グラミー賞で注目。ビリー・アイリッシュが、体のラインが目立たない服を着る理由

若者のカリスマ、ビリー・アイリッシュ。オーバーサイズの服がトレードマークですが...
ビリー・アイリッシュ(2018年8月撮影)
ビリー・アイリッシュ(2018年8月撮影)
Michael Hickey via Getty Images

2020年のグラミー賞において、史上最年少で主要4部門全てにノミネートされたビリー・アイリッシュ。授賞式での初パフォーマンスにも注目が集まっている。

アイリッシュといえば、オーバーサイズの服や個性的な髪色、囁くようなハスキーボイスが特徴的だ。

特に、「バギースタイル」と呼ばれるビッグシルエットのファッションは、体のラインが強調されず、いわゆる「女性らしさ」を感じさせない現代的なスタイルと評価する声も多い。アイリッシュは、なぜオーバーサイズの服を着るのだろうか。

Burak Cingi via Getty Images

「痩せてるとか太ってるとか、知らなければ誰も何も言ってこない」

現在18歳、アメリカ・ロサンゼルス生まれのビリー・アイリッシュ。ストリーミングサービスから人気に火がつき、これまでに「Ocean Eyes」や「bad guy」などのヒット曲を発表している。

アイリッシュのトレードマークは、体のラインがわかりづらいオーバーサイズのストリート系ファッションだ。

ジェンダーにとらわれない装いだと支持を集めるが、本人は過去のインタビューなどで、そうしたファッションを好む理由について言及している。

2019年5月に公開されたカルバン・クラインのキャンペーン映像に出演した際には、「服の下が見えなければ、誰も意見を言えないでしょ?」「痩せてるとか太ってるとか、知らなければ誰も何も言ってこない」と語り、反響を呼んだ。

この言葉が表すように、若者のカリスマとして注目を集めるアイリッシュは、常に好奇の目に晒されている。

Twitterでは、胸元が開いたタンクトップを着るアイリッシュの写真がバイラルしたこともあった。

2019年9月に公開されたファッション誌ELLEのインタビューでは、そのことについて語り、自身の胸元に注目を集めないためにオーバーサイズの服を着ている、と明かしている。

「男友達とフェイスタイムをした時に、タンクトップを着てたんだけど、『シャツを着ろよ』と言われて。『着てるんだけど』って言い返したけど、胸が小さい人はタンクトップを着てもいいのに、胸が大きい私がタンクトップを着るとスラット・シェイミング(服装や性行動を自由に楽しむ女性を批判すること)されるなんておかしすぎる」

Instagramで、自身のファッションへの批判を「うんざりする」と一蹴したこともあった。

「普通の服装をしたらもっとホットになるのに。はいはい、もっとまともなコメントしたら?そういう言葉にはうんざりする」

“女性らしい服”を否定しているわけではない

本人の発言もあいまって、アイリッシュは「性的対象として見られること」や「女性らしく見られること」を否定していると受け止められ、賞賛されることも多い。

一方でアイリッシュは、そうした評価への違和感も口にしている。

ELLEのインタビューでは、「ビリー・アイリッシュみたいな格好をしない女の子をスラット・シェイミングしましょう、ということではない」と説明。自身と異なるテイストのファッションを否定しているわけではない、と強調した。

そして、「(18歳になったら)私は女性になるし、自分の体を見せたいとも思う。自分をセクシーに魅せるMVを撮りたいと言ったらどうする?」とも問いかけた。

セーラームーンのイラストがデザインされた服を着たことも。
セーラームーンのイラストがデザインされた服を着たことも。
Jon Kopaloff via Getty Images

「着たい服を好きに着ているだけ」

2019年8月に掲載されたファッション誌V MAGAZINEのインタビューでは、「ただ着たい服を着ているだけ」だと、その真意を説明している。

「私の服はどちらかというとフェミニンでもガーリーでもないけど、ただ着たい服を着ているだけ。オーバーサイズの服だからそれを着ている、というわけではなくて、着たい服を好きに着ているだけだから」

また、「私に対するポジティブな意見でさえスラット・シェイミングの要素がある」とも指摘した。

「たくさんの人が『アイリッシュは性的対象として見られることにノーと言っている』とか、『ステレオタイプな女性でいることにノーと言っている』と解釈してるけど...。

(中略)私の両親が口にするポジティブなコメントでさえ、スラット・シェイミングの要素があると思う。そうした意見は、『あなたが男の子みたいな服を着るおかげで、他の女の子も男の子みたいな服を着ることができるし、だらしない女に見えなくて済む』と言われているようにしか聞こえない」

Emma McIntyre via Getty Images

アイリッシュはこう続ける。

「私は、自分の服や体、肌の色や考えに自信を持っている女の子に対して、一度だって『気持ち悪い、肌を見せすぎ』とか『あんな服を着なければいいのに』と思ったことはない。人生で一度たりともない」

「私は、女性や男性や、世の中にいるすべての人に、自分の肌や体に心地よさを感じて、好きな格好をしてほしい。私と同じような服を着ない人を批判しながら、私をサポートする奇妙な世界は好きじゃない」

2019年のコーチェラ・フェスティバルでパフォーマンスを披露するビリー・アイリッシュ
2019年のコーチェラ・フェスティバルでパフォーマンスを披露するビリー・アイリッシュ
Timothy Norris via Getty Images

「好きな服を好きなように着る」

型にはめられることをはっきりと拒んだアイリッシュの言葉は、多くの人から共感を集めた。

世界中から注目を集めながら、自身のスタイルを貫く18歳のポップアイコンのこれからに期待したい。

注目記事