝炎、ヒブ、肺炎球菌、不活化ポリオを指す。日本では Routine におたふくかぜ、水痘、B型肝炎は含まれておらず、そして23歳以上の男女とも、風疹の免疫が不十分である。繰り返すが、「子どもの頃に風疹にかかった」というのはアテにならない。風疹の免疫がある、と言えるのは、血液検査で抗体を有することが証明されている場合か、風疹ワクチンを2回接種した場合だけである。

トラベルクリニックでは「いやあ、友人は何もワクチン打たずに行ったけど、大丈夫でしたよ」とおっしゃる方にお会いする。私は「その友人は運が良かった。あなたは違うかも知れない。」と説明する。感染症は、どんなに気をつけていても、一定の確率で罹患するロシアンルーレットだ。そして、たとえばベトナムで風疹による脳炎に罹患した場合、日本と同じレベルの治療は受けられない。

世界中、どこの国に渡航するに際しても、世界的に標準とされる Routine vaccines を済ませておくべきだ。ちなみに、麻疹(はしか)も、成人のほとんどは1回しか予防接種を受けていない。世界的には2回の接種が必要とされており、不十分である。グローバル化する現代を無事に生き抜くには、麻疹風疹混合(MR)ワクチン接種は必須だ。