木村花さん母、誹謗中傷した人に法的措置を検討 「法律の壁など、色々なハードルがある」【一問一答】

木村響子さんが自民党の誹謗中傷対策会議に出席。思いを語りました。
木村花さんの母・木村響子さん(中央)=8月6日午後、東京・永田町の同党本部
木村花さんの母・木村響子さん(中央)=8月6日午後、東京・永田町の同党本部
時事通信社

フジテレビ系のリアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんが、ネット上で誹謗中傷を受けた後に亡くなった問題で、花さんの母・響子さんが8月6日、花さんに誹謗中傷をした人に対して法的措置をとる考えであることを明かした。この日、響子さんは自民党本部で開かれた誹謗中傷対策を検討する会合に出席。その後、メディアの合同取材に応じた。

「法律の壁など、色々なハードルがある」

自民党は、木村花さんが亡くなったことを受け、「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム(PT)」を発足。座長は三原じゅん子参議院議員が務める。

PTは、発信者特定の高いハードルになっている「プロバイダー責任制限法」の見直しの他、誹謗中傷に対する刑事罰(侮辱罪など)の厳罰化などを求めている

木村響子さんは、6日に自民党本部で開かれた会合に出席。会合では、書き込みをした人の特定が困難であることなど、誹謗中傷を受けた人が被害を訴えるハードルが高くなっている現状を訴えたという。

「花はなぜ誹謗中傷されなければならなかったのかということを明確にするため、(加害者を)特定するために私は弁護士さんにお願いしている。その中で、いろんな壁、法律としての壁だったり、色々なハードルがあるということを素直にお話ししています」

また、花さんへの誹謗中傷の書き込みをした人に対しては、発信者を特定し、法的措置をとる考えだという。

「今のところ、誹謗中傷した加害者の方たちはすぐに証拠を削除して逃げられている。その逃げられている方々に対しては刑事でも民事でも責任が追及できるように、一生懸命動いていただいています」

質疑応答の最後には、SNSとの向き合い方について、「(書き込みをするときは)自分以外の人を傷つけることにならないか考えてほしい」と訴えた。

「SNSは人が幸せになるためのツールであるべきだと思っている。未来の健康的なSNSを作るのは、今のSNSを使う一人ひとりの心がけが本当に大切だと思うので、自分以外の人を傷つけることにならないか考えてほしいです」

響子さんの一問一答は以下の通り。

ーどういった思いでお話をされたのか

私も含め、家族もみんな悲しんで傷ついている。花がなんで私たちから奪われてしまったのかということを明確にしなければいけないという思いで(話した)。本来でしたら人前でお話できる心境ではないんですけれども、私も元プロレスラーだったので、現役時代の髪型とメイクをして、気持ちを強く入れ替えてきました。

誹謗中傷というのは、された人にしかわからない苦しみもありますし、残された私たちにしかわからない苦しみがある。私たちの苦しみを他人事と思わずに、ご自身の家族や友達、お子さん、お孫さんが花と同じような目にあったとしても、同じことが言えるのかということを思ってほしいです。

今回は私の素直な気持ちをお話させていただき、こういう場をいただいたことを三原先生に感謝したいです。

ー議員からはどんな話があったのか

議員の先生方は私の気持ちに寄り添っていただいて、一緒に怒ってくださったり、総務省や役人の方々に対しても厳しく責任を追及していただくとのご意見をたくさん言っていただきました。

ーフジテレビの報告書について、響子さんはどう感じたか

報告書といいますか、ただ単にフジテレビや制作サイドとしての言い訳が並べられたような、とても報告書としては本当に目を疑うような内容でした。疑問しかありません。

木村花さんと響子さん
木村花さんと響子さん
木村響子さん提供

「自分以外の人を傷つけることにならないか考えてほしい」

ー誹謗中傷した人に対して刑事罰を求めるか

今のところ、誹謗中傷した加害者の方たちはすぐに証拠を削除して逃げられている。その逃げられている方々に対しては刑事でも民事でも責任が追及できるように、一生懸命動いていただいています。

ー被害届、告訴状の届けは考えているか

今現在特定している段階。特定できてからできることがたくさんありますので、順番に一つずつ重ねている状態です。

ー木村さんは会合でどんなことを訴えられたか

花はなぜ誹謗中傷されなければならなかったのかということを明確にするため、(加害者を)特定するために私は弁護士さんにお願いしている。その中で、いろんな壁、法律としての壁だったり、色々なハードルがあるということを素直にお話ししています。

Twitter社が海外の会社なので追及が難しい状態になっています。SNSの教育、主にモラルとルールを徹底していただきたいというふうにお願いしました。

ー今もSNSの誹謗中傷は続いている。ネットを使う人に訴えたいことは

SNSは人が幸せになるためのツールであるべきだと思っている。未来の健康的なSNSを作るのは、今のSNSを使う一人ひとりの心がけが本当に大切だと思うので、自分以外の人を傷つけることにならないか考えてほしいです。

木村花さん
木村花さん
Etsuo Hara via Getty Images

被害者が「泣き寝入り」するケースが多い現状

ネットで誹謗中傷を受けたら、加害者を名誉毀損罪に問うほか、民事訴訟で損害賠償を請求できる。

しかし、ネット上の投稿の多くが匿名で発信者を特定できないため、法的措置をとるまでのハードルは非常に高い。

発信者を特定するためには、「プロバイダ責任制限法」の法律に基づき、以下2つのステップを踏まなければならない

①サイト管理者(Twitter、Facebook、Instagram、Googleなど)に対し、IPアドレスの開示を請求する。開示請求に応じない場合は「仮処分」の裁判手続きを行う。裁判所が開示命令を出すと、IPアドレスなどの情報が開示され、加害者が使用したプロバイダ(ソフトバンク、NTTドコモ、auなど)を特定できる。

②プロバイダに対して、契約者(書き込んだ本人)の情報開示を請求する。任意の開示請求に応じなければ、開示を求める裁判手続きが必要。

自民党のPTでは、このプロバイダ責任制限法が「被害者の『泣き寝入り』を招いている」として、情報開示要件や手続きの再検討など、法律の見直しを求める方針だ。

一方で、言論や表現の自由の観点から、法改正には慎重な対応が必須だ。

PTは、「表現の自由に対する過度の萎縮効果を防止しつつ、『被害者救済』と『表現の自由』という重要な権利・利益のバランスに配慮した実効性ある被害の回復のための手続のあり方を検討する」としている。

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