夫婦間格差が日本人の不幸を大きくしている

より多くの人が自分は幸せだと感じる生活を手に入れる社会にするためには、夫婦間不平等の問題を一つひとつ解決して行く必要があると思うのです。

2016年4月24日(日)、『女性の「自分らしさ」と「生きやすさ」を考えるクロストーク~第2回・これからの夫婦のあり方とカップル文化について考えよう~』(朝日新聞社WEBRONZA主催)が開催されました。

参加申込みの際に頂いたアンケートで、「夫婦のあり方やカップル文化に関する「不平等」について、強く感じることはどれですか?」と質問したところ、以下のような順位となりました。

まず、夫婦における問題で1位だったのは、結婚や出産が仕事に影響を及ぼす問題とそれに対する男女の意識の差です。保育園の待機児童問題が働くママの問題として取り上げられることからも分かるように、夫婦どちらかが仕事をやめざるを得なくなった時は当然のごとく女性が辞めるものという認識が今なお深く根付いています。

マタハラ、マミートラック、男社会的な人事評価等、女性のキャリア形成は様々なハードルやトラップが仕掛けられており、男性以上にキャリアが荊の道であると言えるのですが、これに対して危機意識の弱い男性も少なくありません。良好なパートナーシップを形成する上でも、大きな障害となっていることでしょう。

2位は、離婚を取り巻く環境が女性に対して不利な場合が多いという問題でした。たとえば、子供を引き取らなかった元配偶者に対する養育費の徴収制度は、欧米先進国では導入されているところが多い一方、日本では養育費を受けているのは僅か2割ほどしかいません。これがシングルマザーの貧困を招いているだけではなく、夫の不倫等により妻が離婚をしたくても経済的理由により我慢をしなければならないという状況を生み出しています。

今年は乙武洋匡氏、宮崎謙介元議員、ファンキー加藤氏、川谷絵音氏&ベッキー氏、桂文枝氏等の著名人の不倫報道が世間を大いに騒がせておりますが、不倫の話になると必ず「不倫は個人の問題だ!」という声があがります。ですが、このように離別という「個人的制裁」が課しにくいという日本の制度や文化では、もはや不倫は個人の問題ではなく社会の問題と言えるでしょう。

次に、独身者の男女不平等問題についても聞いたところ、1位は女性が独身でいることに対する根強い偏見でした。生涯未婚率も上昇の一途を辿り、国民皆結婚時代はとうに終わりを告げたのにもかかわらず、いまだに「結婚していない女性は何か問題があるのでは?」と、結婚と個人の人格が相関すると勘違いしている人は少なくありません。

これはおそらく結婚は男性が女性を貰い受けるものだという発想が強いために、「結婚していない女性=男性が貰いたいとは思えなかった女性」と解釈してしまうからではないでしょうか。

3つ目のテーマとして、母親と父親の不平等問題についても聞いたところ、男性の家事育児参加率の問題が1位となりました。男性の家事育児の参加時間が長いカップルほど、第二子出生率が大幅に高まるという統計が出ていますが、もはやイクメンは絶対不可欠な時代だと言えます。むしろイクメンという言葉が存在していること自体が、役割分担が根強く残っていることの裏返しでしょう。

確かに長時間労働等の問題により家事育児を行いたくても物理的に厳しいという男性もたくさんいますが、正社員で働いていればそれは女性も同じことです。お互いが何らかの工夫をしなければならないという状況の中で、男性側の動きが鈍いと感じることは多々あります。

最後に、男性側に潜む不平等の問題については、従属的な女性を「良い女」としてチヤホヤする男性の問題が1位となりました。「喋らなければ良い女」という表現があるように、男性に対して自分の意見を言わないという意味や、男性が考えている理想の女性像からはみ出さない振る舞いをするという意味で、良し悪しの評価がなされる現状は、明らかに対等なパートナーシップからは程遠いと言えるでしょう。

