消滅した名門F1チームが復活をかけ一般に出資募集中

消滅していたかつての名門 F1 チーム ブラバム が、復活をかけクラウドファンディングサービス Indiegogo で資金を募っています。

消滅していたかつての名門 F1 チーム ブラバム が、復活をかけクラウドファンディングサービス Indiegogo で資金を募っています。Project Brabham と名付けられたこのキャンペーンでは出資者への見返りとして、レース中のテレメトリーデータへのアクセス権、インターネットを通じてプロレーシングドライバーまたはレースカーエンジニアになるために必要な知識を学べる e-ラーニング環境などを用意します。

ブラバムチームは、オーストラリア出身のレーシングドライバー ジャック・ブラバムが1961年に立ち上げた F1 チーム。ジャック・ブラバムは自らステアリングを握り、1966年にはドライバー/チームともにワールドチャンピオンに輝きました。オーナードライバーによるF1ワールドチャンピオンの獲得は、現在に至るまでジャック・ブラバムただ一人しか達成していません。

ジャック・ブラバムが1970年シーズンを最後にF1を引退し、オーナーも交代した後、一時的にチームは低迷しました。それでも80年代前半には持ち直し、ドライバーのネルソン・ピケが2度にわたりチャンピオンを獲得するなど、名門の名に恥じない成績を収めました。

このときのチームオーナーは、現在F1の興行を取り仕切るバーニー・エクレストン、チーフメカニックは現F1技術部門責任者のチャーリー・ホワイティングが務めていました。しかし、ピケが移籍し、エクレストンとホワイティングがチームを去った80年代後半からは参戦資金の不足が表面化。1992年のシーズンを最後にブラバムチームは消滅しました。

ジャック・ブラバムの息子であるデイビッド・ブラバムは昨年、チーム名の使用権をブラバム家に取り戻し、ブラバムチーム復活のための活動を始めました。デイビッド・ブラバムは「かつて父親が立ち上げ、名門と言われたブラバムチームの復活を夢見ていた」、「普通のレーシングチームとしてやるのではなく、新しいビジネスモデルでチームを復活させたい」としていました。

先日、Indiegogo でチーム復活のためのキャンペーン Project Brabham を開始したブラバムは、まずは2015年の世界耐久選手権(WEC)への参戦のため、目標出資額として25万ドルを掲げています。

Project Brabham の特徴は、出資への見返りとして Brabham-Digital というコミュニティサイトのメンバーになれるところ。Brabham-Digital は、Indiegogo での出資枠として Brabham-Fan、Brabham-Driver、Brabham-Engineer という3種類の項目を設け、それぞれに異なる特典を設定しました。

3項目の中で最も安価な25ポンドの枠 Brabham-Fan は、より深くレースを楽しみたいファン/マニア向けのサービス。レースウィークにはテレメトリーデータやピット内の映像、チーム無線、レース戦略内容などへのアクセス権が与えられます。またレース以外では、ファクトリーでのマシンの整備状況なども見られる予定です。さらに、たとえばドライバーの選定など、チームとしての意思決定の場でメンバーに投票権が与えられる可能性もあります。

75ポンドの枠となる Brabham-Driver は、レーシングドライバーを目指す人に向けたオンラインサービス。運転テクニックではなく、専門知識や、プロフェッショナルドライバーとして活動するために何をすべきかといったノウハウなどを習得することができます。

具体的には、マシンの構造や特性の理解、マシンセットアップの進め方、レースやテスト走行後のデブリーフィングに関する知識など。また、スポーツ心理学など勝つためのメンタルトレーニング、さらにフィジカルトレーニングのアドバイスなどもあります。

Brabham-Driver の内容はデイビッド・ブラバムが約10年前から行なっているプロドライバー育成事業「Brabham Performance Clinic」のオンライン版とも言えるもの。Brabham Performance Clinic 修了生のなかには、現F1ドライバーのマックス・チルトンや、9月に開催されたフォーミュラ E 選手権 北京 ePrix で表彰台に登ったサム・バードなどがいます。

最後の Brabham-Engineer は100ポンドの枠。レーシングカーエンジニアを養成するe-ラーニング環境です。エアロダイナミクス、流体力学から、サスペンションジオメトリー、ギヤボックスといった自動車工学分野を学べ、将来、ブラバムチームがオリジナルマシン製作に至った場合は、メンバーからのアイデアも広く取り入れることを検討しているとのこと。

また、CADソフトメーカーと提携してウェブアプリケーションにCAD機能を組み込む計画があり、有能なメンバーにはパーツ設計などを委ねる可能性もあるとしています。つまり将来的にはオンラインで学ぶだけでなく、メンバーがマシン開発に関わるチャンスがあるかもしれません。出資額は100ポンドです。

いずれの枠も、有効期間は3年間となっています。

さらに上を見上げれば、Brabham-Digital の全サービスへアクセスが可能となる125ポンドの FullAccess 枠、チームイベントの主要イベントに招待される 500ポンドの Founder 枠、1万ポンドのVIP枠などもあります。

ちなみに、Project Brabham は「Flexible Funding」という Indiegogo 独特のキャンペーンモデルを採用しています。クラウドファンディングといえば、通常は設定した目標出資額に到達しなければ、お金を受け取ることができません。しかし Flexible Funding では、目安としての目標額は設定するものの、締切までに目標に到達できなくても出資を受け取れる決まりになっています。

Project Brabham のキャンペーン期間は11月1日まで。すでに目標額の25万ポンドに対して16万5000ポンドが集まっています。なお、25万ポンドが集まればすぐにチームがレースに参戦できる体制が整うわけではありません。チームは段階的なストレッチゴールを設定しており、単純にクラウドファンディングだけで WEC に参戦する場合、最終的には800万ポンドが必要だとしています。

デイビッド・ブラバムは、この手法が上手く機能するようであれば、将来はF1やフォーミュラEといったカテゴリーへの進出に役立てたいとしています。

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