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参議院議員会館で気候変動をまじめに論じるちょっとした集まり

2017年08月12日 16時09分 JST | 更新 2017年08月12日 16時36分 JST

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先週の金曜日(8月4日)に参議院議員会館で非常に珍しいゼミがあった。日中韓、そしてアメリカ、中国、台湾などの間の深い協力に関心を持っている30人くらいがセミナー室で円卓式の討論を自由に論じた。

話題は今回、アメリカがパリ協定から離脱し、日本がどうやって実際に環境問題においてリードできるのかというものであったが、実際に日本と韓国、そして周辺の諸国には、アメリカが国際社会にリーダーシップを発揮しないこの危機の瞬間に、どう対応するのかが本来のメッセージであった。

先ず、私が簡単に自身と日本文化の縁を説明し、特にちょうど30年前に偶然にエドウィン・O・ライシャワー教授と3分程度、日米関係と知識人の責任についての対話した経験を明かした。近年、アメリカは、以前のように国際社会での役割をあまり演じていない事実を直視すべきだと言った。聴衆の皆さんに言ったことは、日本人がまだ意識していないかもしれないが、ある意味で今、環境問題においては、日本は中国とかドイツより有利であることを説いた。

最後に私が勇気ある日本人に期待していると言った。日本の武士道に深い感銘を受けたアメリカ人として考えるには、武士道は人殺しの道具ではなく、深い思想で、勇気を持ち、自身を犠牲にし、より大きな正義のために励む文化で、今は日本にはそのような勇気が絶対必要だと言った。

次に高杉暢也さん(元韓国富士ゼロックス会長)は、企業人として意見を述べた。

高杉さんは ご自分の経営経験をベースに次のようにコメントした。

世界的気象変動は誰しもが危惧するところである。21世紀の企業の 持続可能な開発 の鍵は企業の社会的責任(CSR)にあるといえる。すなわち、企業はすべてのステークホルダーに責任をもって経営をしなくてはならない。

地球環境や人間社会に大きな影響を与える気象変動に対しても企業は責任をもって経営する必要がある。2015年9月に国連総会においてSDGsが採択された。この目標をどのように実現していくかは、各国政府のみならずそれぞれの企業が対策を立てて実行していかなくてはならない。スローガンで終わるのでなく、実際にアクションをとることが必要である。

最後に中藤弘彦(アジア・インスティチュート日本連絡室代表)は、私と高杉元会長の日韓関係に関する発言を受け、日韓関係においては、日韓をそれぞれの立場から理解するという双方向的かつ複眼的思考の重要性を強調した。

発表が終わってからの活発な議論は、ある意味で興味深かった。普段は、同じ場に集まらない企業人、国会議員の秘書、研究者と技術専門家、環境や平和運動をしている人、そして高校生2人が参加した。

たとえば、平和運動をしている河中葉さんは、知識人と市民の対話を大切に思い、日本人社会において特徴的な、誰かが発言した場合の周りの人間のそれに対する解釈の仕方や社会に根付く階級意識、男尊女卑の意識について指摘した。

日本社会においては、たとえば、社会的に評価の高い人間が何か発言したとすると、周りの者たちは「なるほど、誰々さんの言うことは、やはり立派だ」と感心するのが常であるが、実際のところは周りの人たちは、その話の内容に対して深い関心を持っている訳ではない。

取り敢えず、発言した人間を立てるようなことを言って、その話題について深く考えるということはしない場合も多いらしい。気候変動の問題について日本人が真剣に考える機会を作っていき、自らの責任と役割についても自覚するためには、社会的弱者の意見に皆が耳を傾ける社会の土壌を早急に作っていく必要があると主張した。

真坂君と平林君は高校生は公演が終わってから最後まで活発に多くの人に質問をした。高杉元会長に私たち若い世代にどうして欲しいかという大胆な質問もしたのは、印象的であった。

奇しくも、この討論で日本が気候変動の解決にリードすべきという意見が述べられたのはちょうど安倍内閣のスキャンダルが重なり、それほど長期政権でない可能性が出てきたその日であった。何か多くの日本人の長い間の諦めからやや覚め、積極的に自信を持って動く雰囲気もあったように思われた。

最近右傾軍事大国化と全く違う方向に日本が少しずつ動き出すような気がした。たとえば、ちょうど同じ日に国連軍縮担当部門の中満泉国連事務次長が記者クラブでアメリカに歩調を合わせて、核兵器禁止条約の交渉に参加しない日本に対して「今後、核軍縮を主導して欲しい」とはっきり断言した。それに中満事務次長は、日本がうまく核軍縮に関連した対話には核保有国と非保有国から有識者を日本に招待し、核軍縮「賢人会議」を開くことができる唯一の国だと述べた。

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講演の原文:

「気候変動の危機と日本の役割」

エマニュエル・パストリッチ

ちょうど30年前の1987年8月にイエール大学を中国文学専攻で卒業し、日本へ留学に来ました。最初の1年間、アメリカの大学が共同で経営している日本語学校で日本語研修をしました。

ある日、日本史専門家のエドウィン・O・ライシャワー教授が私の通っていた学校に来て、激励の挨拶をされに訪れたことがありました。その当時の私はわがままな青年で、深く自分の社会に対する責任を考えていませんでした。そうしたこともあり、ライバルの大学であるハーバード大学におられるライシャワー教授に、さほど関心もありませんでした。そして、自分も11年後ハーバード大学の同じ学科で博士号を取るとは夢にも思わなかったのです。ライシャワー教授 が私に言ったのは、日本の古典文学に励みながらも、東アジアとアメリカとの地政学的な重要性を忘れず、日米関係において常に貢献すべきだとのことでした。

