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「周永康=大トラ」退治で完成に近づく習近平の「新四人組」粛清

2014年07月31日 15時58分 JST | 更新 2014年09月28日 18時12分 JST
Reuters

昨日の中国時間午前6時すぎ、中国国営通信新華社は、共産党中央が、元政治局常務委員の周永康を重大な規律違反の疑いで立件することを決めたという第一報を、スマートフォンなどのユーザーに送る69文字のごくごく短い速報として流した。周永康の摘発は、2012年の薄熙来事件発覚以来ずっとささやかれ、その元側近らが次々と摘発されるなど一種の「既定路線」でもあったので、それほどの意外性はないものの、政治的地位は薄熙来よりも高かった周永康の摘発の影響度は限りなく大きい。

事件の詳報はすでに流れているが、今回の事件ではいくつかの印象深いキーワードが中国のメディアでも盛んに使われている。庶民に分かりやすいキーワードで事件の宣伝性を高める手法は、共産党の建国以来のものである。

そのなかでやはり重要なのは「打老虎(トラ狩り)」だろう。

昨晩、人民日報系のウエブサイト「人民網」は「『大老虎(大トラ)』周永康を打ち倒したが、反腐敗はこれで終わりではない」との評論を掲げた。地方の省や部の高級幹部は「トラ」だが、周永康や、最近摘発された党中央軍事委員元副主席の徐才厚のレベルになると「大トラ」ということになる。「老虎」と対照的に使われている言葉は「蒼蠅(はえ)」で、地方レベルで不正を働く役人は「はえ」と評されている。

「零容認」

最近の中国の流行語でもある「零容認(一切の例外を許さない)」という言葉も、昨日の周永康摘発のニュースとともに、習近平指導部の徹底ぶりを賞賛する公式メディアの報道や評論なかでしばしば用いられた。もともと英語「zero tolerance」からの翻訳中国語のようだが、最初は地方警察などで取り締まりの際にスローガンとして使われ、最近は「トラ」や「ハエ」も区別なく摘発する党中央の決意を示す用語としてすっかり定着した。

そして、周永康の摘発の実現は胡錦濤政権から習近平政権への権力移行の中で、「粛清」のプロセスが完成に近づいたことを示しているのだが、特に周永康ら大物については公式メディアでは使われていないが、一般には広く「新四人組」と呼ばれている。

その4人とは元重慶市トップの薄熙来、徐才厚、今回の周永康。加えて、党中央弁公室主任で胡錦濤の側近だった現統一戦線工作部長の令計画だ。6月に兄の令政策がすでに「重大な規律違反」の疑いで調査を受けていることが発表されており、令計画の失脚も確実視されている。4人の権力背景はさまざまで、文化大革命時代の「四人組」のように同じ目的を有して結束した集団とは言えないが、文革や天安門事件以来の政治的な大事件と言われる今回の「反腐敗闘争」のなかで、習近平政政権が立ち向かう「悪」の象徴としての「新四人組」という歴史的な位置づけが今後固められていくに違いない。

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野嶋剛

1968年生れ。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、2001年シンガポール支局長。その後、イラク戦争の従軍取材を経験し、07年台北支局長、国際編集部次長。現在はアエラ編集部。著書に「イラク戦争従記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)。

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(2014年7月30日フォーサイトより転載)