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シルバー民主主義と正面から向き合う② 人生前半の社会保障を充実するために

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■人生前半の社会保障に舵を切る時期が来た


前回、『シルバー民主主義と正面から向き合う』を書いたところ、様々なリアクションがあった。「よく言った」という指摘がある一方で、「高齢者が苦しい状況にあることを分かっていない」とのお叱りも頂いた。

実は、16年前の最初の選挙で、私は財政赤字の深刻さと人生前半の社会保障の充実を訴えた。ところが、この訴えはほとんど有権者には響かず、逆に戦前生まれの高齢者から随分怒られたものだ。それから、選挙を重ねる中で勝ち方を覚え、いつしか訴えの内容も変わっていった。

安倍政権の二度の消費増税の先延ばしに見られるように、ポピュリズム政治は今も健在だ。今回の参議院選挙では、多くの政党が子育て支援の充実や給付付きの奨学金の導入を訴えているが、財源を明確に示すことはできていない。正直言って、わが国が抱える最も本質的な問題において議論が深まらない選挙戦に若干の虚しさを感じている。シルバー民主主義の下で高齢者に負担を求めるには勇気が必要だ。

しかし、16年前と比較してみると、状況は大きく変わったように思う。

  1. 人口減少と少子高齢化の進展が誰の目にも明らかになり、人生前半の社会保障を充実する必要性が認識されるようになった
  2. 戦後の豊かさを享受した高齢者の中に、次世代のことを考える人たちが出てきた
  3. 非正規雇用の増加などにより、貧しい若年層が目に見えて増えた

投票年齢が引き下げられた参議院選挙を前に、若い世代と対話をする機会が増えた。先日、ある学生から「我々の世代は年金を受け取れないのだから、廃止してほしい」という要望を受けた。「受け取れない」というのは正確ではないが、彼らの世代が大幅な支払超過になるのは紛れもない事実である。現状を放置すると、やがて若い世代の中で公的年金不要論が広がる可能性がある。やはり、年収200万、300万の若者や、子育て世代が、数千万円から億の単位の資産を持つ高齢者の社会保障費用を負担するのは限界がきているのだ。

■限界を超えた世代間の格差


まず、問題の所在を明確にするために、世代ごとの社会保障負担の収支を見てみたい。

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鈴木亘学習院大学教授の分析が最も詳しいため、少し古いが2011年のデータを用いる(5年加えれば、2016年の数字になる)。厚生年金の場合、70歳の人が3000万円以上の受取超過になるのに対して、20代は2000万円以上の支払い超過になる。年金に加えて、医療、介護でも世代間格差が出てくるため、今年生まれる新生児は、4000万円の支払い超過となる計算だ。この数字には、毎年積み上げられ将来世代の負担となる国債は入っていない。

衝撃的なデータではあるが、全ての国民が現実を直視することから議論をスタートするしかない。親の世代が充実したサービスを受けている我々の世代はまだしも、今を生きる子どもたちと、これから生まれてくる世代にこれだけの負担をかけることが正当化できるだろうか。

■見過ごせない高齢者の中の経済格差


ここまで世代間格差を見てきたが、高齢者の中に世代内の大きな格差が存在する点を見過すことができない。例えば、世帯主が65歳以上の世帯の資産を調べてみると、資産総額が1億円以上にある高齢世帯が10%存在する一方で、500万未満が7%存在する。貯蓄で見ると、4000万円以上の世帯が16%存在する一方で、150万円未満が7%存在する。経済的に厳しい状況にある高齢者の方々については、低年金対策を強化するなどの対応が必要だ。

一方で、総資産一億円以上あり、貯蓄が4000万円以上の高齢者は、経済的な成功を収めた方々と言えるだろう。社会保障を「保険」と捉えるならば、リスクが顕在化しなかったこうした高齢者の方々に負担をお願いしていくべきではないか。

自民党では、石破茂大臣が同趣旨の発言を繰り返しいるし、小泉進次郎議員が中心にまとめた「2020年以降の経済財政構想小委員会」でも控えめながら頭出しされている。少子高齢化が進んだわが国が抱える本質的な問題だけに、党派を超えて取り組むしかないだろう。

■医療・介護・年金の負担のあり方を変える


医療や介護は、資産や所得に関係なく高齢者の不安材料であり、サービスのレベルを下げることはできない。考えなければならないのは負担のあり方だ。現在、75歳以上の医療の負担は、現役並みの所得のある高齢者については3割になっているが、資産のある高齢者も所得がなければ1割負担となっている。マイナンバーの導入に伴い、医療に加えて介護についても、一部負担の増加を検討すべきだと思う。

受給権がある年金については対応が難しい。現在も、47万円を超える報酬を得ている高齢者については、年金の一部、もしくは全部を支給停止する制度が存在する。実際に高報酬が理由で支給停止を受けている高齢者は10万人ほどと推定され、年金受給者約3000万人の0.3%にとどまる。自主的に年金を辞退する制度もあるが、実際の辞退者は全国でわずか700人に過ぎない。現実には、資産のある高齢者も年金を受給しており、働き続けることができる高齢者(例えば中小企業の経営者)も年金受給年齢になると仕事を辞めるケースが多い。

当面は、元気な高齢者の皆さんが、年金に頼らず働き続けるインセンティブを高める必要があるだろう。また、年金を辞退した高齢者を顕彰するのも一つのアイデアだ。また、出来る限り早い時期に、年金を「保険」と捉え直し、豊かな高齢者については、税の投入を削減する、もしくは廃止することによって世代内で助け合う仕組みを導入する必要がある。同時に、年金における世代間のアンバランスをいかに解消していくか、党派を超えて取り組まねばならない。

■次世代への責任を果たすために


豊かな高齢者の皆さんに新たな負担をお願いする以上、その財源を使って、子育て、教育など「人生前半の社会保障」の充実することを明確にしなければならない。前号でも書いたが、子育て支援などの人生前半の社会保障の充実は、即効性のある成長戦略になる。長い目で見ても、若者が高い能力を身に着けて社会に出ることは、社会保障制度の持続性と経済の潜在成長力を高める。

政治家は選挙で勝たなければ、結果を出すことが出来ない。興味深いことに、どの選挙を見ても、20代の投票率は70代のちょうど半分。そもそも人口がおよそ半分だから、選挙における影響力は四分の一ということになる。まずは、我々政治家が呼びかけ、若者が声をあげる必要がある。

わが国の繁栄は、何もないところから戦後の復興を果たした世代が築いてくれたものだ。現在、70代に差し掛かっている団塊の世代は、戦後の復興に貢献すると当時に、その恩恵を受けてきた世代でもある。少子高齢化、人口減少、財政赤字の累積という現状を放置したままでは、わが国が繁栄を続けるのは難しい。人生の先輩方に負担をお願いするのは心苦しいが、子どもたちに豊かな未来を残すために、できることは何かを一緒に考えてもらいたい。高齢者の皆さんに負担をお願いする以上、我々の世代には更に大きな次世代への責任がある。

私個人は、人生前半の社会保障の恩恵を受ける年齢を過ぎつつあり、政治家人生も後半戦に入ったと自覚している。一人の政治家が実現できることには限りがある。我々が、子どもの世代に残せるものは何かを熟慮した結果、この問題に正面から取り組もうと腹を決めた。今回の選挙から、私自身はこのことをあらゆる世代に訴えていこうと思う。