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「震災と寄付」第2回 現役社会貢献担当だからわかる。"より良い企業寄付"のための指南

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全3回の連続コラム、第2回は、企業の寄付を考えたい。

筆者は研究員としてNPOやソーシャルビジネスについて調査研究を行っているが、同時に自社の社会貢献の担当としての役割も担っている。この双方の経験から感じる、「より良い企業寄付」のためのいくつかの方法をまとめてみたい。

◆「社長、そのお金、どこに寄付しますか?」


大震災発生から1週間。社長のあなたはテレビから見える惨状に胸を痛め、どこかに寄付をしたいと考えた。あるいは総務部長のあなたは、社会貢献担当のあなたは、自社の役員から"被災地支援に向け何らかアクションを考えよ"と命を受けた。さて、どうするだろうか。

おそらく最初に思いつくのは第1回で紹介した義援金による寄付だろう。例えば飲料メーカーのキリン・アサヒグループ・サントリーの各ホールディングスはそれぞれ一億円、三菱UFJ・三井住友・みずほの三大メガバンクもそれぞれ三千万円、NTTはグループ全体で五千万円などの義援金の拠出を発表した。トヨタ自動車は一千万円の義援金の拠出と、従業員から寄付を募りマッチングギフト(集まった金額と同額を会社が寄付を行うこと)を実施すると発表。

このように、大規模災害ともなれば、大手企業が数千万円単位で寄付することも珍しくない。(但し、プレスリリース上では直接の寄付先については公表していないケースが多数存在する)。

一方で義援金以外の寄付の方法を模索する動きもある。前回紹介した活動支援金への寄付がその一例だ。ここでは活動支援金に寄付する3つの方法を紹介したい。

◆数十万単位の寄付なら、まずは繋がりを探しながら個別団体への寄付を模索しよう。


一つは個別の団体への寄付だ。この際には、団体の専門性や被災地での活動状況をきちんと確認してから寄付することを勧めたい。罹災から時間が経過した今であれば、Facebook等のSNSや団体のウェブサイトに活動の様子が掲載されていることが多い。まずは活動内容を把握した上で、自社の業務領域などとの親和性や活動規模などを踏まえて寄付を決めればよい。

なお筆者が所属する組織では、従来から取り組んできた社会貢献活動「ソーシャルビジネス支援プログラム」の支援先の3団体への寄付を決めた(詳細はニュースリリース)。会社としては初めての支援金の拠出である。拠出を決められた理由は、団体との顔の見える関係が構築できていたこと、団体の専門性や「被災地にきちんと役立ててもらえる」という信頼感があったことが背景にあった。

個別団体に寄付をしたら、ぜひ活動の様子を知らせてもらったり、ウェブサイトをチェックしたりするなどして従業員に情報を還元しよう。なぜ寄付したのか、どう使われたのか、あなたの会社の従業員がその理由を知ることは、活動している団体にとっても喜ばしいことだ。なぜならば、「会社としての寄付や応援」を越えて、「社員一人ひとりの寄付や応援」を呼ぶ可能性を高めるからだ。また従業員にとっても、「寄付」という機会を通じて、社会に起こった大きな不幸に対して、会社がどのように対応したのか知ることは、会社の考え方やスタンスを知るひとつの機会になるだろう。

◆「知っている団体なんてない。」それならば"資金を届ける専門性"を持つ団体への寄付を。


そうは言っても、そうは上手く寄付したい適当な団体が見つからない。あるいは金額の規模が団体の活動規模に合わない。そういうケースもあるだろう。そうした際に考えたいのが、二つ目の方法、現場の団体へ資金を届ける"仲介・マッチング機能"を果たす組織への寄付だ。こうした団体は、数は少ないが専門性は高い。発信力が強く現場で活動する草の根組織にアウトリーチが出来る。前回紹介した日本財団や中央共同募金会の活動支援金への寄付も一案だろう。

◆それなりの規模がある。ならば冠プログラムを検討してみては?


寄付額や方法によっては、企業の名前を冠した寄付プログラムを作ることも考えられるだろう。こうした役割を担う組織は、例えば「全国コミュニティ財団協会」へ加盟するコミュニティ財団、企業の冠を冠した助成プログラムを複数運営しているNPO法人市民社会創造ファンドなどが挙げられる。

実際、市民社会創造ファンドでは東日本大震災の際に住友商事や大和証券などと協力したNPO向けの助成金を提供している。全国コミュニティ財団協会は、第1回で紹介したクラウドファンディング型の熊本支援に特化したサイトをオープンさせている。各地のコミュニティ財団は、企業の名前を冠したファンドを既に運用しており、その経験を活かした展開も可能だろう。

こうした組織の強みは、2つに集約される。一つは企業側の思いと被災地で活動する団体の現実とのバランスを取りながら、どのようにお金を使うべきか、共に戦略を考えるパートナーになり得ること。もうひとつは、小規模な団体に情報を届ける→選ぶ→フォローする、という3つのステップで専門性を発揮できること。多くのNPOは小規模だ。支援すべき先を探し、コミュニケーションすることは企業にとって大事な学びにはなるが、現実的には煩雑すぎ、戸惑うことも多い。そうした際に、こうした専門的な組織は頼りになる。

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◆災害時は情報過多。だからこそ日常的な繋がりを。


災害時には実に多くの団体が被災地支援に取り組む。それ自体はとても素晴らしいことだ。

しかしSNSの影響もあり、災害時の情報は過多状態だ。多いからこそわからない。社会貢献担当のあなたは、あるいは社長のあなたは何をすればいいか迷うだろう。そうした際、日常的に関係を結んでいるNPO等が存在しているか、専門的な団体を知っていて、いざという時に相談できるか否かの差は大きいと感じる。

義援金にせよ支援金にせよ、元をただせばあなたの会社の従業員が努力して得たお金である。大切な寄付、必要とあればパートナーとなる専門的な団体の知見も借りながら、効果的に使いたい。

(2016年6月14日「サーチ・ナウ | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング」より転載)