また、自立した女性に対して「そういう人は自分のことが必要そうには思えない」ということを言う男性も多いことから分かるように、パートナーシップというのは女性が男性に依存する関係であると考える人は少なくありません。対等なパートナーシップを望む先進国の男性とはかなり差があることからも、日本人男性は不必要な"男のプライド"をこじらせている傾向にあると言えるでしょう。

以上のように、4つの分野ごとに夫婦とカップル文化における不平等の問題を見てきましたが、より多くの人が自分は幸せだと感じる生活を手に入れる社会にするためには、これら夫婦間不平等の問題を一つひとつ解決して行く必要があると思うのです。皆で問題意識を共有して、発信して、世論や社会を変える仕組みを作って行ければ良いと考えております。

さて、第3回を迎えるこのイベントですが、次回は6月18日(土)に開催致します。女性の労働問題に詳しい新村響子弁護士をゲストにお招きして、職場における女性を取り巻く様々な問題についてトーク&ディスカッションを開催したいと思います。新村弁護士は、朝日新聞の「働く人の法律相談」コーナーにも度々登場して頂いており、NPO法人マタハラNetのコーディネーターも務めていらっしゃいます。

昨今、女性活躍推進が叫ばれておりますが、働く女性が「働きやすい」という実感を得るにはまだまだ程遠いような状況にあると言えます。職場では女性を取り巻く様々な問題が、今も根強く残っています。

セクハラおよびマタハラ、男女間や正規非正規間の賃金格差、人事評価の男女差別、女性管理職比率、長時間労働等、事例をあげれば枚挙に暇がありません。会社等で働いた経験のある女性ならば、おそらく何かしらの問題に直面したことがあるという人がほとんどでしょう。

実際に女性差別等が問題になる「炎上事件」も多発しています。ここ数か月の間では、ICTのビジネスモデルを応募する際に、年齢制限を設けて、全体写真や身長体重まで要求した一般社団法人テレコムサービス協会による「ICT女子」のキャンペーンに非難が殺到しました。また、佐藤製薬のバイエルアスピリンも「オトコの夢実現研究所」というキャンペーンを展開して、気持ち悪いと批判が殺到し、中止になるというニュースもありました。

「空飛ぶキャバクラ」と批判されたHIS×東大美女図鑑のキャンペーン(『HIS×東大美女、繰り返される企業の炎上』WEBRONZA参照)もそうですが、女性活躍推進と言われながら、結局は女性性の消費を促進しているキャンペーンや広告は少なくなりません。これは結局、そのような企画を出す組織の中に、女性の人としての労働を正当に評価できないことが当たり前のように染みついてしまっているからでしょう。

ただし、このように問題が公に出れば当然非難の的になるわけですが、男性中心社会とその同調圧力の中では、それらの理不尽さに対してなかなかNOを言いにくいですし、モヤモヤを抱えていても泣き寝入りしてしまっている人も多いのではないでしょうか? 中には「自分が悪いのかもしれない」と自分を責めてしまう人も少なからずいます。

そんな中、私たちはこれらの問題に対してどのようにして向き合って行けば良いのでしょうか? また、どのようにして働きやすさを求めて行けば良いのでしょうか? 是非それについて新村弁護士や参加者の皆さまと有意義なディスカッションができればと思っております。

現在働いている方もそうでない方も、シングルも既婚者も、お子さんがいる方もいない方も、前回参加できなかった方も、もちろん男性も大歓迎です。ジェンダーやライフステージを超えた様々なみなさんと一緒に議論を深めていきましょう。

なお、今回はイベント後にお茶会(交流会)を実施する予定です。お時間の許す方は是非お気軽にご参加ください。

詳細はWEBRONZAのイベントページをご覧ください。

前回に引き続き参加費は無料で、かつお席に限りがございますので、どうかお早めにお申込みくださいませ。ご参加を心よりお待ち申し上げております。

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