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協調減産「OPEC総会」共同会見「サウジ」「ロシア」の重要コメント--岩瀬昇

51分強の動画を通して見ると、ノヴァクの渋面の理由が分かる(気がした)。

2017年12月06日 16時19分 JST | 更新 2017年12月06日 16時19分 JST

12月2日の拙稿「OPEC・非OPEC『協調減産』1年延長にロシアは従うか」の冒頭で、編集部が採用した共同記者会見の写真について、筆者はフェイスブックにて「ロシアのノヴァク・エネルギー相はなぜこんな顔をしているのだろうか?」という疑問を提示しておいた。その「ノヴァク渋面」の理由が分かった気がするので、次のとおり報告しておきたい。ついでに、ではなく、こちらが本筋だが、共同記者会見の主な内容についても報告しておこう。

「渋面」の理由

遠出から戻った12月3日の夜、OPEC(石油輸出国機構)のホームページをチェックしてみたら、新しいプレスリリースがいくつか掲載されていた。

通常発表される総会終了後のコミュニケは無かったが、総括的な「報告記事」が発表されている。だが、特段新しいことはない。

それよりも興味深いのは、動画としてアップされている共同記者会見だ。サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相とロシアのノヴァク・エネルギー相が並んでコメントし、記者からの質問に答えている。

51分強の動画を通して見ると、ノヴァクの渋面の理由が分かる(気がした)。

おそらくファリハの冒頭コメントを、ヘッドフォーンを通じてロシア語同時通訳で聞いていて、分かりにくい同時通訳の言葉を必死に追っているのだ(ろう)。動画全編を見ていると、本心を顔に表さない優秀な官僚としての側面(?)も伝わってくるが、それ以上に同時通訳の「能力」に問題があったのではなかろうか。なぜなら、英語で行われた記者からの質問(『タス通信』の女性記者だけがロシア語だった)には、別の通訳がいて、これを聞いているノヴァクの顔は「渋面」ではなかったからだ。

ちなみにOPECでの「公用語」は「英語」とOPEC憲章第6章に規定されている。ノヴァクはOPEC加盟国の代表ではないので、英語を使用しなくても可とされたのであろう。本当に英語ができないのかどうかは分からないが。

産油国全部が一致して目標達成を

共同記者会見51分強のうち、冒頭でファリハが13分、ノヴァクが5分(通訳の時間を入れて10分)コメントし、その後質疑に28分間が割かれていた。ファリハはいっさい原稿を持たず、ノヴァクも時々メモに目を落とすだけで、滔々とコメントしているのが印象的だ。

質問をしたのは、クルディスタン・イラクのTV局、『CNN』、『タス通信』、『ブルームバーグ』、『ロイター』のメディア各社と、投資銀行『J.P.Morgan』の6人。

会見場には中国人風、日本人風メディアと見える人が2人ずつほど、スクリーンが設えられた別室にも日本人風が2人ほどいたようだが、質問する(指名される)ことはなかった。

冒頭コメントおよびQ&Aで興味深かったのは、次の諸点だ。

(1)現状認識と今回決議の理由

これについては、ファリハが長々と説明していた。

生産者のみならず消費者にも利するよう、また石油をめぐる状況を安定したものにするように、リバランスを目指している。在庫水準をノーマルなものにすることが当座の目標(target)。これまで減産協定の枠外であったリビアとナイジェリアも、2018年生産量を2017年以下にすることを書面で合意している。

また、オブザーバーとして非OPEC産油国で「協力宣言」には参加していない6カ国が参加し、今回の決議を支持(endorse)すべく、オブザーバーとして調印している(筆者がチェックしたところ次の7カ国のようなのだが、未確認。コンゴ、チャド、ボリビア、エジプト、ウガンダ、トルクメニスタン、ウズベキスタン)。つまりは産油国約30カ国(OPEC12カ国、非OPEC調印国10カ国、オブザーバー非OPEC産油国6カ国ら)が一致して目標達成を目指そう、ということだ。

さらに組織的に機能するフレームワークを策定すべく、事務局が作業を開始している。からみあっている短期、中期、長期の展望を念頭に対処していくことが大事。資本投資を早急に再開することが望ましい。需要の伸び(日量150万バレル/年)への対応のみならず、成熟した油田は自然減退するものだから、これもカバーするための供給源確保が重要だ。

ロシアも共通の目標を目指す

(2)政治的、経済的観点からもっとも適切な(optimal)石油価格は?

