本田圭佑はなぜ右で輝けないのか? 求められるチャレンジする勇気

ブーイングの中、ピッチを後にした本田圭佑。得意とするトップ下ではないとはいえ、パフォーマンスは悪かった。なぜ右サイドで彼は活きないのか。チーム状態にも問題があるが、その要因の多くは本田自身にある。

ブーイングの中、ピッチを後にした本田圭佑。得意とするトップ下ではないとはいえ、パフォーマンスは悪かった。なぜ右サイドで彼は活きないのか。チーム状態にも問題があるが、その要因の多くは本田自身にある。

■印象悪かったセーフティなボールキープ

待っていたのは、激しいブーイングだった。アップをしていたパッツィーニが呼ばれ、交代を示されたのは10番。本田は、スタンド中に響く怒号と指笛のなかでグラウンドを後にした。

ミラニスタもインテリスタも、基本的にサン・シーロの観客は厳しい。イタリアの明日を担う若手の一人エル・シャラウィ(現在は故障で戦線離脱中)だって、コンスタントに結果が出るまでは結構なブーイングにさらされてきた。まあ、選手なら誰もが通る道である。

問題は、どういうところが不満に映ったのかということだ。ボローニャ戦の本田については、早くボールを動かし、チャンスを作ろうとしていなかったことが彼らの不満に繋がっていた。ボールを保持し、パスコースがないと判断すればキープをし、セーフティなポジションにいる選手に渡す。そこで、前半からブーイングにさらされた。

ロストは避けたのに厳しいのではないか、という印象もしたのだが、これが2回、3回と続くと、確かにフラストレーションが募る。チャンスを作れないことをファンは問題にし、翌日のメディアでも「本田は悲惨」(トゥットスポルト)と批判の大合唱、負け試合の戦犯と同然の評点が付けられていた。

■デッドポジションとなった右サイド

もっとも精彩を欠いた要因は、本田一人の責任ではない。パス交換を通して彼がフリーになり、前を向けるようにするために、適正な戦術の整備が行われていない面があった。

選手は足元ばかりにパスを要求する一方で、距離を近づけたりスペースに流れたりすることはなく、パス回しは停滞した。

これが同じポゼッション志向のイタリア代表であれば、パス・アンド・ゴーの動きが個々に徹底され、後方からの組み立てで効率的に相手が押し広げられるよう整備もされている。だがミランのセードルフ監督は現状、そこまでチームを作りきれていない。

「クオリティのある選手をなるべく置きたい。2列目の3人は全員が『トップ下』というふうに考えてもらいたい」と監督はこだわりを見せるが、活かすには前提条件がいるのだ。

一方で前々回のトリノ、そしてこの日のボローニャと、相手が5バック気味に引いてスペースを消すようになると、ゾーンの間にパスを回すことも出来なくなった。

そういうわけで、右サイドの本田はデッドポジションとなった。彼の周りでスペースに抜けてくれるのは、オーバーラップを仕掛けるデ・シリオだけ。

3度の決定機に絡んだカリアリ戦のように、外から中に絞る動きを味方が意識してパスを付けてくれれば、サイドでも活きることが出来る。だがガチガチに引きこもるボローニャを前に、それは難しかった。

■足りない仕掛けの意識

そういう状況の中では結局単独で突破し、ボールを運べるターラブのような選手がサイドとしては活きる。タイプの違う本田にとって、現状は不憫だ。ただしボローニャ戦ではスペースがあり、前を向いてボールを保持出来たときにも、決して良いプレーは出来ていなかった。

例えば、ブーイングを呼んだ後半の7分。

本田は前を向いてボールを保持したにも関わらず、フリーでサイドに流れたカカーやデ・シリオにも叩かず、かといって彼らをおとりに使い空いたスペースに仕掛けることもなく、バロテッリとのワンツーも狙わずにボールをこね、時間を使った末に近場の選手にバックパス。攻撃的な選手としては消極的なプレーの選択だった。

後半の頭に、右サイドで再三フェイントを掛けたシーンもそう。ロストはしなかったものの、シュートやクロスで完結出来ていない。例えばこれが同じ左利きであるインテルのアルバレスなら、マーカーを空転させクロスに到達しているところだ。スピードで勝負が出来ないのならば、キレと間合いで勝負をするしかない。だがそういった仕掛けも足りなかった。

■右足も磨くべき理由

また本田はこの日、右足で2度クロスを上げている。利き足ではないが、この精度ももっと追求して欲しいところだ。もはやどの相手も左足でのカットインを警戒し、ゴールへと向かせない守備をするようになった。

両足を同様に使えるエルナネスを例に出すのは極端にしても、右でのプレーも磨かなければ選択肢を狭まれる事になる。これは、ポジションをサイドからトップ下に移してもつきまとう問題だろう。

この試合、本田のボールロストでピンチを招くシーンはなかったし、ミスパスもなかった。だが1対1でチャレンジをするという姿勢も、前回出場したトリノ戦に比べても減っていた。

攻撃のポジションでリスクを冒さなければ、客からブーイングを浴びても仕方がない。カカーも不調でロストは多かったが、チャレンジするべき場面でミスの恐怖から逃げてはいなかったという見方も出来るかもしれない。

「与えられたポジションでベストを尽くす」

一般的に新入団選手はこう口にするが、監督や周囲の選手の信頼を得る上ではやはり基本だ。今のミランというチームが本田の能力や特性を活かす方向に回っていないのかもしれないが、その中でもやれること、出来ることを追求し、信頼を勝ち取って行って欲しいものである。

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(2014年2月16日フットボールチャンネル「本田はなぜ右で輝けないのか? 求められるチャレンジする勇気」より転載)

AC Milan v Bologna FC - Serie A

2014/02/14 ボローニャ戦の本田圭佑

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