リスクにさらされる年金

年金受給者がリスクを負って、株式保有者が得をするような形をとることは、年金運用の目的をはき違えており本末転倒である。
時事通信社

株価が上昇している。GPIFによる年金運用について、国内株式比率を増やすとの新聞情報が影響しているようだ。国民の年金が、株価対策に使われる流れが加速している。

国民の財産である国民年金・厚生年金の積立金は、現在127兆円あり、独法であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用している。この運用は、国民の財産を守るために、長期的な観点から安全かつ効率的に運用することが大前提であるのは当然のことであり、安全資産とされている国債中心に運用がされている。これまでの運用実績もまさに安全な運用とは何かを示している。

現在、安倍内閣はこの運用を大いなるリスクに晒そうとしている。

すなわち、国債で運用していた資産を、目先の株価対策のためとすら考えられるような形で、株式に大量投入しようとしているのである。127兆円の年金は、例えば2%でも株式に投入されるだけでも2.6兆円の株価対策になる。これは東証の一日の取引額に等しい。安倍内閣は、これを現行の12%から25%以上に引き上げる、すなわち15兆円を超える国民財産をリスクマネーに投入して、株価の下支えをしようとしている。

しかしながら、リスクに晒される年金に関して、国民に対しての説明がなされていない。どの程度のリスクか。先に示した図を見れば一目瞭然だが、更に言えば、今後リーマンショック並の事象が生じた場合には、25兆円を超える損失を出す可能性すらある。25兆円の損失は1年間の保険料収入に匹敵する。国民が一年間納付した保険料が、一瞬にして消え去るのである。このような事態が起こった場合、保険料を上げるか、給付を下げるという選択肢をとらざるを得ず、いずれにせよ国民にしわ寄せが生ずる。

塩崎厚生労働大臣は、このような重大なリスクに対する説明責任を一切果たしていないどころか、大臣着任前に約束していた「リスクをとるだけの責任体制を構築することが大前提」との約束すら反故にしようとしている。私は、昨日の予算委員会で、塩崎大臣にそのことを問うた結果、責任体制の構築と運用改革は一体のものであるとの回答があったが、現実には、年金をリスクに晒す動きの方が先行しているようだ。

年金受給者がリスクを負って、株式保有者が得をするような形をとることは、年金運用の目的をはき違えており本末転倒である。国民の財産である年金に対して、かつて自民党政権は、グリーンピア・サンピア問題や「消えた年金問題」と立て続けに引き起こすなど、重大な失政を繰り返してきた。今回の問題は「第3の消えた年金問題」となりうる重大な問題であり、ただちに止めなければ、未来への世代に対して重大なリスクを残すことにほかならない。

私たち民主党は、年金を守るために、戦いぬく。

ちなみに、塩崎大臣は自ら時価総額6千万円を超える株式を保有している。賢明な塩崎大臣が、疑惑の目で見られるようなことにならないよう切に望みたい。

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