「女らしさ、男らしさ」の先にあったのは「LGBTQらしさ」の押し付けだった。中村 中さん、東京レインボープライドで語る

「らしさ」を押し付けられることの息苦しさ。トークライブで気持ちを語りました

4月25日に始まった「東京レインボープライド」のトークライブで、歌手・役者の中村 中さんが、LGBTQの人たちへの「らしさ」の押し付けに対する息苦しさを語った。

©︎TRP2020
©︎TRP2020

中村さんは、2006年にトランスジェンダーであることを公表した。

「男らしさ」や「女らしさ」を押し付けられるのが嫌で、自分らしさを探して生きようとしてきたのに、その先に別の「らしさ」の押し付けが待っていたと話す。

「私たち、男だったらこうあるべき、女だったらこうあるべきというのを押し付けられたくなくて、自分なりの生き方を模索した。でも、その延長線上に、ゲイらしく、ビアンらしくとか、ニューハーフらしくみたいなのが待っていたんですよね」

中村さんは、以前に居酒屋で言われた一言に強い居心地の悪さを感じたと振り返る。

カウンターで飲んでいると、隣に座ったお客さんが話しかけてきて、お酒をご馳走してくれた。

「話をしていくうちに、もしかしてあなたは元々男性ですかって聞かれたので、ああそうですって言ったら『なんだ早く行ってくださいよ、どんだけ~』って言われたんです」

中村さんはその言葉に、LGBTQの人たちに対する固定観念や偏見、らしさの押し付けを感じたという。

「その場は『どんだけでしょうね〜』って言って回避したんですが、LGBTQの人は面白く返せてなんぼとか思われているんだろうな、つまんなくてすみませんと思いました」

他にも、「ニューハーフの友達たくさんいるんですよ、だから大丈夫です」という言葉をかけられることもあり、そういう時にはさめざめとした気持ちになると語った。

<2019年の中村 中さんのライブ>

司会者のブルボンヌさんは中村さんの言葉に、「アライでいてくれることは嬉しいけれど、表現の仕方に違和感をもつ当事者はいますね」と、答えた。

ブルボンヌさんは、かつてゲイ雑誌の編集をしていた。「ゲイはマドンナやレディ・ガガが好き」という固定観念を持たれがちだが、編集するときはゲイの人たちも多様な好みがあるということを忘れないようにしていたと語った。

中村さんは「それぞれの好みですものね。好きな音楽聞いて、好きな服着て、好きなもの食べて、好きな人といればいいんですよね」と頷いた。

日本で最大級のLGBTQイベントである東京レインボープライドは、新型コロナウイルスの影響で、毎年行われている代々木公園でのイベントが2020年は中止になった。

しかし場所をオンラインに移し、25日、26日の2日間にわたってトークライブを配信している。26日には初のオンライン・パレードも開催される。

2020年、世界的に流行した新型コロナウイルスは、LGBTQコミュニティにも大きな影響を与えています。「東京レインボープライド」を始めとした各地のパレードはキャンセルや延期になり、仲間たちと会いに行っていた店も今や集まることができなくなりました。しかし、当事者やアライの発信は止まりません。場所はオンラインに移り、ライブ配信や新しい出会いが起きています。

「私たちはここにいる」――その声が消えることはありません。たとえ「いつもの場所」が無くなっても、SNSやビデオチャットでつながりあい、画面の向こうにいる相手に思いを馳せるはずです。私たちは、オンライン空間が虹色に染まるのを目にするでしょう。

「私たちはここにいる 2020」特集ページはこちら。

注目記事