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問われる当事者性と専門性 精神障害のピアスタッフ急増で

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集会で話す川村さん(左)と長岡さん

精神障害があり、同じような障害のある人に仕事としてかかわる「ピアスタッフ」の動きが活発だ。2014年9月に発足した全国団体「日本ピアスタッフ協会」は昨年12月13・14両日、埼玉県内で集会を開き、障害当事者130人を含む250人が参加した。ピアスタッフは近年急増し、ブームだと言われることもある。同協会の原田幾世会長は初日の講演で「ピアスタッフをブームで終わらせてはいけない」と話した。

 「薬の副作用でよだれが出るのは女性としてつらいですよね」。障害者相談支援事業所「てれんこ」(仙台市)の相談支援員、川村有紀さんは、自分の服薬体験を相談者に話したことを「体験を差し出す」と表現した。

 川村さんは10代で統合失調症を発症。「大学を中退し、人生をあきらめた」。転機が訪れたのは27歳の時。通信課程で精神保健福祉を学んだ際に訪れた「てれんこ」に誘われて就職した。

 病気に苦しんだ体験がプラスに働く喜び。体験を押し付けていないかという不安----。「体験を差し出す」という表現はそんな揺れる気持ちから生まれた。

 現在30歳。週に3日、非常勤で働く。精神保健福祉士の資格も取った。「当事者性のある専門職」でもあり「専門性のある当事者」でもある。

 「ピアスタッフ」と名乗るかどうかは場面によるという。

 「てれんこ」では当事者を雇用し始めてから5年がたつ。

 所長で精神保健福祉士の長岡千裕さんは「雇用して良かった。当事者は同じ場面を専門職と違う視点で見ることができる。単なる当事者ではなく職員だから安心できるという相談者もいる」と振り返った。

 一方、戸惑いがない訳ではない。長岡さんは働く当事者に対し、「雇用主として労務管理する」「専門職として就労を支える」----という二つの顔を持つ。

 「専門職はどうしても当事者にいい顔をしたくなるが、雇用主としてモノを言うべき時もある。日本ピアスタッフ協会は、こうした雇用主の相談にのってほしい」と話した。

「ピアスタッフ」「ピアサポーター」と呼ばれる人は地域活動支援センター、就労継続支援B型事業所などで働いている。仕事内容は相談支援や退院支援が多いとみられる。

 政策的にもこの10年ほどの動きは急速だ。

 厚生労働省は、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業のメニューに「ピアサポート」を明記。

 日本社会事業大学は12年度、精神保健福祉士の通信課程に、精神疾患の治療経験者を対象とした「ピア精神保健福祉士コース」を設けた。

 「ピアサポート専門員養成研修」(南高愛隣会主催、福祉医療機構助成)も一部地域で13年度に始まった。

 「ピア流行り」「ピアブームだ」と言われることもあるが、「ピア」として働く当事者の名称や定義は定まっていない。全国に何人いるかも不明だ。職場内での立ち位置があいまいで、孤立する人もいる。

 そこで14年9月14日、前年度までの全国集会に携わっていた有志が協会を設立。情報共有や学びあいを目的として活動を始めた。

 当事者性とは何か。専門性とは何か----。対人援助の根幹にかかわる議論がさらに加速しそうだ。


■学びの機会を設けたい  原田幾世・日本ピアスタッフ協会長

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現在41歳の私は、10年前に入院した。病名は統合失調感情障害。眠れなくて幻聴もあった。入院を機に、60%程度の「ほどほどの力」で生きるようになり、少し楽になった。

 最近はピアスタッフ、ピアサポーターがブームだが、ブームで終わらせたくない。ピアだからこそできることがたくさんある。それを広く知ってもらいたい。

 当事者性を生かすには気づきと学びが必要だが、その機会は非常に乏しい。協会では学びの機会を設けたい。専門職とも「協働」したい。支部も設け、ピアの人材バンクができたら面白い。

 私は言葉にすることで多くのことを実現してきた。皆さんもぜひ思いを言葉にしてみてほしい。

【日本ピアスタッフ協会】
 会長=原田幾世(宮城県障害者職業センター・仙台市)、副会長=引地はる奈(障がい者相談・地域活動支援センターひびき・福島市)、磯田重行(つばめ福祉会ピアつばめ・福岡市)。連絡先や入会方法などはホームページ参照(http://peersociety.jimdo.com/)

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