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「公明党・創価学会」が煽る「年末・年始」解散総選挙

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永田町に年末・年始解散論が浮上した。きっかけは安倍首相の指示だったが、公明党・創価学会が煽(あお)り、解散風は強まりつつある。

自民党は毎年1月に招集される通常国会前の日曜日に党大会を開催するのが通例になっている。来年も1月15日の日曜日に都内のホテルを予約し、準備をしていた。

ところが、下村博文幹事長代行から党大会の日程について連絡を受けた首相は、国連総会出席のために9月18日からニューヨークに出発する直前に、「党大会は3月に延ばして欲しい」と下村氏に指示した。下村氏から首相の意向を聞いた二階俊博幹事長は予約を取りやめ、党大会を3月5日の日曜日に延期することにした。

首相は延期の理由について、明確にしなかった。このため、「首相が党大会を延期するのは、来年1月の通常国会冒頭解散、2月総選挙を考えているからではないか」という観測が浮上した。

「拒否するわけにはいかない」

解散論の広がりに拍車をかけたのが、公明党と創価学会の動きだ。

9月28日、公明党の山口那津男代表は都内で講演し、「ここから先は任期中、いつ解散があってもおかしくない。(衆院議員の任満了まで)余りある時間があるわけでもない。常在戦場で自身を磨けと言っている」と述べた。山口氏は「首相が(解散を)決断すれば拒否するわけにいかない。『準備ができてないからやめてくれ』という与党では困る」とも語って、選挙準備を急ぐ考えを明らかにした。

首相の自民党大会延期指示の直後、今夏に首相が衆参ダブル選を検討した際、賛成しない意向を伝えていた山口氏が同調するかのように早期解散支持を表明したことから、与党内では解散論が一気に広まることになった。山口氏が早期解散支持に踏み込んだのは支持母体の創価学会の意向を受けたものだ。

来年夏は学会が重視する東京都議選を控えている。学会は都議選に向けて、全国各地から支持者が上京し、都内の友人、知人らに投票を依頼する「全国応援」の態勢になる。このため、都議選の前後3、4カ月は衆院選を避けたい考えで、自民党にも水面下でそうした意向を伝えている。

特に来夏の都議選では、6月の知事選で自公推薦候補に圧勝した小池百合子知事が「小池新党」を起ち上げ、独自候補をぶつけてくるのではないかという見方が出ている。その場合、公明党も苦戦は必至で、これまで以上の支援が必要になることから、「衆院選が重なることは絶対に避けなければならない。慎重な山口氏があそこまで踏み込んだのは、学会の強い意向を受けてのものだ」(公明党幹部)というわけだ。

09年総選挙の悪夢

都議選から3、4カ月後となれば、来年年末以降の解散・総選挙となり、衆院議員の任期が1年を切ってしまう。場合によっては追い込まれての解散になる可能性もある。公明党や創価学会には2009年8月、任期満了間際の解散で、当時の太田昭宏代表ら小選挙区の現職8人全員が落選した悪夢のような記憶が刻まれている。

当時の麻生太郎首相に対し、太田氏や北側一雄氏ら公明党幹部は状況が悪くなる前に早く解散すべきだと詰め寄ったが、麻生氏は解散を先送りした。結局、任期満了間際まで追い込まれて解散、政権が交代するほどの大惨敗を喫した。この悪夢の再現を避けるため、公明党と学会首脳は都議選前の年末・年始解散、総選挙に照準を絞って自民党に働きかけているのだ。

「09年の再現のようだ」と、ある自民党幹部はもらす。首相も公明党・学会の要望をはねつければ、任期満了間際まで追いつめられ、麻生氏の二の舞いになる可能性もあるからだ。麻生氏が今夏、首相に衆参ダブル選に踏み切るよう、強く進言したのは、自分と同じ轍を踏むべきではないという思いからだったという。

