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「人口爆発」の時代に突入するアフリカ

2015年08月14日 23時09分 JST | 更新 2016年08月12日 18時12分 JST

7月に仕事でウガンダへ行ってきた。東アフリカの経済拠点国ケニアの西側に位置する内陸国で、国土面積は24万1550平方キロメートルと、英国よりやや狭い。アフリカ最大の湖であるビクトリア湖をはじめとする湖沼が数多く存在し、世界最長河川のナイル川も国内を流れているので、実際に人間が暮らすことのできる土地は、これよりもさらに狭い。

ウガンダを訪れるのは2004年以来、実に11年ぶりだったが、その変化に驚いた。過去10年の経済成長によって、首都カンパラに立つビルも、携帯電話の看板も、街を走る車も飛躍的に増加していた。だが、何より印象的だったのは、人の多さだった。11年前と比べて何よりも増えたのはヒト、というのが最も強く感じたことであった。

私たち日本人は、アフリカ大陸の国と言うと、広大な敷地に人がまばらに暮らしている様子を思い浮かべてきた。しかし今、アフリカでは、私たちがアフリカに対して抱いている一般的な印象とは真逆の事態が起きている。人口爆発である。筆者が訪れたウガンダは、この人口爆発の最前線とも言える国だ。

21世紀終盤まで続く「人口ボーナス期」

国連は7月29日、2012年の前回公表以来3年ぶりに「世界人口予測」を公表した。アフリカの人口爆発をウガンダで目撃してきたばかりの筆者は、公表後の数日間、無味乾燥な数値が羅列された表を、朝から晩まで眺めていた。

その結果として感じたことの1つは、今の幼児や小学生の世代が成人し、40代~60代の年齢に達して社会の中核を占めるころには、世界の国々の力関係は相当に変容しているのではないか、ということである。

なお、国連は今回の人口予測に当たり、最も急激に人口が増加した場合と、人口の伸びが最も緩やかであった場合の2つの予測値を推計し、その中間値も含めた3つのシナリオを公表している。以下、本論で用いる数値はすべて中間値である。

今回の人口予測によると、2015年7月1日現在の世界人口は73億4947万人で、このうちサハラ砂漠以南アフリカ(サブサハラ・アフリカ)の人口は9億6229万人だった。世界人口に占める比率は13.1%だから、おおよそ全人類の7~8人に1人はサブサハラ・アフリカの住人ということになる。

注目すべきは人口増加の速度、すなわち人口増加率だ。2010~2015年の世界人口の増加率は年平均1.18%だった。こうした中、サブサハラ・アフリカは2.71%に達しており、世界の地域別では群を抜いて高い(アジア1.04%、欧州0.08%、ラテンアメリカ1.12%、北米0.78%など)。国別にみると、筆者が訪れたばかりのウガンダの増加率は3.27%。西アフリカのニジェールに至っては4.0%にも達する。

さらに、年齢別の人口構成をみていくと、世界の中でサブサハラ・アフリカだけは、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)増加率が人口増加率を上回る「人口ボーナス期」が21世紀終盤まで続く。筆者が計算してみたところ、サブサハラ・アフリカは2080年代まで人口ボーナス期が続く見通しだった。世界各国が高齢化していく中で、ほとんどサブサハラ・アフリカの国々だけが、今後70年近くに亘って若年人口主体の人口構成比を維持し続ける見通しなのだ。

近代日本を遥かに上回る増加率

この結果、国連は将来の世界人口動態を次のように予測する。まず、今から35年後の2050年の世界人口は97億2515万人で、このうち21.8%に当たる21億2323万人は、サブサハラ・アフリカの住人になるという。つまり、人類の5人に1人はアフリカのサハラ砂漠以南に住んでいるのである。

さらに85年後の2100年には、世界人口は112億1332万人に達し、このうち39億3483万人はサブサハラ・アフリカが占める。全人口に占める割合は35.1%。端的に言って、人類の実に3人に1人はアフリカ人ということだ。

国別でみていくと、サブサハラ・アフリカ最大の人口大国ナイジェリアは2015年現在1億8220万人の人口を擁している。これが2050年には3億9851万人に達し、米国などを抜いてインド、中国に次ぐ世界第3位に躍り出る。そしてナイジェリアの人口は、2100年には7億5225万人に達する見込みだ。

