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香川真司が輝いた日韓戦――ザックジャパン回想録 (元川悦子)

2014年02月08日 01時40分 JST | 更新 2014年04月09日 18時12分 JST

マンチェスター・ユナイテッドで苦しい時を過ごす香川真司。ザックジャパンでも好調が続いていたわけではない。むしろ彼の場合、苦しい試合の方が多かったかもしれない。そんな中でも輝いたのが2011年の日韓戦。得点も挙げて躍動し、3-0の完勝に貢献した。

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■「引かれることは間違いないですし、辛抱強くやるしかない」

2011年アジアカップの準決勝・韓国戦で右足第5中足骨を骨折し、10-11シーズンの後半を棒に振った香川真司。ボルシア・ドルトムント移籍1年目の彼は前半戦だけでリーグ戦8ゴールを挙げ、ドイツでの評価がうなぎ上りだっただけに、このケガは痛かった。

同シーズン最終節のフランクフルト戦でわずかにピッチに立ったものの、完全復活は次のシーズンまでお預けとなった。

そして迎えた2011年夏。香川はドルトムント2年目開幕直後に代表招集のため一時帰国し、8月10日の日韓戦に挑むことになった。韓国は、彼が負傷した因縁の相手。

「ケガのことは特に何とも思ってない。コンディションもアジアカップの時と今では特に差を感じません」と本人は至って淡々としていたが、「来月にはW杯予選も始まりますし、厳しい戦いになることは分かっています。予選前最後の試合ですから、勝って臨めるようにしたいです」といち早くアジアの真剣勝負に目を向けていた。

アジアカップでも引いた相手を崩しきれずに苦しんだ香川だけに、W杯予選では自分自身のパフォーマンスを少しでも引き上げたいという思いが強かったのだろう。

「アジアの試合では引かれることは間違いないですし、辛抱強くやるしかない。2~3点入るような簡単な試合にはならないし、つねに1点勝負だと思う。辛抱強くゲームを組み立ててやるしかないですね」

■ 「連動した攻撃も必要になってくると思います」

kagawa shinji 2011 japan korea

仕掛けの姿勢が重要と語った香川【写真:Getty Images】

「ゴール前や3分の1のところは仕掛ける姿勢を持つこと。リスクを冒すサッカーはどこが相手でもしなきゃいけないんで、そこの精度をもっと上げていかないといけないと思います。

お互いの距離感だったり相手を揺さぶるポジショニング、スペースを作り出す動きを考えていかないといけないし、連動した攻撃も必要になってくると思います。もちろん結果はつねに強く求めていくつもりです」とアジア相手に求められる前線の動きを香川は自分なりにイメージしていた。

2011年9月から迎えるであろう修羅場を乗り越えるためにも、アジア予選前に宿敵・韓国と腕試しできるのは非常にいい機会。香川も思い切ってプレーしようと気持ちを奮い立たせた。

その意欲が序盤から強く出て、日本は中盤を支配。彼と本田圭佑との連携もスムーズだった。いい流れの中から前半35分、香川は李忠成のヒールパスを受け、巧みに相手DFをかわして先制点をもぎ取る。

後半にも追加点を挙げる。本田のゴールで2-0でリードした後半10分、途中出場の清武弘嗣のグラウンダーのクロスを走りこんだ香川が右足で豪快にシュート。この3点目が決まり、日本は韓国を完膚なきまでに叩きのめすことに成功した。

■「パフォーマンスについては、自分自身の中で精神的な余裕があった」

kagawa shinji 2011 japan korea

この試合で香川は精神的な余裕を感じていた【写真:Getty Images】

「1点目はうまくゴール前に入り込んで落ち着いて決められたゴールですし、2点目もうまく入り込んで決めることができた。どっちもイメージ通りでしたし、いい流れでできたと思います。

韓国相手に3-0で勝てたのもよかった。欧州からの移動に関しては日本も韓国も条件は同じだったですけど、こっちがボールを回すとスペースができた。やっぱり相手も疲れがあったのかもしれないと思いますね。

僕自身のパフォーマンスについては、自分自身の中で精神的な余裕があった。これは今までになかった感覚だし、落ち着いてボールを蹴れました。そういう感覚はなかなかない。ブンデスリーガが開幕して体のキレもよかったし、前半から体が動いていた。

この半年間、いろいろ考えたし、復帰してクラブのキャンプでいい準備ができた結果だと思います。今回2点を取ったことは評価できますけど、あくまで親善試合だし、大事なのは来月以降(アジア予選)、結果を残せるかどうかですね」と韓国戦で初めてゴールを挙げた喜びをのぞかせつつも、慎重な姿勢は崩さなかった。

代表からの8ヶ月間のブランクをすぐに埋めることができたのも、この日韓戦の大きな収穫だろう。最終的にはチームを離れたものの、アジアカップで1ヶ月間、本田や岡崎慎司、遠藤保仁らと日々練習や試合をこなしてコンビネーションを磨いてきたから。その蓄積は日韓戦のゴールとなって表れた。

■「相手のプレッシャーがなく、守備が連動していなかったのも大きい」

「ヤットさんも前を見て当ててくれるし、圭佑君もキープ力があってボールが収まるので、お互いの感覚やイメージが共有できていました。サイドバックが上がるタイミングだったり、1トップに入った後のタイミングだったり、全てのタイミングが合っていた。相手のプレッシャーがなく、守備が連動していなかったのも大きかったですね。

でもW杯ではそんな簡単にはいかないでしょうし、今日の出来は参考にならない。厳しい相手とやる時はどうなるか分からない。W杯予選も前回ちょっと経験してますけど、やっぱり厳しいのは過去の歴史を見ても分かることですから」

kagawa shinji 2011 japan korea

香川真司・本田圭佑【写真:Getty Images】

この言葉通り、香川は9月から始まるブラジルW杯予選で予想以上に苦しむことになる。8月末に本田が右膝半月板損傷で長期離脱を強いられ、ザックジャパンの攻撃の軸がなくなってしまうからだ。

香川は苦しんだ。タメを作るタイプの本田が不在で、彼の良さが活きなくなったからだ。ドルトムントでの活躍とは一変、得点が思うように奪えず、険しい表情をすることが多くなった。

もし本田がケガをせず、香川と同じピッチでコンスタントにプレーできていたら、日本の攻撃のバリエーションはより多彩になっていたかもしれない。2011年8月の日韓戦はそんな欲を持たせてしまうほどの成功だった。

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(2014年2月8日「ザックジャパン回想録。香川真司が輝いた日韓戦」)

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