また、衆院の定数削減前の解散・総選挙も年末・年始解散論の理由として挙げられている。5月に衆院の定数を小選挙区6、比例代表4の計10議席削減する改正公職選挙法が成立した。小選挙区は青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県、比例代表は東北、北陸信越、近畿、九州の4ブロックで1議席減となる。

小選挙区の区割り見直しの作業が衆院選挙区画定審議会で行われており、改正公選法施行から1年以内の来年5月27日までに改定案を首相に勧告する。勧告を受け、政府は内容を反映した公選法改正案を国会に提出。

来年の通常国会で成立すれば、約1カ月間の周知期間を経て、来夏以降の衆院選で新たな定数と区割りが適用される見通しだ。しかし、区割り見直しの影響は全体の3割にのぼる80~90小選挙区に及ぶと見られており、現行の区割りのうちに解散・総選挙が行える年末・年始の解散・総選挙を望む空気が現職の議員たちに強いのも当然だろう。

「改憲」「経済」との兼ね合い

もっとも、首相にとっては厳しい判断になるだろう。現在、衆院では自公で憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を占めているが、次の衆院選では議席減は必至と見られている。首相は今夏の参院選まで、衆参の国政選挙で4連勝中だが、参院選で大勝したばかりでもあり、これまでの反動が予想されるからだ。

憲法改正に消極的な公明党とすれば、3分の2の議席にこだわる必要はなく、それが早期解散を求める背景の1つになっている。参院と同じように維新の会など憲法改正を目指す勢力を加えて3分の2の議席に達することができても、自民党が議席を減らせばキャスチングボートを握る公明党の影響力はさらに強まることから不都合はないというわけだ。

しかし、憲法改正を目指す首相にとって、改正発議に必要な議席を減らす可能性が高い解散・総選挙に踏み切るにはよほどの覚悟が必要だろう。

「アベノミクス」を唱え、経済最優先を掲げる首相にとって、年末年始、特に1月の通常国会冒頭解散は来年度当初予算案の成立が遅れることも難点だろう。

直近の例で言えば、1990年、海部内閣は通常国会冒頭の1月24日に衆院を解散した。投票日は2月18日で、特別国会を召集して予算案を提出したのは2月28日。

首班指名などを経て、予算審議が始まったのは3月に入ってからで、5月の大型連休を挟んだこともあって、ようやく成立したのは6月7日になってからだった。大型暫定予算を組まざるを得ず、予算執行は遅れ、経済への影響も大きかったとされる。

アベノミクスを加速するとしている首相にとって、選挙によって景気対策の要となる予算成立をここまで遅らせれば批判は必至で、できれば避けたいところだろう。

日露首脳会談というファクター

予算審議への影響を最小限にするためには、2014年のように11月解散、12月投票の日程が最善策のはず。しかし、首相は12月15日に地元・山口県にプーチン・ロシア大統領を招くことで合意していることから、その前の解散はできない相談だ。当然、12月15日の日露首脳会談の結果も解散するかどうかの判断に影響することになるだろう。

北方領土問題で国民に支持されるほどの一定の前進を得られれば、勢いにのって解散・総選挙というシナリオも描ける。しかし、そこまでの成果が得られるかどうか。外交関係者は「見通しは全く立ってない」と口をそろえており、いわば、出たとこ勝負にならざるを得ないのが実情だろう。

首尾良く、日露首脳会談で成果を上げられたとしても、年内か年明け早々には解散に踏み切らなければ、予算審議のために解散はできなくなり、都議選が終わってから、来年年末以降の解散・総選挙にならざるを得ない。

公明党・創価学会の早期解散要望を踏まえ、解散・総選挙に踏み切るかどうか、首相にとっては難しい判断だが、日露首脳会談や来年度予算案審議などの難題を抱え、年末にかけて、あまり時間がない中で決断しなければならないだろう。

辻原修
ジャーナリスト

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(2016年10月13日フォーサイトより転載)