中東問題の種を蒔いた国

センター試験の問題で、改めてイギリスの三枚舌外交について考えさせられた問題があった。

新聞を読んでいたらセンター試験の問題と解答が掲載されていた。

この時期は受験シーズンということを思い出す。世界史の問題を見てみると、昨今のイスラム国によるテロやイスラエルとガザ地区の戦争、イランとサウジアラビア問題など中東の混乱が目立っているせいかイスラムに関する現代史の出題が多いように感じた。

例えば以下のような問題である。

問7)下線部⑦に関連して、第一次世界大戦中の秘密外交について述べた次の文章中の空欄(ア)と(イ)に入れる語の組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから選べ。

イギリスは、(ア)によってアラブ人の独立を約束したが、ほぼ同じ時期に、それと矛盾する他の秘密協定を連合国などと結んだ。このような秘密外交は、アメリカ大統領のウィルソンの(イ)で廃止が訴えられた。

① ア-フサイン=マクマホン協定(フセイン=マクマホン協定)

イ-十四か条の平和原則

② ア-フサイン=マクマホン協定(フセイン=マクマホン協定)

イ-平和十原則

③ ア-サイクス=ピコ協定

イ-十四か条の平和原則

④ ア-サイクス=ピコ協定

イ-平和十原則

(2016年センター試験「世界史B」)

この問題には書いていないが、趣旨としては昨今の中東問題の種を撒いた国である第1次世界大戦当時のイギリスの外交について問う問題である。

今のイスラム国の問題もパレスチナ問題もそうだが過去を遡るとこのイギリスが行った外交に端を発する。どういうことかというと、第1次世界大戦当時にイギリスはオスマン帝国と戦争をしていたのだが、イギリスはオスマン帝国を崩壊させるために以下の3つの外交を繰り広げた。

まずオスマン帝国内のアラブ人に対して「反乱を起こしてくれたらオスマン帝国崩壊後はアラブ人国家を作っていいよ」と約束をした。フサイン・マクマホン協定という。

次にフランスに「オスマン帝国が崩壊したら一緒にシェアしよう」という約束を秘密裏にした。これをサイクス・ピコ協定という。

最後にユダヤ人に「オスマン帝国が崩壊したら、ユダヤ人国家を作っていいよ」という書簡を出した。バルフォア宣言という。

これがイギリスが行った三枚舌外交である。

結果、オスマン帝国が崩壊した後、ユダヤ人がパレスチナに独立国家を作ろうとして行くと、アラブ人もいるので喧嘩になり、今のパレスチナ問題に繋がっているのである。パレスチナ問題とはユダヤ人のイスラエルとアラブ人のパレスチナとの闘いのことである。

また、イスラム国もサイクス・ピコ協定の破棄をその目的としてテロを起こしている。

第一次世界大戦後、米国大統領のウィルソンはイギリスとフランスが結んだ秘密条約は混乱のもとになるので十四か条の平和原則でダメだよと訴えたのだが時既に遅しである。

というわけで先ほどのセンター試験の答えは①なのであるが、改めてこのイギリスの三枚舌外交について考えさせられた問題であった。

東猴史紘

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