難民危機、国連は分析なら得意だが解決策がない

「罪のない女性たちや子供たちに国境を閉鎖するべきではありません

誰もが難民について意見を持っている――難民たちは自分の家の近くにとどまるべきだ。人間らしく取り扱われるべきだ。外国に定住する前に慎重に考えるべきだ。

国連のパン・ギムン事務総長は年1度の国連総会を開催し、難民・移民たちの苦境に焦点を絞ったサミットには193人の世界の大統領、総理大臣、外務大臣、王室関係者らが出席した。

現在世界約6500万人が移民や難民となっている。これは第2次世界大戦以来最大だ。子供を含む男性女性およそ7000 人が地中海の渡航を試みて溺死した。4人に1人の難民が、シリアでの空爆や混乱状態から逃れてきている(シリアでは9月19日、ダマスカスからの戦闘機が再び民間人らを空爆した)。

国連代表たちは25ページにわたるニューヨーク宣言を採択した。そこには難民・移民たちの逃避行の理由が書かれている。宣言では人権擁護を求め、すべての難民・移民の子供たちには到着後すぐに教育を受けさせるよう求めている。宣言はまた、大量の難民を救援・保護している国々への支援を求め、外国人への差別や排他行為と子供たちの拘留を強く非難している。

しかし、具体的な対応策は見送られ、毎年世界の難民人口の10%を新しい土地に定住させようというパン・ギムン事務総長の提案は国連メンバーによって否決された。9月21日、バラク・オバマ大統領は100万人の青少年たちの再定住と教育のために難民支援資金を45億ドル上積みすると表明した。

ワールドカップはもっと金がかかる

ドイツのゲルト・ミュラー開発大臣は、そんな金額は小さすぎ、難民への基本的なサービスを提供するには200億ドルが必要だと述べた。「砂漠の国カタールでのワールドカップなどは、おそらく200億ドルの費用がかかるだろう」とも言う。

アメリカはわずか1万人ばかりシリア人を受け入れると申し出ているが、ドイツはすでに100万人以上の家を失った難民を受け入れている。東欧の国々はゼロ、イギリスではEU離脱投票以来難民・移民に対する反感が相変わらず根強い。

イギリスのテレーザ・メイ新首相はある会合で、国連は移民の流入を止める義務があり、「各国が国境を管理して不法かつ野放し状態の移民の流れを減少させる義務を持つ」と述べた。

しかしヨルダンのゼイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官は明言を避けた。

フセイン高等弁務官は、あまりにも多くの国々で「人種を餌にした差別主義者たち」が「偏見と策略をばらまく」ことによって国の力を強めようとしていると語った。

我々が大きく失敗していることが理由でこのサミットが召集されたというのは厳しい真実だ。長い間ずっと苦しんでいるシリアの人々を救うこともできず、早いうちに戦争を終わらせておくこともできなかった。慢性的に抗争の続く地区に住む他の人々のことも同じ理由で助けることができずにいる。

我々が保護の手を差し伸べることができないばかりに、非道な犯罪の犠牲者たちがさらに苦しめられなければならないのは恥ずべきことだ。追い詰められた女性や男性や子供たちが犯罪者扱いされ、収容所に放り込まれるのはあまりにも忌まわしい。

ムラドとクルーニー

多くのスピーカーたちの中には、自身が難民という人もいた。ナディア・ムラド・バセー・タハさん(23)もその1人だ。彼女はIS(イスラム国)による少数派のヤジディ教徒大量殺害を免れた生存者だが、再び苦難が訪れている。

ムラドさんは現在ドイツ在住。彼女は9月16日、国連薬物犯罪局員、人身売買生存者の尊厳を求める親善大使に選ばれた。

ムラドさんは加害者たちに正義がくだされることを求め、彼らの犯罪がイスラム教とは関係がなく、奴隷・セックス・殺人に関わっていると明言した。

「世界にある国境は一つだけです。それは"人間性"と呼ばれています」と、ムラドさんは言う。「みなさんにお願いします。何よりも人間を最優先に考えてください。みなさんと、みなさんの家族だけが生きる価値があるのではありません。誰でも生きる価値があるのです」

「罪のない女性たちや子供たちに国境を閉鎖するべきではありません」と、ムラドさんは述べた。

9月16日と19日の両日、ムラドさんは彼女の弁護士で人権法廷弁護士のアマル・クルーニー氏に伴われていた。クルーニー氏はIS を法廷で裁く必要があると語った。「ISのメンバーは誰一人として、世界のどこにおいても、起訴された例がないのです」

この場にいることを名誉に思うと言うことができればよいのですが、そうは思っていません。国連の支持者として恥ずかしく思っています。国連の国々は、自国の利益の妨げになることに気がつくと、大量殺人を防ぐことも罰することもできないでいるのです。

弁護士として恥ずかしく思います。女性として恥ずかしく思います。

苦しんでいる人々の叫びを無視していることを人間として恥ずかしく思います。

ナディア・ムラド・バセー・タハさん(左)と、アマル・クルーニー弁護士

ハフポストUS版より翻訳しました。

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