スティーブン・スピルバーグ監督が「VR技術は伝統的な映画作りを脅かす」と警告

VR技術においては、「お客がどちらを見るかを決められる」自由度と相性がいいゲームが映画よりも先行しています。

現在フランスで開催されているカンヌ国際映画祭にて、映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏が「VR技術は伝統的な映画製作にとって危険な進歩になるかもしれない」と警告を発しました。VR空間における視点の自由さと、従来の映画の「観客に何を見せるかは監督が決める」という矛盾を指摘したうえでの発言です。

監督を務めたディズニー映画『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』が上映されたこともあり、スピルバーグ氏はカンヌ映画祭に登場。基本的には「BFG」記者会見のための来訪ですが、この場でVRに関するコメントも発せられました。

スピルバーグ氏は、VRという新たなフォーマットが、映画監督の作品に対するコントロールを脅かすのではないかと指摘。この技術がもたらす視野の自由により「作り手が見せたいもの」より「観客が見たいもの」が優先されること。そして「全方位を見渡せて、どちらを見るか決められる世界に没入したとき、ストーリーが忘れられなければよいが」と懸念を述べています。

映画界とVR技術とはもっか距離を縮めつつあり、『ブレードランナー』などのリドリー・スコット監督もGear VR向けコンテンツ『The Martian VR Experience』にプロデューサーとして参加。『マダガスカル』などのエリック・ダーネル監督も、今年のカンヌ映画祭でVR映像の『1/8Invasion!』を上映しています。

当のスピルバーグ氏も、VRを題材にしたSF小説『Read Player One(邦訳:ゲームウォーズ)』劇場版の監督に決定しているほか、VRコンテンツを制作する会社The Virtual Reality Companyにアドバイザーとして迎えられています。そうした経験を踏まえた上での、重みのある発言なのでしょう。

VR技術においては、「お客がどちらを見るかを決められる」自由度と相性がいいゲームが映画よりも先行しています。スピルバーグ氏の映画『E.T』もゲーム化されたものの史上最悪の大失敗、大量のゲームカートリッジが廃棄物処理場に埋められた逸話がありました。それを掘り返したドキュメンタリー『ATARI GAME OVER』がVR映画化されても面白いかもしれません。

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