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藤川球児の報道が出ない事情と現在の状態(佐藤直子)

2014年03月03日 16時36分 JST | 更新 2014年05月02日 18時12分 JST

fujikawa

■プロとして、その舞台裏は見せるべきではない

藤川球児は今、何をしているのだろう? そんな疑問を抱くファンも多いのではないだろうか。

昨年6月にトミー・ジョン手術と呼ばれる右肘靱帯再建手術を受けたことは、ご存じのとおり。現在、復帰に向けてのリハビリに励んでいる最中だが、日々の報道からは、今リハビリのどんな段階にあるのか、復帰のめどはいつ頃なのかといった情報が、なかなか伝わってこない。

理由を一言で言ってしまえば、藤川が伝えたがらないから、だ。だが、その背景には、藤川球児という男の持つ「プロ」に対するこだわりがある。

「プロというのは、ファンの皆さんの前でプレーする人できる人のことを言うんですよ。僕はまだその段階にはない。だから、今、復帰に向けて進んでいるステップを事細かに伝えたとしても、それはプロの仕事を伝えているわけではない。今の僕の状態は、まだプロと呼べる段階には達していないんです」

2月下旬のある日、アリゾナ州メサにあるカブスのキャンプ施設で、藤川はこう語り出した。

野球を仕事に持つプロとして、ファンの前でピッチングできる状態になるまで、その舞台裏は見せるべきではない、という。阪神で絶対的な守護神として鳴らした男のこだわりは、まるでこだわりのラーメン屋の頑固な店主。自分が納得するモノしか、お客さんやファンの前には出さない。とことん職人気質なのだ。

「ファンが注目するのは、しっかりプレーしている選手。たまに『藤川は何してるんだろう?』と思う人が何人かいるかもしれないけど、大体の人は記事で名前を見た時に初めて『そういえば......』と思い出す程度でしょう。だったら、メジャー復帰を果たすまでは、身を潜めながら準備を怠らなければいいんです」

■リハビリは順調に進んでいる

もちろん、復活までの過程を周囲に知らせることは大切だ。同じ手術を受けることになった人にとっては、またとない参考資料となるだろう。藤川もその意図は理解している。

「でもね、今、過程を明らかにしたところで、その過程をたどった結果が見えていないでしょ。だから、意味がないんです。成功であっても失敗であっても、戦列復帰を果たして結果が残ればいい。その時初めて、たどった過程が意味をなすようになるんです」

実際には、リハビリは順調に進んでいる。手術後2度のブルペン投球を行っているが(2月28日現在)、自己評価は「まだまだピッチングと呼べるような代物じゃない」。ボシオ投手コーチや首脳陣によれば、スケジュール通りに回復の道をたどっているという。トミー・ジョン手術を受けた投手は、通常復帰まで1年以上を要しており、藤川の場合も例にならって考えれば、6月以降の復帰が順当と言えるだろう。

「まだコイツは起きていないんですよ」

そう言いながら、自分のロッカーに掲げられた「11・FUJIKAWA」のネームプレートを指差した。

「僕はまだコイツになれていない。コイツが帰ってくるまで、もう少し待ってて下さい。その時、手術から復活までの様子を明らかにしましょうよ」

本拠地リグレーフィールドに「火の玉ストレート」との異名をとる豪速球が戻ってくるまで、もう少し辛抱していよう。

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佐藤直子●文 text by Naoko Sato


群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

(2014年3月3日フルカウント「メジャー復帰まで"身を潜める男" 藤川球児が貫くプロの哲学とは」より転載)