私は、今も忘れることなく、ライシャワー教授の言葉を覚えています。ライシャワー教授は、ハーバード大学の燕京研究所の所長を務め、多くの人に日本文化を紹介しました。それだけでなく、駐日アメリカ大使も務め、日米経済、安保、外交にも大きく貢献しました。他方、中国の歴史にも造詣が深く、また、韓国の歴史と韓国語についても論文を書かれました。

その当時の言葉の本当の意味は、10年が経ってから本当の意味が分かりました。その前は、私が東京大学の比較文学研究室で日本漢詩文学についての修士論文を書き、荻生徂徠、伊藤仁斎や本居宣長、日本の儒教と国学について幅広く研究し、日本と中国の小説を比較する論文も出しました。

そしてイリノイ大学とジョージワシントン大学で10年間、日本文学の教授をいたしました。アメリカの学生に日本の文化を紹介することは、たいへん光栄でもありました。

しかし、自身が思ったように事態が進まなかったのです。アメリカでは、一般市民の教育水準がひどく落ち、深刻な反知性主義的な傾向が生じて政策決定過程には知識人が参加できないようになり、教授自体も一つの労働あるいは商売となってしまい、知識人の社会的地位もひどく下がりました。大衆に迎合する感情的なポピュリズムが政治の主流となり、アメリカは長期的な戦略を持ちえない国になりました。一番恵まれている優れた大学で教育を受けたアメリカ人として日本の皆さんに対し、私の国の変化に関しては、たいへん申し訳ないです。

アメリカには、深刻な問題が多いのです。アメリカ人としてその事実を否定してはいけません。敢えて、日本人の理解を求めます。特に心配になっているのは、アメリカにおける科学との戦争です。トランプ政権が最近、劇的に教育と科学研究の予算を減らしていますが、それは長年の傾向の結果でもあります。恐ろしいことです。そして、日本人は、いつも科学研究において、より科学技術が進んでいるのはアメリカであると常に考え、安心して国際共同研究などはアメリカを中心としてきました。しかし、この勢いで行けば、近いうちにアメリカより日本は科学の中心になる可能性があり、アメリカの専門家が日本にやって来るというようなまさかのシナリオも十分に考えられます。

もっと心配になっているのは、気候変動を否定するアメリカの政府です。その科学的に証明された事実を否定する動きは、アメリカでは盛んです。反知性主義の顕著な例の一つですが、科学者の役割を軽視している傾向は顕著です。

最近は、トランプ政権がパリ協定の離脱を一方的に宣言し、アメリカ海外の環境保護に関する規制を緩和して最も大きい安保問題でもある気候変動に対して科学研究、開発技術、そして国際協力に対して疑問視し始め、アメリカがこれ以上、グローバル・リーダーシップを発揮することができないようになりました。

日本の役割

アメリカが、なぜこの状態になったのか、それを説明すると話しが長くなるので、日本のやるべき役割に集中しましょう

アメリカは、テロと北朝鮮のミサイル開発にだけ執着して、気候変動を否定することとなれば、どの国が環境政策と気候変動関連研究開発において模範国、リードする国になるでしょうか。

必要な経済力と技術力と規模を考え合わせば、それができる国はさほどありません。

ロシアは、石油輸出にあまりにも依存しているので、リードする可能性はありません。中国は、最近になって太陽光発電に相当投資していて新しい経済モデルを真剣に考えています。しかし、いろんな意味で中国には、未熟な点は未だに多く、国際協力に経験が浅いとも言えます。

ドイツもたいへん努力しています。評価すべきだし、ドイツもいろんな分野、特に科学で気候変動に関連した技術と政策に大きな役割を演じると思います。

しかし、冷静に考えてみれば、太陽光・風力エネルギーを迅速に開発し普及し、全ての建物をグレードアップさせ、断熱やその他の技術の効率性を改善できるよう大規模な資金を調達する必要を考えれば、やはり日本は一番有利です。中国は、安く太陽光パネルを生産できますが、産業の研究開発の場合は、日本が一番の経験者です。しかも、昔からの文化交流と経済援助を考えたら、21世紀経済中心となるアジアに対して、日本はドイツよりはるかに影響力とノウハウがあります。

特に金融の影響力に注目する必要があります。アメリカが気候変動に対する対策から全面的に撤退したら、世界銀行、地球環境基金(GEF)や緑の気候基金(GCF)においては日本が一番大きな支援国になるでしょう。

というのは、日本が世界をリードする機会があります。もちろん、それは日本人がそれを真剣にする意志と勇気があることによります。私が見るには日本人が十分その機会を掴む可能性があります。長く日米関係に深い関心をもっていた学者として、是非、そのようにするようにお願い申し上げます。

最後に徳川時代の歴史を長く研究した者として言います。日本の過去には持続可能な経済モデルを見つけることも可能です。

江戸という年代は18世紀に、世界で最も大きな都市であり、石炭やその他の化学燃料を使わなくても、大規模な経済の中心となった。伝説的な有機農法の効率性は、近世日本の経済繁栄の鍵でした。また、林業や環境保全のために幕府が長期的な政策を施行してきました。日本では、エコ的持続性は馴染みのない国ではありませんでした。日本が気候変更に対応しての緩和と適応に 関して世界をリードするには条件の一つはやはり日本文化の再発見も必要でしょう。

私が日本の文化を研究して素晴らしい武士道の伝統をある程度理解しました。自分も武士道に深い感銘を受けました。私が思うには、武士道の核心は勇気です。それに加えてその勇気は、必ずしも人を殺す勇気ではありません。却って、思い切って大事な決断をしたり、自身を犠牲にしてもっと大きな正義のために励む勇気は、日本文化のもっとも高貴な一部であります。

このような退廃的な時代にあってもその伝統を承継している日本人が必ずいると信じています。人数は、重要ではありません。