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政府・自民党は「規制緩和」で少子化を打開せよ

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先日の2016年5月18日、政府が「骨太の方針」の素案を発表し、今年は少子化対策が最重要課題として盛り込まれることとなるようです。確かに少子化はそれ自体が問題であるばかりでなく、子供を産みたい人が産めない社会であるということが何よりも問題でしょう。

ですが、資料に目を通してみると、本当に表面的なことしか書かれておりません。「保育園落ちた死ね」のブログの広がりによって、ようやく保育政策の充実が大きく掲げられたようですが、実際に少子化対策に概ね成功した国々の施策(たとえば無償化や所得控除等)に比べると小規模で、明らかに見劣りするものばかりです。

政府は合計特殊出生率1.8を目指すと宣言していますが、本当に打開する気があるのか、大変疑問に感じてしまいます。少子化対策を本気で行うならば、表面的な対策ではなく、もっと抜本的な構造改革が必要不可欠です。 

では、抜本的改革に必要なものはいったい何でしょうか? その柱をなすのが、以下の「少子化対策における三本の矢」であると私は考えています。

(1)子育て政策の充実と社会全体で行う子育てへの大幅な転換
(2)婚姻制度や家族制度の抜本的改革
(3)女性の経済的自立へ向けた抜本的な社会改革

そして、これら3つの根底となる土壌が「結婚・出産・子育て・家族に関して、女性にいろいろと口出す人と女性を叩く人を全員黙らせること!」です。書きたいことは本が何冊も書けるほどたくさんありますが、今回は2つの論点に絞って述べて行きたいと思います。

◆あるべき姿の押し付けという規制が産みにくい社会を作る


まず、「規制緩和が自由競争を促進して経済を活性化させる」という原則は、新自由主義的な考えを持っている政治家であれば誰もが知るところでしょう。もちろんそれによる市場の失敗、過当競争、労働環境の悪化等の問題を防ぐ手立てが絶対に必要ですが、なるべく規制は無いほうが良いに決まっています。

それは少子化対策も同じ。

経済と同様に、子供を産みやすい環境を整えるためには、それを阻害している様々な規制を緩和・撤廃することが必要です。

たとえば、合計特殊出生率を改善させたフランスでは「PACS(民事連帯契約)」、スウェーデンでは「Sambo」という新しいパートナーシップ制度の導入によって、従来の結婚をせずとも子供が産みやすい社会を実現しました。「あるべき家族の姿」という規制を緩和させたのです。

ところが日本はどうでしょうか?

そのような新しい仕組みはまともに検討すらされていません。そもそも夫婦別姓すら許されていません。標準モデル世帯という概念や、家父長制の名残が強い戸籍制度もいまだに存在します。従来の男性稼得中心主義に貢献している103万円(および130万円)の壁等も残っています。

さらに制度的な問題だけではありません。たとえば、日本ではいまだに結婚・出産・子育て・家族に関する古い価値観を押し付ける人が後を絶ちませんし、子供がいる母親に対しても何かにつけて「(母)親の躾がなっていない!」「○○するなんて母親失格だ!」と叩く人も至るところに存在しています。

社会から「女性としてあるべき姿」「母としてあるべき姿」「妻としてあるべき姿」を押し付けられれば、当然のごとく女性はリスクを怖れて慎重に行動するようになり、自由な選択を制限せざるを得なくなります。つまり文化的な「見えない規制」が無数に存在しているのです。

このように、日本は結婚・出産・子育て・家族に関して自由に選択できる環境が乏しく、規制がとても厳しい国であると言えます。このような国では子供が産みにくく、少子化が進むのも当然ではないでしょうか?

◆正攻法を真似せずに成功するはずがない


新しいパートナーシップ制度の導入という「婚姻の規制緩和」が少子化対策に資することは明確ですが、他にも「元父に対する養育費の強制徴収制度」「強過ぎる親権の緩和や共同親権の検討」「長時間労働の抑制による男性の家庭進出の推進」「エコノミックマリッジからの転換」等、やるべきことは目白押しです。

スポーツや芸能の分野等でも、まずは上手い人の技術を研究して真似をすることから始めるのが原則だと思いますが、それと同様に、本気で少子化を打開したいのであれば、まずは概ね成功している国々の施策を単純に真似することから始めるべきでしょう。

にもかかわらず、家族のあり方等の古い価値観に拘泥する人々には、西欧の成功者たちが実施した抜本的な構造改革は頭の中で自動的にふるい落とされているのか、常に少子化対策関連の素案からはすっぽりと抜け落ちています。そして婚活支援事業等のように、制度や文化を変えようという方法ではなく、当事者の行動を変えようという方法の施策ばかりが出てくるのです。

ですが、よく考えて欲しいのですが、婚活ブームが起きたにもかかわらず、結婚する人は一時期を除いてほぼ右肩下がりで減り続けています。つまり、婚活では何も解決しません。それは、そもそも現行の結婚自体が、もはや時代に合わなくなっている部分が無数にあり、今後合わない人はますます増えて行くことでしょう(詳しくは拙著『恋愛氷河期』をご参照ください)。

婚活支援を携帯電話に例えるならば、いまだにガラケーを必死になってはやらせようとしているのと同じです。他国ではスマホが普及してアプリ開発で盛り上がりを見せている中で、日本はガラケーを売ろうと必死。これぐらいの時代錯誤だということを是非理解して頂ききたいものです。

◆当事者不在の議論では上手く行くはずがない!


これらを踏まえた上で、政府・与党には「少子化対策における三本の矢」と、その土壌である「規制を強めている人々への規制で自由な生き方を促すこと」を是非実施して欲しいのですが、残念ながら現状のままでは抜本的な改革はまず不可能でしょう。

というのも、政府が少子化について話し合う場に、独身者や若者世代の人はほとんど参加しておらず、結婚・出産・子育て・家族に関するこれまでの価値観に合わないとは感じない人たちばかりで構成されているのですから。それゆえ表面的なマイナーチェンジしか起こせないのだと思います。

本気で少子化を改善しようというのであれば、当事者像に近い人物や当事者の価値観および現代という時代背景に詳しい専門家を政策意思決定過程に参加させるべきです(是非私のことも呼んで欲しいです)。

もうすぐ夏の参議院選挙が迫ってきていますが、各政党は是非そのようなアドバイザーを迎えて、本当に問題を解決できるような公約を作って欲しいと思います。

(2016年5月23日「勝部元気のラブフェミ論」より転載)