アニメ制作会社マッドハウスに労基署が是正勧告 「月393時間の労働」社員が過酷な労働環境訴える

『サマーウォーズ』など、数多くの人気作品を手がけてきたアニメ制作会社マッドハウス。残業代未払いなどで労基署から是正勧告を受けた。
記者会見を開いたマッドハウスの男性社員。
記者会見を開いたマッドハウスの男性社員。
HuffPost Japan

労使協定で定める上限を超えた時間外労働をさせ、残業代未払いがあったとして、アニメ制作会社「マッドハウス」が労働基準監督署から是正勧告を受けていたことがわかった。

違法な残業を強いられた同社の男性社員が申告し、違反が発覚した。男性と、男性が加入する労働組合「ブラック企業ユニオン」(代表:坂倉昇平さん)が5月17日、東京・霞が関の厚生労働省で記者会見を開いた。

同ユニオンによると、勧告は4月17日付。

マッドハウスでは、労使協定(「36協定」)の特別条項で月60時間までの時間外・休日労働を定めているが、労基署の調査で、少なくとも月100時間を超える時間外労働があったと認定された。

また、同社は月50時間分の時間外・休日労働の割増賃金を「固定残業代」として男性に支払っていたが、50時間を超えた分については一切支払っていなかったという。

「サマーウォーズ」などの人気アニメ手がけた制作会社

マッドハウスは日本テレビの子会社で、『サマーウォーズ』や『時をかける少女』、『カードキャプターさくら』などの人気アニメーション作品を手がけてきたアニメ制作会社。

男性は、同社でアニメ作品の制作スケジュールやスタッフなどを管理する「制作進行」の業務を担当しているという。

男性によると、入社後、新人研修を終えて制作部に配属された直後は月50時間を超える残業はなかったが、担当作品を持つようになると業務量が増加。

月の総労働時間は「最大で393時間だった」と話しており、過労で倒れることもあったという。その後男性は「心因反応」と診断され、2カ月にわたり治療を受けたという。

「いくらなんでも業務量が多すぎるし、長時間労働にもほどがある。これは違法でないかと思い始め、こんなに長時間働いたのに給料が一向に変動しないことにも疑問を感じ、ネットで固定残業代について自分で調べました」

「その結果、1時間あたりの時給単価が最低賃金を割っていることと、50時間を超過している残業代が支払われていないことに気づきました」

また、男性は職場内で暴言を吐かれるなどのパワーハラスメントがあったとも主張している。

「業務が一向に改善されず、残業代も適切に支払われない。先輩社員は年々辞めていく。こんなインパール作戦みたいな無茶なことを何年も何年もやっていては、自分はこの仕事は続けられない。本当にこのままでは困ると感じるようになりました」

男性は2019年3月、ブラック企業ユニオンに加入。未払い残業代の請求や長時間労働の改善などを求め、マッドハウスと団体交渉を行った。

ユニオンによると、団体交渉や是正勧告をふまえ、マッドハウスは過去2年分の未払い分の割増賃金を男性に支払うとしている。

同社はハフポスト日本版の取材に対し、「労働基準法の指摘に従い、適正に対処してまいります」とコメントした。

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