「ことでん」があの“令和ハプニング”をICカードにしちゃった。

令和の新元号が見えないイラスト。まさか採用されるとは…。デザイナーもびっくり。

香川県の鉄道会社、高松琴平電気鉄道(ことでん)が発売する新元号記念ICカードが「攻め過ぎ」と話題になっている。

新元号の発表会見で、菅官房長官が「令和」の額縁を掲げた。NHKが中継した際に、左上の手話通訳の画面と重なってしまい、元号が見えなくなってしまった「放送事故」を再現した。

公式サイトで4月10日にデザインを発表。「さすがことでん」と反響が広がっている。

話題のデザインは、こちら。

菅官房長官役となったマスコット「ことちゃん」が、新元号が書かれた額縁を掲げているのだが、画面と重なって、肝心の文字が見えなくなってしまっている。画面には、手話通訳役の妻ことみちゃん、日の丸国旗役として娘ことのちゃんも写り込んでおり、再現率の高い細部にもこだわったデザインになっている。

ちなみに、菅官房長官の会見を再現したいらすとやのデザインはこちら

菅官房長官の会見を再現したいらすとやのデザイン
菅官房長官の会見を再現したいらすとやのデザイン
いらすとや

デザイナーもびっくり「採用されるとは...」

ハフポスト日本版は4月12日、ことでんにデザインを採用した経緯などを聞いた。

ことでんの担当者によると、ICカード「IruCa」の新元号記念版として、デザイナーに「ことちゃんが、家族で新しい元号をお祝いする華々しいデザイン」を発注したところ、デザイン案の中に“放送事故版”が含まれていたとのこと。

“放送事故”のデザインにするかどうか、究極の選択を迫られた「ことでん」。会社で検討した結果、「一番インパクトがあるものにしよう」と採用に踏み切ったという。

「賛否があるのを覚悟しつつ、興味を持ってもらってどんな電車なのか乗りにきてもらえたら嬉しい」(担当者)と天に祈るような気持ちだったが、ネット上では「欲しい」「すごい存在感」「攻め過ぎ」などと好意的な反応が多数。「安心しました。多くの人に知ってもらうきっかけになった」とほっと一息ついていた。

担当者は「デザイナーも『採用されるとは...』と驚いていました」と苦笑い気味に明かした。

新元号記念IruCaは、5月3日午前9時半から、ことでん・瓦町駅の特設ブースで販売を開始。1枚2000円で800枚を発売する予定。

公式サイトでは、「新元号の発表の瞬間をデザインに致しました。発表早々のアクシデントではありましたが、これもまたひとつの記念だとモチーフと致しました」と紹介している。

ことでんとは

「ことでん」は、香川県高松市に本社を置く鉄道会社。正式社名は高松琴平電気鉄道という。

高松市の中心部や、仏生山温泉、「こんぴらさん」で知られる金刀比羅宮などをつなぐ地域の動脈として、年間約1300万人が利用している。

ただ、ずっと地域に愛されてきたかと言えば、実はそうでもないつらい歴史もあった。

高松市の中心である瓦町駅には、駅ビルに1997年に「コトデンそごう」がオープン。初日には8万6000人が詰めかける盛況さだったが、郊外型の大型商業施設のオープンで客足が遠のいたほか、そごう本体が2000年7月に経営破綻をしたあおりを受け経営が傾いた。

とうとう2001年1月、コトデンそごうは高松地裁に民事再生法の適用を申請。債務保証をしていた「ことでん」本体も連鎖的に経営破綻を余儀なくされた。

この時、利用者からの「ことでん」に対するイメージはさんざんなものだった。社には数千件の苦情が殺到した。

新しくなったことでんは、接客態度の研修をし、ダイヤも改定。忘年会などついつい夜が遅くなる時期には、終電も遅くした。

何もしなくても客が乗って当たり前、という状態から「乗っていただく」ための工夫を凝らした。

大人の事情で誕生した「ことちゃん」

そんななか、2002年に生まれたのが「ことちゃん」だった。

ペンギンに間違えられがちだが、この青い生き物は「イルカ」。「地域の足に、ことでんはいるか?」という問いかけからイルカのキャラクターを据え、常にこの問いかけを意識し、経営破綻からの再建を誓ったときの気持ちを忘れない、という思いが込められた。

ことちゃんは、実は妻子がいる。

恋人だったことみちゃんと2011年の開業100周年の日に、金刀比羅宮で結婚式を挙げた。

長女のことのちゃんは、2015年10月10日に誕生。ことのちゃんは普段は瓦町フラッグ2階のインフォメーションに座っている。

ことちゃんも時々、ことでんの電車内で座っていることがある。

2018年には、本物の線路を切り売りする「身を切る戦略」も好評を博した。

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