「政治家の皆さんは今、床屋に行けますか?」 休業要請の対象外となった理髪店。不安抱える店主から疑問の声

都内で理容店を営む女性は、「協力金が支給される休業要請の対象に追加してほしい」と訴えます。
理容店のイメージ写真
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京都は4月10日、休業要請の対象を発表した。理美容店は対象外となったが、不安の声も多い。

万が一感染者が出てしまうと、風評被害などの懸念もある。しかし、対象外となったことで、自主休業しても協力金は支給されない。都内で理容店を営む店主は、「協力金が支給される休業要請の対象に追加してほしい」と訴えた。

「なぜ『密接』を避けられない理容・美容業界が対象外なのか」

東京都は当初、理髪店も休業要請の対象としていた。しかし、政府は「国民の安定的な生活確保」のために必要なサービスだとして対象外とするよう都に求め、結果的に対象から除外された。

夫婦で理容店を営む江東区在住の女性は、ハフポスト日本版の取材に対し、「感染拡大を防ぐため要請を出すはずなのに、なぜ『密接』を避けられない理容・美容業界が対象から外されるのか」と疑問を口にする。

「もともと理容室では消毒、換気、マスクの着用は厳しく指定されていますが、この事態になってからより一層気をつけるようにしていました。お客さんが帰られた後に消毒を念入りに行って、窓やドアを開けて密閉を防ぐなどの対応をしていましたが、『3密』の『密接』に関してはどうしても避けられない業種です。なんとか顔を遠ざけるようにしても、どうしても接触はしてしまう。対象外にしないといけない理由が全くわかりません」

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「自主的に休業したら一律協力金」が望ましい

女性が営む理容店は住宅街の一角にあり、売り上げを支えるのは近所に住む常連客だという。小池都知事が外出自粛を要請した3月下旬から客足は一気に落ち込み、現在の1日あたりの来客数は1〜2人ほど。

休業要請が始まった4月11日は、昼時点で利用客は0だ。

感染が発生するなど万が一のケースを考えると、「本当は徹底的に休業したい」と述べる。しかし、休業要請の対象外となったため、休業しても都が創設予定の「感染拡大防止協力金」は支給されない。

政府は新型コロナウイルスで経済的なダメージを受けた中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円の「持続化給付金」を創設するとしているが、事態の収束が見通せない中、スピーディーな支給が求められている。

女性は、「小さな床屋は、協力金50万円があるだけでもなんとか見通しが立てられる」と述べる。

「とりあえず支給をしていただくのは、本当に助かります。住宅街にある店なので、報道されているような駆け込み客などもいないですし、売上は目に見えて激減しています。潤沢な資金があればとっくに自主休業しますが、補償がなければできないので。私たちのような理容店は日々の売上がそのまま生活費になるので、目の前の収入が減ると死活問題なんです」

「この業種に限らず、経営者によって状況は異なると思います。個人的には休業要請の対象に入れてほしいですし、自主的に休業したところには協力金を払うというかたちが一番いいんじゃないかと思います」

「政治家の皆さんは今、床屋に行けますか?」

不安を助長させるかのように、4月10日には、福岡県豊前市の美容院でクラスター(感染者集団)が発生したとみられると報道された

福岡県は「この一例をもって美容院の感染リスクが高いとは言えない」としているが、女性は「とうとう出たなと思いました」と本音を語る。

「もし自分の店でクラスターが発生したら、事態が収束したところで今までと同じように気持ちよく店を営むことはできなくなってしまうと思います。お客さんに来ていただけることにはすごく感謝したいのに、接客をすることに恐怖を感じます」

「接触することで自分も感染しないか、お客様に感染させてしまうのではないかと思って、精神的に負担を感じています。多くの店がその不安を抱えていることをわかってほしいです。政治家の皆さんに、今、町中の床屋にいけますか?と言いたいです」

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