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圧勝「共和党」に求められる責任政党の「成果」

2014年11月08日 15時38分 JST | 更新 2015年01月06日 19時12分 JST

 11月4日に投票が行われた米中間選挙では、現時点(日本時間6日午後6時)で未確定の議席があるものの、共和党は下院で改選前の233議席から243議席へと10議席純増となった(民主党は178議席)。また、改選前は民主党が多数党の立場にあった上院でも、共和党は45議席から7議席純増の52議席に達し(民主党は民主党系無所属を含めて45議席)、来年1月に招集される第114議会で、共和党は8年ぶりに上下両院で多数党に復帰することとなった。

有権者の現状不満が直撃

 今回の結果を受けて筆者が最初に受けた印象は、有権者の間に現状に対する強い不満が依然根強くあるという点である。

 ジョージ・W.ブッシュ政権の対イラク政策を最大の争点として争われた2006年中間選挙では、与党・共和党は上下両院での多数党の立場を失った。また、オバマ政権発足翌年の2010年に行われた中間選挙では、オバマ政権の積極的な財政出動に反発する白人有権者を中心とする保守派の草の根政治運動「ティーパーティ(茶会党)」が全米各地で自然発生的に広がり、共和党は下院で63議席の純増となり、4年ぶりに多数党に復帰している。そして今回は、与党・民主党が上院で多数党の立場を失うという結果になった。つまり、過去3度の中間選挙はいずれも有権者の現状に対する不満が与党に向けられ、与党が上下両院、あるいはいずれかで少数党に転落するという結果となっている。元々、中間選挙は野党支持者の不満が強く反映される「抗議投票(protest vote)」の性格があり、与党不利になりがちであるが、今回の結果も有権者の現状に対する不満や憤りがいかに根強いかを示すものとなった。

共和党の「オバマ批判」の効果

 今回、共和党陣営は徹底した「オバマ批判」を展開し、特に、オバマ大統領の指導力の欠如を標的にしたことも勝利の一因として指摘する必要があると考える。

 とりわけ、「イスラム国(ISIS)」やエボラ出血熱といった外交・国家安全保障、危機管理に関する対応でオバマ政権は後手に回っているとの厳しい批判に晒されたことは、民主党に不利に働いたと考えられる。実際、多くの民主党候補が、オバマ大統領との関係を強調する共和党陣営からの攻勢に対し防戦を強いられていた。そうした「反オバマ戦術」は、オバマ大統領への支持が大幅に低迷している地域で、共和党系有権者や無党派層に対しより一層の効果があった。

 各種世論調査でのオバマ大統領の支持率は全米平均で40%台前半と低迷し、第2次世界大戦後に再選を果たした歴代大統領の6年目の支持率と比較しても最も低水準で推移しており、民主党にとっては強烈な「逆風」だった。特定の主要争点を巡る激しい議論も展開されず、今回の中間選挙をオバマ大統領の「信任投票」と位置付ける共和党が徹底した「オバマ批判」を展開する中で、オバマ大統領自身は、南部や中西部の「接戦州」での民主党候補の応援演説すらできなかった。

動かなかった民主党の支持基盤

 今回の中間選挙の投票用紙には、2012年に再選しているオバマ大統領自身の名前は、当然記載されていなかった。そのために与党支持者の投票行動が鈍くなったことも、与党敗北という歴史的慣例どおりの結果となった一因と考えられる。実際、民主党の有力支持基盤である少数派(マイノリティ)の有権者も、共和党圧勝を阻止することはできなかった。

 コロラド州選出上院議員選挙では、有権者の約14% を占めるヒスパニック系有権者の動向が民主党現職のマーク・ユードル上院議員の再選の鍵を握ると見られていたが、再選に失敗した。また、全米で第3位のアフリカ系有権者が存在するジョージア州では、サム・ナン元上院議員の娘であるミシェル・ナン民主党上院議員候補が共和党の議席を奪還できるか注目されたが、こちらも当選を果たすことができなかった。

支持強固な州でも相次ぎ敗北

 選挙結果を詳細に検証すると、今回の中間選挙で民主党がいかに打撃の大きな敗北を喫したかが理解できる。

 最大の焦点であった上院議員選挙では、民主党現職が不出馬表明を行ったウェストヴァージニア、アイオワ、サウスダコタ、モンタナの4州で民主党は議席を死守できなかった。かろうじて、政界引退を表明したカール・レヴィン上院軍事委員長の地元のミシガン州で議席を維持しただけである。

 さらにノースカロライナ、アーカンソー両州 では、民主党現職が相次いで議席を失った(未確定のアラスカ州でも現職のマーク・ベギッチ上院議員が議席を失う可能性があり、ルイジアナ州では、現職のメアリー・ランドリュー上院議員が勝利に必要な過半数を獲得できず、12月6日に実施される決選投票で、共和党候補のビル・カッシディと対決する予定)。

 筆者は、「米中間選挙最注目州『ノースカロライナ』『アイオワ』最新情勢分析」(2014年10月16日)の中で、民主党が議席を維持していたノースカロライナ州とアイオワ州で敗北した場合、共和党が上院で多数党に復帰する可能性が高まると指摘した。そして現実に両州とも、民主党は議席を維持できなかった。

 また、女性候補を擁立したケンタッキー州 でも、民主党は議席奪還を果たせなかった。

 今回の中間選挙で民主党が大敗したことは州知事選挙結果でも明らかであり、民主党の州知事候補に脆弱性はあったものの、伝統的に民主党支持が強固な地域であるマサチューセッツ、メリーランド、イリノイといった州でさえ、民主党候補は軒並み敗北を喫している。

厳しさ増す政権運営

 筆者は、ワシントンで米国政治の専門家や元政府高官らと意見交換を重ねていた10月下旬時点で、すでに「共和党優位」との強い感触を受けていた。とは言え、今回の結果は、共和党にとって考えうる限りの「最善のシナリオ」だったと言える。

 オバマ大統領は2017年1月まで2年余り任期を残しているが、今回の民主党の敗北により、今後の政権運営は一層厳しさを増すことは必至だ。

 とりあえず議会は、民主党主導の上院、共和党主導の下院という「ねじれ現象」が解消され、共和党が上下両院を完全支配することになった。が、今後は、大統領府はオバマ民主党政権、上下両院は共和党という「分断政治(Divided Government)」の政治状況の下で来年1月に第114議会が招集される。共和党が2016年大統領選挙でホワイトハウス奪還を図る上でも、共和党には責任政党としての「具体的成果」が求められることになる。

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足立正彦

住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト。1965年生れ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より現職。米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当する。

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(2014年11月6日フォーサイトより転載)