ファリハいわく、「価格は政治的に決定されるものではなく、市場が決めるもの。需給バランスが市場価格を動かしている。需要の伸びに供給が追いつかなくなる時期が来るだろう。もちろん技術革新などによってコストカーブも動いており、需給がバランスするときの価格は誰にも分からない。いずれにせよ(冗談めいて)私が決めるのではなく、市場が決める」

(3)価格が上昇すると、「協力宣言」に参加していない非OPEC産油国の生産が増加するというジレンマについて(『CNN』記者が「シェール」の言葉を使わずに質問)

ファリハは、価格動向は市場に委ねている、とし、さらに在庫動向が重要ファクターだ、シェールの増産には限界がある、年間300~500万バレル(日量)の自然減退(北海、メキシコ、中国、一部のOPECなど)の補充、および150万バレル(同)程度の新規需要増をすべてはカバーできない、毎週、毎月、毎四半期の動きにオーバーリアクト(過剰反応)すべきではない、我々はシェールの長期的な持続可能なトレンドを注視している、と回答。

(4)ロシアがOPECを指示(dictate)しているように見えるが、サウジとロシアの関係はさらに強化されるのか?(これも『CNN』の質問)

ファリハは、どこの国との関係でも同様に、我々は情報を共有し、議論し、お互いを理解しあっている。もちろん、ロシアとは異なる点が多々ある。彼らには複数の石油会社があり、経済構造も異なり、為替問題も同じではない。だが、在庫を減少させ、リバランス達成を目指すという長期目標ではOPECと一致している、と回答し、(再び冗談めいて)「彼が自分に指示しているのかどうかを含め聞いてみよう」とノヴァクの発言を促した。

ノヴァクはもう一度質問を繰り返させ、同時通訳を聞いてから次のように回答した。

「何度も同じ回答をしているが、我々はさまざまな局面であらゆる問題を建設的に協議している。(若干微笑みつつ)今朝、この会場に我々が別々の車でやって来たことで、両国が争っていると報道しているところがあるのを見て驚いた。我々は多くの問題について協議している。価格は需要や供給の伸び(growth)など多くの要因で決まるものであり、我々はフレキシブルだ。いずれにせよ共通の目標(common goal)を目指している」

「触媒」となるサウジアラビア

(5)東洋人風の女性『タス通信』記者が、ロシア語でノヴァクに質問。減産措置を継続するかどうかは来年早々に決める、と言っていたが、なぜ変わったのか? また、すべてのロシアの石油会社(国営石油会社以外を指すものと思われる)は同じ船に乗っているのか(on the same boat)?

ノヴァクいわく、「1月と今とではせいぜい1カ月の差だ。OPECとは年に2回、大臣級会合が予定されているので、この機会にやるのが適切だ。また、ロシアの石油会社のCEO(最高経営責任者)たちとは多くの問題について普段から議論を重ねており、問題意識を共有している。今回の会議参加前にも、彼らと十分に協議をしてきた。われわれは合致した立場(unified position)に立っていることを確認する」

(6)サウジは2018年も2017年同様、リーダーとして、減産幅をコミットしたものより多くするのか? また6月には、ソフトランディングを含め減産合意からの出口戦略も議論するのか?

ファリハいわく、「2017年同様の対応をする。各国にはそれぞれ遵守してもらいたいが、触媒(catalysis)になる用意はある。出口戦略を議論するのは時期尚早。(OECD=経済協力開発機構=商業在庫過去5年平均対比で)1億5000万バレルの在庫減少が必要だが、第1クォーター(四半期)は季節要因で需要が落ち込む、第2、3クォーターが鍵なので、6月の時点でどうなっているのか、注視が必要」

(7)リビア、ナイジェリアを含めて120万バレル(日量)の減産となっているが、現状両国の生産は昨年より40万バレル(同)も多い、120万バレル(同)以下の減産となった場合は?

ファリハいわく、「OPECは120万バレル(同)以上の余剰生産能力を維持している。サウジはコミットよりも減産する用意がある。第4クォーター比較では、サウジは70万バレル(同)減産している。国によっては様々な理由により減産幅が大きくなるところもある。リビア、ナイジェリアがさらに増産するリスクはほぼない。したがってリバランスは順調に進んでいくだろう」


岩瀬昇 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同) がある。
関連記事 (2017年12月5日フォーサイトより転載)