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「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」という安っぽいウソについて

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世の中は変化し続けています。その中で自分だけが変わらずにいると、自分が置かれる状況は変わってしまうことになります。できるだけ今と同じ生活スタイルを続けたいと思うのであれば変わり続ける必要があります。

今とまったく同じ生活を続ける、というのはないものねだりです。世の中は変化し続けていますから、自分だけが変化を拒んでも自分の生活は変化してしまいます。流れる川に小舟を浮かべて、同じ場所にいたいなら漕ぐしかありません。漕いでもまったく同じ場所には居られませんが、漕がずにじっとしていたらどんどん下流へ流されていきます。

新興国の経済力が伸びる中で日本の経済力が伸びなければ世界の中での日本の経済力は相対的に低くなります。新興国の人々の所得が増えて日本人の所得が横ばいならば相対的に日本人の購買力は弱くなります。日本人の所得が同じでも国外から輸入されるモノの値段が少しずつ上がっていきますから、相対的に日本人は貧しくなります。ずっと所得が変わらないのは現状維持ではありません、それは小舟にのって漕がないのと同じ状態なのです。

間違えたルールを維持し続けることは誰の利益にもなりません。世界は刻一刻と変化し続けています。過去に役に立ったルールもすぐに役に立たなくなってしまいます。世の中の変化にあわせてルールの方も改めなくては、そのルールは役に立たないどころかむしろ迷惑になってしまいます。

にもかかわらず、古くなって機能していないルールや試してみたけどとっくに駄目だったと分かっているルールでもとにかく変えないでおこうとする人達が驚くほどたくさんいます。世の中には、変化を望む人よりも変化を恐れる人の方がはるかに多いのです。変化を恐れる人は変化を望む人のことを、伝統や文化の破壊者だと批判します。彼等は自分達がただ変化を恐れているだけだとは気づきません、自分が伝統や文化を守るために正しいことを言っているのだと心から思い込んでいるのです。

人間は弱いものです。ほんのしばらく安定した環境に身を置いただけで、変化することを恐ろしいと感じ始めてしまいます。人の心は、少し油断するとすぐに現状維持の誘惑に絡め取られてしまうのです。しかし現実として、世界は変化し続けており、自分だけが変化したくないというのは現実的ではありません。ずっとこのままでいたいというのは、ないものねだりに過ぎないのです。

変化を恐れる気持ちは分かりますが、変化を避けようとしてはいけません。変化を伴わない生き方などそもそもありえませんし、目を閉じて変化を見ないようにしても現実に世界は変化し続けているのですから。

「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」といった内容の書籍や映画や楽曲はよく売れます。それはつまり「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」と言われたい人がたくさんいるということです。本当に「わたしはわたし、このままのわたしでいい」と思っている人は「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」と言われたいとは思いません。心の奥底で「このままのわたしでいいわけがない」と気づいているからこそ、そこから目をそらすために「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」と言われたがります。

書籍や映画や楽曲を作る側は「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」という内容のものをさかんに作ります。それはそれが売りやすいからであって本当に「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」と思っているからではありません。「あなたはあなた、そのままのあなたでいい」というメッセージを信じ込んでしまった人達の将来がどんなにミジメなことになったとしても、彼等は責任を取ってはくれません。

残酷で過酷な現実から目をそらして、自分に都合のいい情報だけを受け入れて「わたしはわたし、このままのわたしでいい」ということにしている間に、あなたの問題はなにひとつ解決しないどころかより深刻な状況になってしまいます。

さて、あなたはどう思いますか?

ふとい眼鏡の電子書籍
愛というストレス、幸せという強迫」(アマゾン Kindleストア)

(2014年2月17日「誰かが言わねば」より転載)

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