ダブル選挙で問われるべき経済政策のあり方

円安は大手の輸出企業に一息つかせる効果はあった。民主党政権ではそれができなかった。効果は認めよう。しかし…

このところ、出てくる経済指標が軒並み悪い。マネーに依存したアベノミクスに対する失望感は国内外で広がり、安倍政権がアベノミクスの成果と喧伝していた株価も急落している。

要するに、アベノミクスとは、金融緩和による円安で景気を上向かせ、円安に伴う株高を、GPIFを筆頭とした官製相場が加速させたものだった。2013年は華々しかったが、今やゼロ金利に踏み込んだ黒田バズーカーが逆噴射し、自陣(地方経済)にダメージを与えてしまっている。雇用の数字だけは良くなっているが、生産年齢人口が激減しているので、誰がやっても同じ結果になっただろう。

円安は大手の輸出企業に一息つかせる効果はあった。民主党政権ではそれができなかった。効果は認めよう。しかし、当然にして、為替は国際的な要因で変動するので、日本の技術力(付加価値)が高まる政策を地道にやるしかない。王道は規制改革。思い切って分権することで、自治体が競い合う状況をつくるべきだが、安倍政権はお目こぼし規制緩和である特区に終始している。

同一労働同一賃金もいいが、若者の正社員化と産業構造の転換に伴う就業者支援は、技術の継承に効果がある。派遣の拡大は方向が逆。

子育て、教育など、「人生前半の社会保障」の充実は、需要にダイレクトに効く。将来の供給力の向上にも効果がある。民主党政権は道半ばではあったが、ここには力を入れた。安倍政権の対応は、"too little, too late"

経済が失速する中で、消費税増税に注目が集まっている。安倍政権は5月18日の1-3月のGDPの速報の発表を待って判断するようだが、民進党はその前に態度を明らかにする必要があるだろう。ちなみに、私が政調会長としてまとめた我々(当時は民主党と維新の統一会派)の考え方は以下の通り。

  • 社会保障の充実・安定化を図り、将来世代に借金を押しつけないため、10%への消費税引き上げを含めた「社会保障と税の一体改革」を推進することの重要性・必要性は変わりない。ただし、消費税10%への引上げは、身を切る改革の前進と社会保障の充実を前提とする。
  • 消費税には逆進性が存在し、その影響をいかに取り除くかが、最重要課題の一つであった。
  • 最も効果的な逆進性対策は、給付付き税額控除であることは明らかである。マイナンバ一定着までは、当面簡素な給付措置を拡充すべきである。
  • 格差是正効果に乏しく、事業者にコストばかりかかり、現場の混乱も避けられず、その上財源の手当てもない軽減税率導入を前提とした消費税引き上げは認められない。軽減税率には反対し続ける。
  • なお、最重要課題の一つである議員定数の大幅削減もいまだに実施されておらず、もはや3党合意の前提は崩れてしまっている。

要するに、軽減税率の導入を前提とする消費増税は認められないというものだ。不本意ではあるが、軽減税率関連の法案は既に成立している。

2012年末の総選挙、2013年夏の参議院選挙、2014年末の総選挙と、自民党が国政選挙で三連勝をしたのは、安倍政権以外に選択肢がなかったからだ。野党の勢力を結集して民進党を結成したからには、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。安倍政権のブレーキは必要だが、それだけでは責任を果たしたことにならない。予想される衆参ダブル選挙においては、経済政策の優劣を正面から国民に問うべきだ。

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