筆者が訪れたウガンダは2015年現在3903万人で、日本の人口の3分の1に満たない。だが、筆者が前回ウガンダを訪れた2004年の同国の総人口は2711万人であった。11年ぶりの再訪で、とにかく人の多さに強い印象を受けたのは当然だ。わずか11年で、東京都の人口に近い1200万人も人口が増えていたのである。

そしてウガンダの人口は今後も先述したとおりの高い率で増え続け、2050年には1億187万人になり、同年の日本の予想人口1億741万人にほぼ肩を並べる見通しだ。

すさまじいのはナイジェリアの北側に位置するニジェールである。同国は2015年現在、日本のほぼ3.4倍の広さの国土に1990万人が住んでいるに過ぎない。だが、先述した年率4.0%の速度で人口が増え続けた結果、85年後の2100年には2億933万人に達するとみられている。

これがどれほど凄まじい人口増加であるかは、次のように考えれば分かりやすいかもしれない。1868年の明治維新の年、日本の総人口は約3400万人だったと推定されている。それから87年後の1955年の総人口は約9000万人であった。近代日本の人口増加は世界的に見ても相当な規模と速度であったことが知られているが、それでも87年間の人口増加は2.65倍だったわけである。それがニジェールの場合、ほぼ同じ長さの85年間に人口が10倍以上になるのである。

国連の予測によれば、2100年には世界の人口上位10カ国のうち5カ国(ナイジェリア、コンゴ民主共和国、タンザニア、エチオピア、ニジェール)がサブサハラの国になるのだ。アフリカは今、人類史上空前の人口爆発の時代に突入しつつある。

少子高齢化の日本は......

一方、周知のとおり、日本は既に著しい人口減少と、少子高齢化の時代を迎えている。そしてこの傾向は、今後ますます進む。

日本の人口は2011年から減少に転じており、2015年現在1億2657万人で、世界で11位の座を占めている。人口は今後も減少を続け、2050年には先述したとおり1億741万人にまで減少する。減少人口数は1916万人。今年生まれた赤ちゃんが35歳を迎えるまでに、現在の東京都と千葉県の全人口を合計したくらいの人間が、日本からいなくなるのである。

そして今年生まれた子供が天寿に近づく2100年には、日本の総人口は8318万人にまで減少し、人口規模は世界30位になる見通しだ。

日本は2015年時点で既に、国民の平均年齢が46.5歳と世界一高い国家であり、2030年には51.5歳に達する。60歳以上の人が総人口に占める割合は、2015年時点で33.1%と3人に1人を占め、これが2050年には42.5%に上がる。

高度成長期の日本を含むかつてのアジアは「人口ボーナス」の期間に労働集約型産業を成立させて生産年齢人口に十分な雇用機会を提供することにより、目覚ましい経済成長と完全雇用を実現した。他方、現代のアフリカは労働生産性が低く、アジアに存在した「安くて豊富な労働力」が存在しない。現状は人口ボーナスを十分に生かせる社会・経済構造ではなく、経済成長が雇用機会の創出につながっているとは言い難い。

今後、長期にわたって生産年齢人口が増大し続けるアフリカが人口ボーナスを存分に活かすことができれば、持続的な成長が期待できるかもしれない。だが、失敗すれば、空前の規模の大量失業によって社会が不安定化する可能性があるだろう。

一方、人口減と高齢化の進む日本は、国内市場の急速な縮小や社会保障費増大に伴う財政問題に直面するだろう。直面する問題こそ違うものの、遠く離れたアフリカと日本がともに重大な岐路に立たされていることが、数字の羅列から見えてくる。(白戸圭一)

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白戸圭一

三井物産戦略研究所国際情報部 中東・アフリカ室主席研究員。京都大学大学院客員准教授。1970年埼玉県生れ。95年立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。同年毎日新聞社入社。鹿児島支局、福岡総局、外信部を経て、2004年から08年までヨハネスブルク特派員。ワシントン特派員を最後に2014年3月末で退社。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞)、共著に『新生南アフリカと日本』『南アフリカと民主化』(ともに勁草書房)など。

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(2015年8月13日フォーサイトより転載)