「農業を変えたい」 ICTによる生産の見える化で農業経営を変革

2014年11月28日 00時51分 JST | 更新 2015年03月23日 18時12分 JST
富士通ジャーナル

イノベーションの波は農業にも押し寄せています。これまで定量的な把握が難しかった農業の生産や経営の見える化により、生産量や品質の安定を図る、"効率的な農業経営"が実現されています。今回は、イオンアグリ創造株式会社(以下、イオンアグリ創造)の取り組みを通して、富士通のICTが農業でどのように活かされているのかご紹介します。

■ 農業の経験不足を補うICT活用

イオンアグリ創造は、イオングループの一員として2009年に設立され、創業5年ですでに、全国に15か所の農場を展開されています。農業の経験がなくとも、「近代化によって日本の農業を変えたい」という熱い思いをもった人々が始めた企業です。

代表取締役社長 福永庸明(ふくなが やすあき)氏によれば、創業当初は失敗や錯誤を重ねながらの経営だったそうです。農業について勉強した知識はあっても、現場での経験として身に付けることが難しく、作物が病気でやられたり、虫が出てしまったりという問題が次から次へと出てきたといいます。農業のように勘や経験が求められる産業において、経験値の少なさをどう補えばいいのか、その答えのひとつがICTの活用でした。福永社長は、ICT活用のきっかけを次のように語ります。

「我々には振り返る経験やナレッジがありませんでした。しかし企業としては、本来、農家の方々が何十年もかけて身に付けることを、どれだけ短くできるか考えないといけません。一番苦しかった時にターニングポイントとなったのは、富士通さんのICTによって経営と生産の見える化に取り組んだことでした。」

(代表取締役社長 福永康明氏)


■ 作業状況「見える化」することで農作物の生産管理・品質管理につなげる

農業へのICT活用の具体的な取り組みは、まず生産現場のさまざまな作業の見える化から始まりました。茨城県の牛久の農場では、圃場にセンサーを設置して集約したデータを、富士通が提供する「食・農クラウド Akisai(秋彩)」に送っています。その他の農場でも、収穫量や農薬散布など日々の作業については、週報といった文書をデータで管理するなど、各農場の作業員や農場長が現場で感じた「気づき」「失敗」や「成功」といった情報をスマートフォンなどのモバイルデバイスからクラウド(Akisai)にアップし、ナレッジの共有と蓄積を行っています。クラウド上に送られたデータは、全国15か所の農場と本社にリアルタイムで共有され、瞬時に確認することもできます。

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現場の農場長は、このようなナレッジの共有と活用によって、経験の有無にかかわらず的確な判断ができるようになったといいます。長期的なナレッジの共有だけでなく、他地域の農場で発生した作物の病気や天候被害の情報などを知ることで、スピーディーな対策にも役立てています。

また、近年話題となっている食の安全についてもICTが活かされています。ヨーロッパ等を中心に取り入れられている農業適正規範「GLOBAL G.A.P」に基づいた品質管理を徹底されており、特に農薬の使用に関しては、基準から一日でもずれが起こらないよう、蓄積したデータを活用して散布のスケジュール管理など厳格なチェック体制を維持しています。

■ 高度な農業経営を可能にするAkisai

Akisaiは単にデータを収集するだけでなく、分析によるデータ活用ができるクラウドプラットフォームです。ナレッジの共有やさまざまなツールとの連携が可能で、ビッグデータの見える化をサポートしています。イオンアグリ創造では、モバイルデバイスやセンサーを利用して収集した生産管理データを、経営分析や意思決定にまで広げて活用しています。

例えば、使用した肥料の種類や量を細かく入力して、そこにかかる費用の見える化が行われています。同じように、人件費や農薬の費用と合わせてデータを見ることで、通常の農家では意識されづらい作物ひとつひとつの製造原価が把握できるようになりました。福永社長が「自分たちの作っているもののコストがわからないで経営はできません。」と語るように、これからの農業にとって生産工程の管理や原価管理は重要なポイントです。

これまで、自然を相手にする農業において、収穫予想や生産計画などの定量化は難しいものでした。しかし、作物の育成状況や収穫量データなどを詳しく分析し、ビッグデータを農業経営という視点で見える化することで、農作物の生産計画の管理と高度な意思決定を実現しています。


■ 生産から消費者までをつなぐ農業バリューチェーン

ICTによるイノベーションの波及効果は、生産の現場である農場以外にも広がっていきます。イオンアグリ創造の取り組みは、農作物の全店への配送、供給スケジュールに合わせた生産計画を効果的に組むことを可能にし、イオングループ全体としての効率的な経営につなげています。

このような革新によって、イオングループとして生産・調達、物流、製造・加工、卸、販売、そしてその先の消費者までをつなげたバリューチェーンを構築し、グループのビジネス全体を俯瞰できるようになるといいます。全国15か所の農場からのデータが本社に集められ、効率的な野菜の生産、機動的な流通の対応などが可能になることで、グループ全体としても機会損失の低減、無駄の削減といった高度な経営・意思決定が可能になるのです。

■ ICTの活用で日本の農業にイノベーションを起こす

イオンアグリ創造の農業経営における変革は、イオングループ内だけにとどまらず、新しい業界や他業種の企業との関係も生もうとしています。クラウドに集約されたデータの活用が進めば、eコマース(電子商取引)やサービスプロバイダー、アプリベンダーなど多様な業界との協業やビジネス開発、つまり新しいエコシステムの形成にも期待が広がります。例えば、農家の株式会社化を支援するプログラムやサービスを実施したり、自治体と産業育成・活性化プロジェクトを進めたり、生産者と消費者の距離をもっと縮める流通や販売方法を考えたりといったことです。

このような業種を超えたパートナーシップは、日本の農業自体を活性化することにもつながります。ICTの活用によってさらに効率的な農業経営が実現できるようになれば、新しく農業に参入する人が増え、農業の現場で問題となっている後継者不足や荒れた休耕地などが解決できるかもしれません。

イオンアグリ創造の取り組みでは、自治体・農家・ICT企業、各種のサービス業やコンシューマビジネスを巻き込んだバリューチェーンの構築によって、日本の農業に新たなイノベーションを生みだそうとしています。富士通はこのような企業の取り組みにICTという形で貢献し、より良い社会の実現に向けて支援していきます。

【関連リンク】

イオンアグリ創造株式会社 ICTを活用することで、現場のデータに基づくより高度な農業運営を実施

食・農クラウド Akisai(秋彩)

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