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更生保護と福祉が接近 刑の一部執行猶予スタート

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更生保護施設両全会は、薬物離脱プログラムを実施している

今年6月1日、刑の一部執行猶予制度が施行された。一定の要件を満たす場合に刑の一部を猶予し、社会内処遇により更生を促す同制度は主に覚せい剤などの薬物依存症者を対象と想定。法務省と厚生労働省は昨秋、その支援の関係機関として福祉事務所などを挙げた地域連携指針を作った。刑務所を早期に出所する薬物依存症者の増加を見据え、更生保護関係者による障害者グループホーム(GH)運営も始まるなど、更生保護と福祉が一段と接近してきた。

「お友達と会うので出掛けます。晩ご飯はいりません」。「帰りが遅くなるようなら必ず電話して」−。  

都内の障害者GHで暮らす女性が外出する際の、職員とのやりとりだ。GHは2階建てで個室が4部屋ある普通の住宅に見える。  

購入したのは社会福祉法人でも株式会社でもない。来年、創設100年を迎える更生保護法人両全会(東京都渋谷区、小畑輝海理事長)だ。

GHを運営するのは小畑理事長が代表を務めるNPO法人両全トウネサーレ。2015年12月に開設し、今年5月末までに4人の女性が入居した。薬物依存症者専用ではなく、常勤職員は3人。両全会職員も定期的に訪れ入居者と面談する。  

両全会は渋谷区内で女性専門の更生保護施設(定員20人)を運営。刑務所を仮釈放となっても帰住先のない人などが平均で約4カ月入所する。その間に働いてお金をため、アパート暮らしを目指すのが基本だ。

■寄り添いが不可欠


「更生保護施設にいられる期間は短い。社会で自立した生活を送るには、退所後もなじみの職員らの寄り添いが必要だ」。小畑理事長はGH開設の狙いをこう話す。  両全会の更生保護施設は、入所者の8割が覚せい剤や窃盗の常習者。精神障害や発達障害の人も多い。  

12年度からは施設内で独自の薬物離脱プログラムを開始。退所後も任意で通うよう促し交通費も両全会が負担しているが、通うのは該当者の半数程度。13年度からは法務省の予算で薬物離脱専門員が配置された。

こうした動きは、刑の一部執行猶予制度と深い関係がある。  同制度では、累犯の薬物使用者が一部執行猶予になると必ず保護観察が付く。数カ月間で終わることの多い仮釈放と異なり、最長で5年間、保護観察下に置かれるため、単年度ごとの保護観察対象者は従前よりも増える。  

それを踏まえ、小畑理事長は「更生保護施設は単なる下宿屋から脱却する必要がある」と判断。外部講師の力を借りた施設内での処遇力向上、施設退所後に暮らすGHづくりを進めてきた。より汎用性のある薬物離脱プログラムも開発中という。

■障害福祉の出番  


国も各地域での連携に期待を寄せる。  

「関係機関は薬物依存症者が精神症状に苦しむ一人の地域生活者であることを改めて認識し、偏見や先入観を排して回復と社会復帰を支援する」−。
 

15年11月、法務省と厚労省がまとめた「地域連携ガイドライン」は基本方針にこう掲げた。刑務所を出所した薬物依存症者を司法だけで更生させるのは不可能だとし、福祉行政とも認識を共有しようというものだ。  

福祉との関連では、保護観察中の支援として、本人の希望に応じて必要な障害福祉サービスなどを実施するよう福祉事務所などに求めた。法務省保護局は「保護観察終了後も薬物依存症者が必要な支援を受けられるよう、本人とかかわる人を増やすことが最も大切だ」としている。

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ことば


【刑の一部執行猶予制度】  

3年以下の懲役・禁錮の場合、刑期の一部の執行を猶予する制度。2013年6月に関連法が成立した。例えば、懲役2年のうち6カ月につき2年間の執行猶予の付いた判決を出せる。これまでも刑期の途中で仮釈放(覚せい罪事犯者は14年は約4000人)する仕組みはあったが、釈放期間が短いこと、判決時に釈放時期が決まっていないことなどから社会復帰支援が不十分となり、再犯に至るケースが多かった。刑務所の過剰収容を緩和する狙いで06年に法務省で議論が始まったが、社会内での長期的なかかわりにより再犯を防ぐ意味合いが次第に強くなってきた。

【保護観察】  

刑を執行猶予となった人、刑務所を仮釈放となった人などを国の責任で指導監督・補導援護すること。全国50カ所の保護観察所がその役割を担う。更生保護とは犯罪をした人や非行少年を社会内で処遇し、再犯を防ぎ更生を助ける活動のこと。保護観察所のほか保護司、更生保護施設などが担い手となる。

(2016年7月11日「福祉新聞」より転載)