Huffpost Japan
ブログ

ハフポストの言論空間を作るブロガーより、新しい視点とリアルタイムの分析をお届けします

細野豪志 Headshot

トランプ大統領誕生の可能性と我々がやるべきこと

投稿日: 更新:
印刷

GW中、米国で5日間を過ごしてきた。外交安全保障全般で多くの面談を行ったが、話題の中心は自ずと大統領選挙となった。日米の関係者の見解はほぼ一致していた。

まず、今回の大統領選挙に対する嘆き。ここまでトランプ氏が残ると考えていた人はほとんどいなかった。そして、最後はヒラリー氏が勝つだろうという予測。根拠は、米国の人口構造が民主党有利になってきていることと、共和党支持者がヒラリー氏に流れる可能性が高いということ。ただ、ある専門家は「私の予測を信用しない方が良いかも」と自嘲気味に語っていた。

私自身は、ある分析に接して、いくつかの前提が整えばではあるが、トランプ大統領が誕生する可能性が現実的に出てきていると見ている。

米国の場合、特定の都道府県でも選挙のたびに大きく結果が振れる日本とは異なり、民主党が圧倒的に強いブルー・ステイトと共和党が圧倒的に強いレッド・ステイトがある。

前回の大統領選挙でオバマ大統領が10%以上の大差で勝ったブルー・ステイトは合計15州とワシントンDC。例えば、ニューヨーク州はトランプ氏の地元ではあるが(ヒラリー氏の選挙区でもある)、ヒラリー氏の勝利は揺るがない。一方で、前回の選挙でロムニー氏が10%以上の大差で勝った州が22州。こちらは、トランプ氏が勝利する可能性が高い。

鍵を握るのがスイング・ステイトだ。ここで異変が起こっている。鍵は予備選の得票数。4年前の予備選に比べて、共和党の得票総数が57%と激増したのに対して、民主党の得票は18%も減少した結果、フロリダ、オハイオなどのスイング・ステイトでは、共和党の党員集会の得票総数が民主党のそれを上回った。仮にこの傾向が本選まで続けば、これらの州で共和党が勝つ可能性が高いというのだ。

トランプ氏の集会には多くの支援者が集まり、圧倒的な盛り上がりを見せるのに対して、ヒラリー氏の集会が盛り上がらないという話を耳にした。クリントン夫婦は、我々から見ると叩き上げの政治家なのだが、米国ではすでにワシントンDCの政治エリートと見られている。弱点は電子メール問題だけではない。予備選の得票総数の変化はこうした話とも符合する。

トランプ氏が本選で勝利するためには、前述した通り前提条件がある。共和党がまとまることだ。共和党は、産業界を代表する勢力、リバタリアン、宗教保守派からなってきた。トランプ氏はそのどこにも属さない存在で、大統領選挙でも独自の主張を続けてきた。

現状においては、共和党はまとまっていない。私の知る共和党支持者の多くはトランプ氏を支持していないが、ヒラリー氏の支持もできないというジレンマに陥っている。有力政治家、外交ブレインの多くも同様だ。まず、トランプ氏自身が主張を常識的な線に転換するかどうかが問われる。その上で、共和党主流派の支持を得られる人物を副大統領候補に指名するかどうかが重要になってくる。共和党が一つにまとまり、スイング・ステイトを取るようだと、トランプ大統領誕生の可能性が現実的になってくる。

トランプ大統領誕生の可能性がある以上、我々政治家が候補者の個人批判をすることは避けるべきだろう。できるのは、わが国の考え方をしっかり発信し続けることだ。

まずは、在日米軍撤退論について。

在日米軍は日本防衛のためだけに存在するのではない。朝鮮半島、中国、南シナ海など、アジア太平洋の安定は米国の国益そのものだ。もちろん、わが国の防衛も米国の国益に直結する。

「ただ乗り」ではないことを証明するために、念のために金額を示す。在日米軍駐留経費負担は2015年度予算ベースで1899億円、周辺対策で1826億円、米軍再編経費で1486億円。ダブリがあるが、法律に基づかない「思いやり予算」が1481億円。合計すると5000億円をはるかに上回る。

トランプ候補には有力な外交アドバイザーがいないと言われているが、私が指摘した程度のことはさすがに分かっているはずだ。それでも発言を止めないのは、ビジネスのディールの一貫ということだろう。

日本車に高関税をかけるとの主張もあったが、現実には日本車は今や米国内での生産がほとんど。日本からの輸入に関しては、TPPで関税引き下げが大幅に先延ばしされた例外品目となっている。これは、交渉の入口で米国の要望を日本が丸飲みしたもので、むしろ日本の国会で問題になっている。

ワシントンDCの日本大使館は最強の外交官集団。ここからが頑張りどころだ。

「アメリカファースト」を唱えるトランプ氏の登場は、ジョージ・ブッシュ大統領的な国際介入からも、ビル・クリントン大統領的な国際協調からも距離を置く米国民の気持ちを代弁している。わが国は、こうした心情を多くの米国民が持っていることを理解するべきだろう。我々政治家は、今回の大統領選挙を通じて日米同盟の意義を捉え直す機会と考え、米国の友人と共有する努力をするべきだ。

私は、東日本大震災と原発事故を通じ、政権の真っただ中で日米同盟のおそらく戦後最大の危機に直面し、その意義を体感した。日米同盟を戦後の最大の遺産の一つだと捉えている者として、できる限りのことをしていきたいと思っている。